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第22回 図で論理を視覚的にとらえよう[前編]

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機械や建築物をつくるためには必ず図面がつくられます。特に複数の人間で物作りをする場合には図面が欠かせません。お互いに正確な情報の交換・共有を行うために必要だからです。これは,言葉で表すのとは別の意味で図面がものごとを明確に表現できるからです。ですから,図面は一人で物作りを行う場合にも力を発揮します。図面にすることで不明確であった部分が明らかになります。図にするためには未確定である部分もある程度確定しなければなりません。図面はそれまで気がついていなかった部分を教えてくれたり,すっきり納得させてくれたりします。

論理の数学で用いる図にも同じ効果があります。今回は「論理を視覚的に表現するための図法」であるベン図を学びましょう。

図22.1 図面で作るものを明らかにする

図22.1 図面で作るものを明らかにする

ベン図

ベン図は,ある命題が真になる場合と偽になる場合を,ひとつの円形,あるいは交差する複数の円形を用いて表現する方法です。円の中は命題が真の場合をあらわします。円の外は偽の場合です。

高等学校ではこのベン図を用いて簡単な集合論を学習します。論理も真である事柄の集合と,偽である事柄の集合であると考えれば,集合論の図が論理でそのまま用いられることが不思議でないとわかるでしょう注1)。

図22.2 論理変数がひとつの場合

図22.2 論理変数がひとつの場合

図22.2(a)に最もシンプルなベン図を示します。図中の四角形の内部は,考え得る全ての場合を表します。

図中のという名前で囲まれた部分が,論理変数注2が真である(成り立つ)範囲を表してます。これは論理式=1の場合をあらわす範囲で,単にと書きます。この範囲を図中で明示する場合にはハッチング(斜線)を施し,図22.2の(b)のようにします。

範囲の外の部分は論理変数が偽である(成り立たない)範囲を表します。論理式=0をあらわす範囲で,(「エーバー」と読む)と書きます。この範囲を図中で明示する場合には,図22.2の(c)のようにします。

直感的で大変分かりやすいですね。

図22.3 論理変数がふたつの場合

図22.3 論理変数がふたつの場合

図22.3(a)は論理変数がふたつの場合のベン図です。2つの円は必ず交差させて描きます。そうすることで2つの論理変数,がとり得る全ての場合(4つ)を表現できるからです。

図22.3の(b)をみると,全ての場合が網羅されていることがわかるでしょう。このベン図で,論理変数が2つの場合の全ての論理式の真偽を表現できます。例えば(c)が真の場合,(d)が真の場合,(e)が真の場合です。その他どんなものも(a)を塗り分けることで表現可能です。例えばド・モルガンの法則をベン図で表すと図22.4のようになります。

図22.4 ド・モルガンの法則をベン図で

図22.4 ド・モルガンの法則をベン図で

注1)
ご参考までにコラムを参照して下さい。
注2)
この「論理変数」「命題」と読み替えると分かりやすい人もあるでしょう。

今回はここまで

ベン図の優れているのは,図を塗り分けることで論理の状態を視覚的にとらえられることです。文章や式で理解するのが苦手でも,図にすると納得,という方もおられることでしょう。ベン図の便利さは実際に手を動かして描いてみることで初めて実感できます。次回は論理式をベン図で示す問題に取り組みましょう。

今回のまとめ

  • ベン図は塗り分けにより論理を視覚的にとらえることが出来ます。

コラム ベン図とオイラー図

「集合や論理で用いられる図」としてベン図を紹介しました。ここで細かいことを言うと,集合論で用いられる図はオイラー図といいます。図22.5(a)を見てください。集合論では,ある集合Aがある集合Bに完全に含まれる場合,Bの円の中にAの円がすっぽり入ります。集合Aと集合Cに一部共通の要素があれば,円を交差させます。また,集合Aと集合Dに共通する要素のない場合,円を交差させません。オイラー図はこのような集合の性質をそのまま円の交差・非交差,あるいは包含として表現することを許します。

図22.5 ベン図とオイラー図

図22.5 ベン図とオイラー図

論理で用いられるベン図では,ひとつの円はひとつの命題注3をあらわします。図22.5の(b)を見てください。命題が4つの部分に分けられる場合,ベン図中で4つの円を描き,それらを必ず交差させます。どちらかの円にどちらかの円を包含させたり,非交差であることはありません。

論理を扱う場合にはベン図,集合を扱う場合にはオイラー図なのですが,高校数学の教科書では,単にベン図とのみ表記されることが多いようです。教科書によってはオイラー・ベン図,またはベン・オイラー図と表現して,あまり明確に区別しないようです。

オイラー図のオイラーとは,オイラーの公式で有名な数学者レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler,1707-1783)です。ベン図のベンとは,イギリスの修道士で数学者ジョン・ベン(John Venn,1834-1923)です。それぞれ図の考案者であることからその名前がとられました。

注3)
本文中では論理変数と書きました。その方がプログラム中のboolean型と対応させやすいと考えたからです。

著者プロフィール

平田敦(ひらたあつし)

地方都市の公立工業高等学校教諭。趣味はプログラミングと日本の端っこ踏破旅行。2010年のLotYはRuby。結城浩氏のような仕事をしたいと妄想する30代後半♂。

コメント

  • ベン図の誤りご指摘ありがとうございました

    テンタラフー さん、ご指摘ありがとうございました。
    ご指摘の通り、図22.5 ベン図とオイラー図 のベン図は誤りです。

    書籍版の正誤表PDF「P.104の図2.4.14(b)」に正しい図を掲載しています。

    正誤表その2> http://www.cutt.co.jp/book/978-4-87783-320-6/320_seigo_20131127.pdf

    お詫び申し上げますとともに、ご指摘頂けたことに感謝いたします。
    また、お気づきの点がありましたらご指摘頂けると幸いです。

    Commented : #2  平田 敦 (2014/08/26, 19:17)

  • ベン図が間違っていると思います

    n個の集合のベン図は2ⁿ個の領域を持つはずです。4つの円では平面を16個の領域に分けることは不可能であり、楕円を用いる必要があります。

    Commented : #1  テンタラフー (2014/08/24, 05:10)

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