今回の特集は「2008年度日本OSS貢献者賞受賞者インタビュー」と題し,受賞者の方へのインタビューをお届けします。本章ではその前段として,最近のOSS動向,日本におけるOSSといった部分にフォーカスします。
OSSとは?
OSSとは,Open Source Softwareの略です。広義の意味で解説すると,「ソースが公開されているソフトウェア」と説明できます。さらに付随して,さまざまなライセンスが定義され,1つのOSSとして提供されています。
現在,OSD(The Open Source Definition)と呼ばれる文書にて,「オープンソース」の明確な定義がなされています。
コミュニティの“チカラ”
現在のようにOSSが発展した大きな要因に,1984年に設立したGNU Projectをはじめとするさまざまな開発コミュニティの存在があります。
OSSコミュニティの多くは,草の根的に活動していたユーザたちが集まって生まれたものが多いのですが,時間の経過とともに参加者数が増え,そこからたくさんの成果物が生まれるようになりました。当然のことながら,成果物が生まれた理由には,参加者たちのアツい想いや優れた能力といったものが強く関わっているのですが,何より参加者自身が自発的に行動するということが,OSSコミュニティの特徴でもあり,強みでもあります。
今,こうしたコミュニティが持つ“チカラ”が,たくさんの方に認知され,広く評価されるようになったのです。
2008年度日本OSS貢献者賞 受賞式の模様。
壇上で挨拶するのは審査委員長の相磯秀夫,東京工科大学理事。
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IPA OSS貢献者賞に見る日本のOSS
さて,日本ではここ数年,OSSコミュニティやユーザの動きに対して企業がコミットしたり,各種メディアが取り上げるという動きが目立ちはじめました。
さらに,2005年からはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が,「日本OSS貢献者賞」と題し,OSSに貢献した人を表彰する制度を設けました。これは,日本におけるOSS開発の振興を図ることを目的に,影響力のある開発プロジェクトを創造,運営した開発者やグローバルプロジェクトにおいて活躍する卓越した開発者や普及に貢献した方を表彰するものです。2005年度に創設し,今年度が第3回目となります。
2005年度
受賞者 | おもな活動 |
鵜飼文敏 | Debian Projectの主要メンバー |
高橋浩和 | Linux Kernel開発への参画 |
高林哲 | Namazu,quickml,gonzuiの開発/プロジェクト運営 |
まつもとゆきひろ | Rubyの開発/プロジェクト運営 |
2006年度
受賞者 | おもな活動 |
比嘉康雄 | Seasarの開発 |
平林俊一 | WideStudio/MWTの開発プロジェクト |
山本博之 | Sylpheedの開発 |
吉藤英明 | IPv6プロトコルスタック「USAGI」の開発 |
2007年度
受賞者 | おもな活動 |
小山哲志 | 日本PHPユーザ会における技術者育成をはじめとしたOSS普及促進への貢献 |
笹田耕一 | Rubyを高速化するシステムYARV(Yet Another Ruby VM)の開発をはじめとしたOSSへの貢献 |
佐藤嘉則 | 組込み向けCPUへのLinuxの移植をはじめとしたOSSへの貢献 |
松本裕治 | 日本語形態素解析システム「茶筌(ChaSen)」の開発をはじめとしたOSSへの貢献 |
OSSの世界に飛び込もう!
今回の特集では,2008年度OSS貢献者賞を受賞した4名にフォーカスを当て,各人のこれまでのOSSの関わり方,取り組み,想いなどについてインタビューしました。
読者の皆さんも,日本のOSS分野で活躍される4名の生の声をご覧いただき,OSSの魅力を感じ取って,ぜひOSSの世界に飛び込んでみてください。
2008年度日本OSS貢献者賞 受賞者の皆さん(授賞式にて)。
左から石井達夫氏,奥地秀則氏,中野雅之氏,宮原徹氏
![2008年度日本OSS貢献者賞 受賞者の皆さん(授賞式にて)。左から石井達夫氏,奥地秀則氏,中野雅之氏,宮原徹氏 2008年度日本OSS貢献者賞 受賞者の皆さん(授賞式にて)。左から石井達夫氏,奥地秀則氏,中野雅之氏,宮原徹氏]()