OpenStackの普及促進、人材育成に取り組む日本OpenStackユーザ会の会長である、伊藤忠テクノソリューションズの中島倫明氏は、「OpenStackユーザ会は2010年に発足し、当初はOpenStackを構成する技術にフォーカスしてエンジニア中心に活動していました。その後、米国を中心にOpenStackを活用したビジネスが立ち上がってきたことを受け、技術だけでなくビジネス面にも目を向けるようになりました。ユーザ会はこれまで通りに技術中心に活動していきますが、それとは別に、OpenStackを実際にどうビジネスに使っていくのかという情報を集約して国内に発信する場として、スポンサー企業を集めて商業的に開催するOpenStack Days Tokyoを始めました。今回で3回目になります」といいます。
OpenStackのグローバルな開発母体であるOpenStack Foundationは、春と秋の年2回、オフラインの開発者会議、最新事例紹介セッションなどで構成される定例の国際カンファレンス「Open Stack Summit」を開催していますが、2015年秋は、東京で開催されることが決定しており、世界各国からの関係者が集結し、その数は数千人にのぼると予想されます。これからのIT基盤を劇的に変革する立役者となるOpenStackがますます注目される2015年。OpenStack Days Tokyo 2015はその幕開けとなるイベントです。
今年2月に開催された「OpenStack Days Tokyo 2014」は大雪に見舞われたことを非常に悔やんだと中島氏は言います。それでも1300名近い来場者があったのは、OpenStackへの期待の高まりを如実に物語っています。「グローバルでは、2~3年前からOpenStackがビジネスとして立ち上がっていて、既にたくさんの事例があります。これまではネット系のIT企業が中心でしたが、今年11月のOpenStack Summit 2014 Parisでは製造業のBMWや,スペインの大手銀行、Time Warner Cableなど、さまざまな業種の非IT企業がOpenStackの利用を開始しています。日本もそれを追いかけている状況で、ヤフージャパンやグリー、GMOインターネット、楽天などのネット系企業を中心にすでに実用されており、本番環境で動いています」(中島氏)。OpenStackユーザ会では、この状況はさらに幅広いエンタープライズの領域に拡大していくと考えており、その流れを後押ししていきたいと考えているといいます。
OpenStackへの期待の高まりは、スポンサーの集まり方にも現れているといいます。第2回でも国内外27社の参加があったので、今回は40社に参加枠を拡大しましたが、申し込みが殺到して公開3週間で〆切となったのです。スポンサーにはダイアモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズがありますが、そのほぼ半数が新規のスポンサーとなっています。OpenStack Days Tokyo 2015 実行委員会の委員長である、ビットアイルの長谷川章博氏は、「HP社のように米国本社の企業はすでにOpenStackのビジネスが立ち上がっており、さらに展開を広げている状況ですが、それに加えて、NECをはじめとする日本の企業も多く名を連ねているのが特徴です。これは、国内のOpenStack需要の高まりを反映していると思われます。」と今回の傾向について分析しています。
開発者、ユーザ企業、SIerなどに向けて、多様なプログラムを充実
OpenStack Days Tokyo 2015は、「創る、活かす、つなぐ」をテーマに掲げています。テーマについて長谷川氏は「OpenStackはクラウドのカーネルであって、それを取り囲むように付加価値をつけるエコシステムプレイヤーがいます。OpenStack Days Tokyoはもともと、エコシステムを形成する方々にいろいろな情報を知って欲しいということで開催しています。キーワードに込めた思いは、『こういう人達に来て欲しい』というイメージです。『創る』は、OpenStackを用いたインフラ構築という意味だけではなく、クラウドネイティブなシステム・アプリケーションを作っていく、クラウドを利用する層の方々にも向けたメッセージです。そこで単純に構築するではなく創造の『創る』としました。
OpenStack Days Tokyo 2015では、導入事例や実務に沿った情報などOpenStackを使う側に対して有益な情報を発信することを特に重視しています。初日のキーノートには、OpenStack FoundationのCOOとして、OpenStack開発コミュニティとビジネスエコシステムを成長させるためのマーケティングやビジネスディベロプメントを主導するMark Collier(マーク・コリアー)氏が来日し、コミュニティの最新情報や、グローバルのOpenStack エコシステムや最新の導入事例などについて講演します。OpenStackのさまざまな側面でのホットなグローバル情報を国内で入手できる貴重な機会です。
技術者向け主催者企画プログラムとして、まず注目すべきはUpstream Trainingです。OpenStack Days Tokyo 2015のダイアモンドスポンサーであるNECの鳥居隆史氏は、「OpenStackはオープンソースなので、誰でも新しい機能などを追加するパッチを開発して投稿したり、バグを直すことができます。しかし、残念ながら日本からのパッチ提供は絶対数でも、市場規模比率でみてもまだまだ少ないのが現状です。OpenStackコミュニティにはバグ管理システムや、コードの品質を保つためのレビューシステムがあります。
日本では10月に20名規模のトレーニングを開催しました。米国以外での開催はグローバルでも初めての例となったのですが、それをOpenStack Days Tokyo 2015でもやりたい。トレーニングとしてはヘビーなもので、自分でパッチを書ける能力も要求されます。オープンソースにコントリビューションするとはどういうことなのかというマインドの部分も重要ですね。ただし、パッチを一度でも出していると、OpenStack Summitの参加費用が無料になるという特典があります。通常は300~400ドル、直前だと1000ドルくらいですので魅力的だと思います。日本は経済規模やIT産業の規模からいうと、相対的にコントリビュータが少ないので、それを増やしていきたいですね」と話してくれました。