スキルとは
最近「スキル」という言葉をよく目にします。「スキルを身につける」,あるいは「スキルアップ」といった使われ方をしていますが,このスキルとは一体何者なのでしょうか。
スキルという言葉が使われるようになる前には,「能力」という言葉が多く使われていました。スキルも能力も意味するところは,「人が仕事などを実行する上で発揮される知識や経験」と定義できるでしょう。つまりスキルを身につけるということは,学習で知識を得たり,何かをすることで経験を得るということになります。
とくにIT業界でスキルが重視されるのは,技術が進歩して幅広くかつ細分化されたことで,実務で必要となるスキルもまた細分化されてきていることが理由の1つとして挙げられるでしょう。必要とされるスキルが,ハードウェアからソフトウェア,ネットワーク,あるいはプログラミングやセキュリティ,データベース,運用管理など多岐に渡っており,それぞれに専門性が求められるようになっています。それだけに,自分がやりたいことと,そのために必要となるスキルを見極め,修得することが一層重要な状況と言えます。
スキルと仕事
以前ならばITの仕事は「システムエンジニア」という言葉で一括りにくくられて,仕事に応じて何でもこなす,という風潮がありましたが,最近ではそのようなやり方では通用しなくなってきているようです。もちろん,満遍なく技術的な知識を知っていることは必要ですが,それ以上にスペシャリストとして特定の分野についての高いスキルがエンジニアに求められるようになっています。
たとえばIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提供している,ITに関するスキルを体系的にまとめた「ITスキル標準」には,以下のような説明があります。
プロフェッショナル個人:自らのキャリアパスのイメージを描き,その実現のために自らのスキル開発をどのように行うべきかを判断する指標となります。 さらにキャリアに応じて必要な経験や実績を具体的に把握するなど,キャリアアップやキャリアチェンジを図るための指標としても活用できます。ITスキル標準の指標に沿って段階的に成長することにより,エンジニアリングに基づく実務能力を習得することが可能となります。
このような説明を待つまでもなく,適切にスキルを身につけていくということは,自分がやりたい仕事を実現するための最も確実な方法です。仕事のために必要なスキルは何か,すでに身につけているスキル,身につけなければいけないスキルを見極めることが,求められるエンジニアになるための第一歩と言えるでしょう。
スキルと資格
スキルを表す最もわかりやすい指標として資格があります。情報処理試験のような国が実施する国家試験もあれば,ハードウェア・ソフトウェアベンダが自社製品についての理解度を認定するベンダー試験,中立な立場から認定を行う試験など,さまざまな資格認定試験が存在します。
これらの資格試験は客観的である反面,実務の現場においてはあまり重要視されていないことがあります。重要視されない理由の1つとして,多くの試験がペーパー試験などで「知識」は問うものの,現場で重要となる「経験」を測ることができないためです。極端な例で言えば,詰め込みで知識だけ丸暗記すれば,技術的な経験が無くても試験に合格することも可能です。
また,多くの試験が残念ながら知識を記憶しているかどうかを要求していたり,実務であまり使われない知識まで問うてくる点に問題点があると考えられます。現場では,マニュアル類を参照したり,インターネットで検索したりしながら業務を行うことがあたりまえになってきているので,そのような実務との乖離が資格懐疑論の主たる根拠でしょう。
しかし最近では,知識よりも「考え方」(ロジック)を出題したり,実際の経験がなければ解けないような出題をするなど,試験自体が変化している傾向があるようです。また,スキルの高いエンジニアでないと合格できないハイレベルな試験を用意したり,実機を使用した試験を行うなど,試験のかたちそのものを変えていく試みも行われています。 スキルを客観的に証明するのは非常に困難ですが,資格は第三者に対して一定の知識を持っていることを証明する手段として有効なのではないでしょうか。
