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第4回プロトタイピング「物作り」流儀~

今回はプロトタイピングのトラックについて紹介します。

物作りで大切にしたいこと

「いい物を作りたい」⁠ワクワクしながら物を作りたい」⁠物を使ったり、所有するとウキウキする」というのは、物作りの原点ではないでしょうか。プログラミングの世界に入る最初の動機は、そんな漠然とした期待感だったように思います。

エンジニアとしての日常を振り返って見ると、担当の役割が分野ごとに専門化し分業化され、物作り全体に関わることはほとんどありません。もちろんそれには理由があって、1人で扱うには、システムが大規模過ぎたり複雑過ぎたりするからです。たぶん、それは、良いことなのですが、先に上げた物作りの原点とは、違うフィールドでの活動となります。

しかしながら、⁠言われた通りに作る」⁠効率的に作る」⁠スケジュール通り作る」という価値観では達成できないゴールがあって、そこには、あらかじめ想定できる機能とか性能では、そもそも表現できない価値があるんではないかという期待感があります。これは、ソフトウェア工学で有名なトム・デマルコも指摘しております。⁠品質と生産性を重視したソフトウェア開発プロジェクト技法』では捕らえることのできないもっと大切なものがあり、そちらの方が重要になって来ているんではないかという指摘です[1]⁠。

物作りの原点

「物作り」の原点回帰として、プロトタイピングをテーマに取り上げました。いい物とは何だろうと考えたり、ワクワクしながら物を作るためには、アイデアを形にし、手にとって触れたり、その価値を実際に目で見て確認することが大切だと考えたからです。

たとえば、メカ、デバイス、ソフトウェアが、複雑に絡む実装では、事前にすべてを検討できるものではなく、やってみて初めて理解できることが、多くあるはずです。やってみて初めて理解できるという行為が、ワクワクする物作りへの扉を開きます。プロトタイピングにおいて、実装は、目的を実現するための単なる手段ではなく、中心的な存在となります。プロトタイピングのプロセスの中での発見や気づいた価値を成果物に反映できるからです。⁠物作り」プロセスその物に価値があると考えられます。

コラボレーション

グループワークでのプロトタイピングでは、コミュニケーションをするための共通の言語や価値観が重要になってきます。ハードウェア担当やソフトウェア担当という分業体制は、アイデアを形にするプロセスにとって若干窮屈な体制です。そのため、各々自分の担当の領域を超えた知識や理解力を身につけることが、円滑なコミュニケーションのキーとなります。

最初のきっかけとしてコンセプトが与えられると、エンジニアやデザイナーが、みんなでよってたかってシステムと対話しながら設計し、解釈をどんどんと広げるようなイメージです。それに加え、手軽にデータを取り込めたり、アルゴリズムを容易に記述できる環境(ツール)も同時に重要です。この点に関してLLは、非常に優れたツールとなります。

プロトタイピングの勘所

とはいえプロトタイピングには、限界があります。実際に市場に出るような製品の設計では、プロトタイピングのようにいきなり作り始めたりしません。製品レベルの物作りでは、省略できないプロセスがあり、プロセスを1つ1つ踏んで仕様を詳細に明確化したり、実装が仕様通りにできているか端から端までテストをして確認する必要があるからです。

しかしながら、必要な仕様の70%位しか実装していないのだけど、そこから100%仕様が満たされた状態を容易に想像できたり、特定の条件では、実際に動かして動作を確認できることが、プロトタイピングの価値です。プロトタイピングの善し悪しは、このように上手いこと当たりを付けるられるように、持ってゆく勘所が肝になります。

今年の見所

プロトタイピングのセッションで取り上げる「ハードウェアスケッチ」「デザインエンジニアリング」は、アイデアをストレートに「物作り」に反映させる革新的な試みです。物作りの勘所として必要な教育や技術に焦点を当て、最新のトピックを紹介します。また、メディアアート活動を日々実践されている中で、制作現場で感じることや大切にしてきたことを発表していただきます。ご期待ください!

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