これだけはとっておきたい「テスト技術者」の資格

第1回JSTQBテスト技術者資格認定

本連載では、テスト技術者やテストに関係するSEのスキルアップに役立つ資格を紹介していきます。まず第1回目にご紹介するのは、ズバリ⁠テスト技術者⁠のための資格「JSTQB認定テスト技術者資格 Foundation」です。

JSTQBとは?

JSTQBとは、Japan Software Testing Qualifications Boardという団体の略称で、その認定資格であるJSTQB認定テスト技術者の試験は、ソフトウェアを始めとする⁠日本の品質の総本山⁠とも言える日科技連(財団法人日本科学技術連盟)をパートナーとして実施されています。また、この認定資格は日本独自のものではなく、ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)という団体を中心に、各国の団体(日本ではJSTQBが相互認証)によって開催されている国際的な資格なのです。ISTQBは単に国際的な団体というだけでなく、ソフトウェアテストの書籍で日本でもおなじみのRex Black[1]などテスト界をリードしている方々が参加しており、今後テストのスタンダードは実質的にはISTQBが中心となっていくものと思われます。

JSTQB認定テスト技術者資格の体系

ISTQBの体系に従い、図1のような3つのレベルで構成されています。

  • Expertレベル
  • Advancedレベル
  • Foundationレベル

Expertレベルは、まだどの国でも実施されておらず、現時点ではどのようなレベルが認定要件となるか未定ですが、海外では2009年から開催を予定しているようです。筆者の予想では、テストについて社外に対してコンサルティングができるレベルだと思います。

Advancedレベルは、テスト技術者をさらにテストマネージャ、テストアナリスト、テクニカルテストアナリストの3つの役割に分類し、それぞれの専門分野について個別に認定がされます。テストマネージャは、テストをどのように進めるのかテスト戦略を練り、スケジュールなどのテスト計画を立てたり、利害関係者と調整しながらテストを実行する、言わばテストに特化したプロジェクトマネージャのような役割です。テストアナリストは、テスト対象のビジネス領域を元にテスト戦略をテスト実行の作業へ展開したり、ユーザに要求されている品質をシステムが満たしているかを分析する役割です。テクニカルテストアナリストは、テスト対象の技術的な要求からテスト戦略をテストの作業へ展開したり、システム内部の構造が期待される品質のレベルに達しているか分析したり、パフォーマンスやセキュリティなどの技術的な要求(品質特性)を、システムが満たしているかを分析する役割です。

Advancedレベルは、2007年10月にバージョン2007のシラバスが策定され、一部の国では認定試験も始まっていますので、そろそろ日本での開催もアナウンスされるのではと思われます。

Foundationレベルは、もっとも基礎的なレベルで、テスト技術者なら必須であろう知識について認定がされます。したがって、試験の内容も、テストに関する基礎的な用語とその意味、用語と用語の関係など、テスト技術者の共通のコトバの習得を中心に試されます。なぜならばFoundationレベルの目的は、エンジニアに限らずテストに関係するあらゆる関係者同士のコミュニケーションが行き違いなく、円滑にできるようになることだからです。

開発の現場でのテストに関するミスコミュニケーションは、筆者も多く経験があります。あるプロジェクトでは⁠テスト計画⁠について話をしている時に、ベンダAは単にテスト環境の構築について、ベンダBはテストケース仕様について、ユーザ企業の情シス部門はスケジュールが遅れないかに熱心に議論しようとし、それぞれ⁠これを議論することこそがテスト計画⁠だといった状況で、どのようなテスト戦略でテストレベル[2]を設定し、そのテストレベルではテストアイテム[3]は何か、開始条件は? 終了条件は? といった大事なことについて、誰も認識していませんでした。ISTQBでは、このようなことにならないように、テスト技術者に限らず、図1のように開発を依頼するユーザ企業の情シスの方、プロジェクトマネージャ、設計者、プログラマなどテストに関係するすべての関係者へFoundationレベルの理解と受験をお勧めしています。

図1 テスト技術者資格の体系
図1 テスト技術者資格の体系

Foundation試験の概要

日本での開催概要は、表1のとおりです。2006年1月に初めてトライアルが開催され、その後は夏(8月ごろ)と冬(2月ごろ)の年2回ペースで開催されています。開催場所は、東京と大阪は毎回開催されていますが、その他には宮崎、福岡、広島、名古屋、愛知、富山、宮城、札幌などでも不定期に開催されています。出題はJSTQBのWebサイトからPDFをダウンロードできるテスト技術者資格制度 Foundation Levelシラバス 日本語版に沿っており、おおむね表2、表3(出題比率は他国のISTQB加盟団体が公表しているデータ)のような内容になります。出題内容の詳細はぜひシラバスを参照してみてください。

試験時間は1時間で40問ですが、4つの答えから1つを選ぶ選択式なので、時間が足りないということはないでしょう。日本での合格実績は、トライアルを含めた5回で、のべ約3,000名の方が受験され、そのうち6割程度の1,828名の方が合格されています。公表されているデータによると、全世界の合格者はすでに36ヵ国で8万人を超えているそうです。国によってはすでに試験センターでのPCによる受験も可能なようですが、日本では今のところ筆記式です。今後、受験者が増えれば日本でも試験センターでのPCによる受験ができるようになったり、開催回数も増えたりして、徐々に改善されていくものと思われます。

日本での次回(第5回)の開催は8月30日(土)が予定されていますが、とくに東京会場では申し込みの定員に達することが多いので、ちょくちょくJSTQBと日科技連のWebサイトをチェックするか、日科技連のJSTQBのページから申し込めるSQiPメールニュースに登録し、募集が始まったらすぐに応募することを特にお勧めします。

表1 日本における試験開催概要
開催時期 夏と冬の年2回
開催場所 東京、大阪、その他
試験時間 60分
問題数 40問
試験方式 四者択一
合格ライン JSTQBは非公開(推定では正答25問、60%)
合格率 約60%(第4回までの実績より)
表2 Foundationレベルのシラバスと出題比率
シラバスの章 出題比率
1.テストの基礎
テストの必要性、テストの一般原則など
18%
2.ソフトウェアライフサイクルを通じてのテスト
テストレベル、テストタイプなど
16%
3.静的技法
レビュープロセスなど
7%
4.テスト設計技法
仕様ベース技法、構造ベース技法など
29%
5.テストのマネジメント
テストの進捗のモニター&コントロールなど
21%
6.テスト支援ツール
テストツールの種類など
9%
表3 ISTQBの知識/理解レベルの分類とFoundationレベルの出題比率
知識レベル 定義 出題率
K1 用語または概念を覚え、思い出すことができる。 50%
K2 選択理由を述べたり、トピックに関連する事柄を述べることができる。テストに関する概念をまとめたり、比較したり、分類したり、例を挙げることができる。 30%
K3 妥当なコンセプトや技法を選択し、与えられたコンテキストでそれらを適用することができる。 20%

まとめ

私の勤務先では2年ほど前からFoundationに沿った社内教育を始めており、新人教育カリキュラムにも正式に取り入れられました。私の部署では、啓蒙活動の甲斐もあり、今年ついにメンバーの80%が取得できました。みなさんもぜひチャレンジしてみください。

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