2008年度日本OSS貢献者賞受賞者インタビュー

第2章 受賞者インタビュー(1)─石井 達夫氏

2008年11月17日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

受賞内容

PostgreSQLの開発,発展,普及に大きく貢献

プロフィール

SRA OSS, Inc.日本支社 取締役支社長。SRA OSS, Inc.日本支社に所属。最近アナログ回帰が著しく,TODOは手帳に万年筆で書き込んでいます。

授賞式での石井氏

授賞式での石井氏

1問1答

Q1:今回の受賞の感想について一言

PostgreSQLコミュニティからの初の受賞ということで,嬉しく思います。ただ,私以外にもたくさんの方がPostgreSQLに対して多大な貢献を行い,かつ成果を上げているので,それらの方々が今後受賞対象になることを希望します。

会社として見た場合は,2006年度のSylpheedの山本君に続き,2人目の受賞となります。弊社の場合は,会社としてOSSに貢献することも目標の1つにしているので,OSS貢献者賞の主旨は別として,結果としてその活動が認められる形になったことは,会社を切盛する立場として素直に嬉しいです。

Q2:自分にとってのオープンソースソフトウェアとは?

「オープンソースソフトウェア」だから何でも良いというわけではないと思っています。開発コミュニティとして,誰もが参加するに値すると感じられること,すなわち個々の貢献の成果が誰かのものになってしまうことなく,いつまでも人類の共通財産として受け継がれることが重要です。この条件を満たしていて,かつ技術的に学ぶことが多く,チャレンジのしがいがあるものが,私にとってはPostgreSQLだったということです。

Q3:これまでのオープンソースソフトウェアへの関わりについて

『Software Design』の2007年2月号に詳しく書いたので,そちらをご覧ください)。

※)
石井氏からの回答にもあるように詳しくは雑誌をご覧いただくとして,編集部で同氏の活動をまとめました。

石井達夫氏とオープンソースの関わりは,1991年にpostgres(今のPostgreSQLの前身)に出会ったのが最初のきっかけでした。その後実際にソースコードを触ったり,それをもとに雑誌記事を寄稿したりしていたとのことです。

そして1995年8月に,postgresプロジェクトのメンバ2人が始めたpostgres95の開発がスタートしたことにより,積極的なコミットがスタートし,postgres95 MLというユーザ向けメーリングリストを開始したそうです。

こうして1996年にpostgre95は,PostgreSQLとして現在の開発体制に移行しました。その後は,国際化を進めるべく国際化パッチの提供を始めたり,実際に本業のビジネスでもPostgreSQLに関わっていくことになりました。そして,1999年3月には,PostgreSQLコミッタの1人となっています。

その後,Windows版PostgreSQL「PowerGres on Windows」やpgpoolやpgpool IIの開発など,さまざまなプロダクト開発に関わっています。

授賞式後の記念講演に立つ石井氏。ご自身のPostgrrSQLにまつわる活動を
第1期~第4期に分けて解説。それは日本のOSSの歴史そのものでもあります。

授賞式後の記念講演に立つ石井氏。ご自身のPostgrrSQLにまつわる活動を第1期~第4期に分けて解説。それは日本のOSSの歴史そのものでもあります。

Q4:OSSにまつわる話で一番インパクトのあったできごと,あるいは一番影響を受けたOSS関連の話題は?

1999年に日本PostgreSQLユーザ会を設立し,また一方でビジネスとしてもOSSを手がけるようになったこと。

このときから実世界でPostgreSQLを普及させるためにはどうしたら良いか,本当に日夜考えるようになりました(ビジネス的にもPostgreSQLを普及させないと成り立たなかったため)。それまでは技術的興味の赴くままにPostgreSQLをいじる単なるエンジニアだったのですが,OSSと社会の関わりについて悩むようになったわけです。

Q5:エンジニアに必要な要素とは?

ことOSSのエンジニアに関しては,1つのことを長い間持続できる根気が必要だと思います。受託開発の仕事は,せいぜい数ヵ月,長くても2~3年しか続きませんから,ある意味プロジェクトが変わる度に新しいことに挑戦できる可能性がありますが,OSSはそうはいきません。できれば,1つのOSSに5年は付き合う覚悟を持ってほしいと思います。

授賞式講演の最後に,生存率20%の癌から復活してツール・ド・フランス7連覇を果たした
ランス・アームストロングという自転車選手になぞらえ,将来の夢を語りました。

授賞式講演の最後に,生存率20%の癌から復活してツール・ド・フランス7連覇を果たしたランス・アームストロングという自転車選手になぞらえ,将来の夢を語りました。

Q6:これからOSS開発,OSSの世界に踏み出したいと考えている若手エンジニアへのコメント

OSS開発コミュニティは英語の壁があったり,外部からはよくわからない不文律があったりして,最初は敷居が高く感じられますが,熱意があれば拙い初心者でも必ず参加できますし,必ず努力しただけの見返りがあります(名声とか技術力の向上とか)。また,世界の一流エンジニアがひしめく「本物の」技術者集団と交流することは,実務でも大いに役に立つはずです。

さあこれでOSS開発に参加しない理由はなくなりましたね:-)

今すぐOSSの世界に飛込みましょう!

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