バスケットボールでは,相手のフェイントに惑わされぬよう腰に注目します。どんなに激しく動いても,腰が動く先が相手の動く先だからです。柔道では釣り手(相手の襟をつかんだ手)の感覚に注意を払います。釣り手を通して伝わって来る相手の体(たい)の動きが,相手の技の全てを表しているからです。
とかく細かな動きにとらわれると,本質をとらえることが難しくなってしまいます。今回学習するのは,データの細かな変動を緩和し,生のデータからでは得られなかった傾向をつかむための便利な手段です。
移動平均
移動平均(※1)とは,細かな変動を含むデータをスムーズにする(平滑化する)方法です。
平均をとるというと,100個のデータの総計を,データの個数100で割って1つの値を得ることですが,これではデータ全体が増加傾向・減少傾向を持つのか,それともあるピークを持っている山形・谷型の分布を示すのかといった貴重な情報が失われてしまいます。
移動平均は,細かなギザギザを持つグラフになるデータを,なめらかな曲線のグラフになるデータに変換します。
ノイズの多い信号データを受け取った場合に,移動平均をとれば,ノイズの緩和されたデータに出来ます。
株価の細かな変動を平滑化して,ある区間での平均的な株価を得る場合にも利用されます。
図58.2に移動平均の取り方を示します。連続するデータのひとつDiに注目し,自分を含む周囲のデータの平均値をとります。この計算を次々と実行していった結果,グラフの形は凹凸の少ないものになります。
例えば時系列に並んだ100個のデータがあるとします。平均をとる範囲を5とすると,10番目のデータD10の値は,次の式で移動平均値に換算されます(※2)。
先頭から順番にデータを処理する場合には,D8やD9の値に「移動平均をとる以前の値」を用いるように注意してください。また,別法として,「注目するデータの位置を含む前方(過去)範囲の平均を取る」ことも出来ます。こちらの方がアルゴリズムが単純です。
- ※1)
- Moving Average
- ※2)
- 株価の世界では,直近10日間の移動平均値を用いるようです。この場合の移動平均値は本日を含めて過去10日間の値の平均です。

