Hipster PDAでGTDをする
筆者はHipster PDAでGTDを実践しています。GTDとはDavid Allenの著書「Getting Things Done」の略で,仕事術にとどまらないタスク管理の手法です。基本的な手法の提示だけで,使うツールは各自の好みでなんでもいいという特徴があります(※1)。
筆者のHipster PDAの構成はGTDをふまえ次のようになっています。
- in-box(Next Action,MIT)
- 白紙の情報カード 1~3枚
- セパレーター(厚紙)
- プロジェクトリスト
- HOLDリスト(連絡待ち)
- 買い物リスト
- 言葉リスト
- BOOKリスト
- セパレーター(厚紙)
- 白紙の情報カード 3~5枚
Hipster PDAでGTDをする

全体で十数枚程度の情報カードでHipster PDAが構成されています。
思いついたことは一番おもてのin-boxに書きます。タスクであればそのままNext Actionになるか,プロジェクトへ転記されるかとなります。MITとはMost Important Taskの略ですが,これについてはのちほどZTDの説明で触れます。執筆時点でプロジェクトは9個,HOLDは4個ほどです。5×3サイズのHipster PDA1枚で収まる程度です。これを超えるようだとプロジェクトにしろ,連絡待ちにしろ,少し多すぎると思います。
買い物リストは買うもののリスト,言葉リストは常に肝に銘じておきたい言葉,BOOKリストは読みたい本のリストです。これらは,常に持ち歩くHipster PDAに備えておくと便利です。
GTDでいうカレンダーはトラベラーズノートの月間ダイアリーを使っています。そうなるとGTDでいうSOMEDAYにあたるリストがありませんが,これは「忘却力」にまかせてあえてリスト化しないようにしています。頭の中にある全てを収集というプロセスでin-boxに落とし込み,それらをフローに従って処理するというGTDの基本からは外れているかもしれません。
SOMEDAYという「いつか多分やろう」リストはつい際限なく膨らんでいき,結局リストを見返さないということになりがちです。そのため,シンプルなGTDを志向する筆者としては,あえてSOMEDAYをリストにしていません。
Hipster PDAでGTDをすることによって得られるのは,重要なことのみHipster PDAにあるという感覚です。シンプルでストイックなシステムとなっています。Hipster PDAは容量は少ないのですが,これに入りきれない情報は持たないくらいでいいというのが筆者の考えです。
シンプルなシステムのため,一週間に一回まとまった時間が必要な,いわゆる「週次レビュー」はやっていません。バスの待ち時間などちょっとした隙間時間を利用してHipster PDAのリストを見るので十分です(※2)。
Hipster PDAとZen To Done
情報カード10数枚で構成されるHipster PDAは,容量が少ないということが長所でもあり短所でもあります。GTDをそのまま実践するには,ツールとして少しシンプルすぎるかもしれません。そこで参考になるシステムがZen To Don(ZTD)です。
ZTDとは簡単に言えば,GTDを補完する考え方と言っていいでしょう。Zen Habits(※3),あるいはLifehacking.jpを見ていただくとZTDについてわかりやすく解説されています。
ZTDは,10個の習慣を一つずつ身につけることでGTDを実践するのと同じ状態に達することを目的としています。自分がやりやすいところから身につけることを目指せばいいのです。そのようなゆるくて取り組みやすいところがZTDの特徴でもあるでしょう。またZen=禅という言葉から連想されるようにGTD以上にシンプルさを追求し,ストイックに徹するようなところもZTDには感じられます。
ZTDを提唱しているZen HabitsでもHipster PDAは紹介されています。シンプルさを志向するHipster PDAはZTDと相性のよいツールのようです。
今回はそのHipster PDAと関連して,ZTDにおけるMITとシングルタスクという2つの考え方について説明します。
最重要事項~Most Important Task(MIT)
MITとはMost Important Taskの略です。ZTDでは1日のタスクを最重要事項の1~3つに絞ることを提唱しています。そのうち少なくともひとつは,自分の人生の目的につながるものがいいでしょう。私はその3MITsを朝一番にHipster PDAのin-box,つまり一番おもてに目立つように赤で記入します。そしてそのMITからシングルタスクでこなします。3MITsが完了するまでは他のタスクには手をだしません。メールチェックもlivedoor Readerのチェックもそれからです。これを心掛けることで毎日自分にとって重要なことを一歩でも先へ進めることができます。また,GTDのフローに埋もれて大事なことを見失ってしまうことはないでしょう。この3MITsを私は業務開始2時間で完了させることを目標として,「2時間仕事術」とよんで日々実践しています。
3MITsのうち少なくともひとつは自分の人生の目的につながるものがいいというのは,GTDのある種の欠点をふまえたものだと思います。GTDをやり始めると多くのタスクを次々とこなすことができるので,ついタスクを数多く処理することが目的化してしまいます。結果,たくさん仕事をした気がするけれど何も達成していないという状態に陥る危険性があるのです。3MITsのうちひとつを自分の大きな目的につなげることで,自分にとって大切なことを見失わずに済むでしょう。
シングルタスクの推奨
シングルタスクというのはZTDで最も重要な習慣のひとつです。一度に行うタスクはひとつにして集中するようにということです。それが「完了」するまでは他のタスクに手をつけてはいけません。並行して様々な作業を進めるマルチタスクではタスクの切り替えに無駄が生じ,ミスも出やすく,能率的ではありません。これには色々異論があるかもしれませんが,現代がマルチタスクを余儀無くされる時代だからこそ,シングルタスクの推奨に意義があるような気がします。
筆者がMITを実行中の時に電話などで飛び込みタスクが発生した場合は,よほどの緊急でない限り,メモをして元のタスクに戻ります。この場合のメモには,オンラインでcheck*pad.jp,机上でバブルマップ,そしてどちらもない時にはHipster PDAを使います。場所を選ばないのがHipster PDAのいいところですね。
レイモンド・チャンドラーという作家は手紙の中で,作家を職業とする者は1日少なくとも4時間くらいは書くことのほかに何もしないことが重要だと言っているようで,村上春樹はその手紙を引用してよく理解できると言っています(※4)。何か大きい仕事をしようと思えば,それぐらい集中してシングルタスクに徹することが必要なのかもしれません。
筆者もこの連載を手掛けるにあたって1日4時間を書く時間にあてるよう心掛けていますが,フルタイムで働き,子育てをしている環境ではなかなか大変です。隙間時間をうまく活用して4時間を確保するようにしています。たとえばバスの待ち時間やトイレに座っている時間にはHipster PDAを持ってブログの文章や連載について考えるといった具合です。
さて次回は,ZTDの10個の習慣のひとつであるユビキタス・キャプチャーという考えとからめてモレスキンについて話します。