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第13回 GTDの生みの親 David Allenさんインタビュー特別編(1)GTD の深層に迫る:David Allen さんが語る「思考」の秘密

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GTDと東洋哲学

MH:
⁠GTDに初めて接したとき,それが僕の大好きな『老子』の哲学と調和しているのが驚きでした。たとえば『このコップのような器が有用なのはそれが空だから』といった概念で,それがGTDの『頭を空にすることで力が生み出される』という概念と似ていて気に入ったのです。こうした東洋文化には親しまれていたのですか?」

DA:
⁠もちろん老子も読んだし,禅と日本文化』の)鈴木大拙の本も,アラン・ワッツもあらかた読んだよ。私はいつも『負の空間』という概念には審美的な魅力を感じていて,だからこそ日本が大好きなのさ」

「その後,武道もたしなんだし,スピリチュアルな経験も経て考えるようになったのは,空にした頭は本当に『空』なのではなくて,雑音のレベルを下げることで,思考はもっと面白い別の場所へと向かうことができるということなんだ。溜め込んでいるものが少ないほど,違う次元の思考が可能になるといってもいい」

「あなたはこの場所の雑音や,物質的なことに目を奪われて,それなりにオーガナイズされた形でそれを頭の中に溜め込んでおくこともできるけれども,頭の中が静かで簡単であればあるほど,思考力や認知力,異なるパースペクティブを引き出す力は増すんだ」

MH:
⁠あなたがGTDの手法を通して,⁠頭のなかにいれるものを選択的にすることで,考えはよりクリアーになる』とおっしゃっているのと関係していますね」

DA:
⁠もちろん。個人的な信条になるけれども,私はそれだけ自由を愛しているんだ」

MH:
⁠それは自分自身の脳からも自由でありたいというのも含まれるわけですね」

最速な思考モデルとしてのGTD

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DA:
⁠そういうことになるね。最近アメリカでも日本でも注目されるようになったEQ,エモーショナル・インテリジェンスという考え方があって,自分自身の心の動きをモニターして制御できるようになることは人間関係上の成功を得るのに不可欠だということが広く知られるようになった。けれども,私はこれを思考についてもやらなければいけないと思ってるんだ。」

「⁠考えが変える』ということがあるけど,それは誰の仕業なのかと考えたことはあるかい? 私たちの『思考』『魂』⁠どんな言葉を使うのでもかまわないが,さまざまな決断を下す,私たちの中のより大きな存在だと理解してほしい)はとても近いところにあるので,ふだんは意識することはないけれども,本当に知恵をもっているのはその『魂』のような部分で,⁠思考』はただのコンピュータなんだ。何かをインプットして,何かをアウトプットするだけ。それの役割は基本的に外界から入ってくるもののパターンを識別するだけなんだ」

MH:
⁠なるほど」

DA:
⁠最近ベルギーの二人の学者が行なった認知心理学の論文でこのことが議論されていて,彼らは私たちの脳が外界にどう反応するかという『思考』のプロセスがGTDのそれによく類似していることを説明している」

「脳はコンピュータを遥かにこえるスピードでパターンを認識することはできるけれども,それは「いま」⁠ここで」起こっている限定的なフォーカスの中でのことなんだ。二つの部屋のことを同時に考えようとしてみたり,二つのコンテキストを混ぜた思考をしようとした瞬間,頭は爆発してしまう。フォーカスが問題になるんだ」

「マルチタスクできないという人もいるけれども,それは厳密には間違っていて,車を運転しながら考えたりといったように,私たちはいつもそれをしているんだ。問題は何にフォーカスをしているかということだ。四人の人に同時に襲いかかられた武術の達人は四人と同時に戦っているようにみえるかもしれないけれども,実際は非常に高速にフォーカスを切り替えながら一人ずつ相手にしているんだよ」

「対応しなければいけないたくさんのタスクが飛んできたときに大事なのは,どれだけ精度よくフォーカスをあわせて,頭脳のプロセッサによけいな負荷を与えないようにフリーの領域を作っておけるかなんだ。そのフリーの場所が大きければ大きいほど,私たちのプロセッサは自由に活動ができるんだ」

MH:
⁠それを実現してくれるのが,GTDというわけですね」


なるほど,と言いながらも,私はこの高度に知的な会話についてゆくのに必死で,その重要性に気づいたのはインタビューのあとになってからでした。

David Allenさんがおっしゃっていたのは,私たちの「頭脳」と呼ばれるパターン認識工場はすぐに稼働の限界を迎えてしまうので,たとえば「1週間先まで考えなくてもいいタスクは一週間先のカレンダーに印をいれる」⁠今は職場だからどうすることもできない家庭のタスクはひとまず忘れる」というように,相手をしなければいけないタスクのフォーカスを瞬時に切り替えられることが,まるで武術の達人のように流れるように複数のタスクをこなすことにつながるということだったのです。

GTDのワークフローは,私たちの頭脳にあらかじめプログラミングされている「認知」の道のりをなぞっているので,⁠目の前の一人の敵に集中する」のと同じように「今必要なタスクだけにフォーカスする」という状態を生み出すことが可能になるというわけなのです。

さて,ウォーミングアップもかねて最初から非常に深い部分に話題が及びましたが,次回はもっと一般的な「GTD初心者が身につけるべき習慣」という質問にDavid Allenさんが明快に答えてくれます。

次回もお楽しみに,HappyLifehacking!

著者プロフィール

堀 E. 正岳(ほり E. まさたけ)

ライフハック,GTD,自己啓発などをテーマにしたブログLifehacking.jpの管理者。海外のブログを広く渉猟しているうちに見聞きしたことや考えたことまとめて,ちょっといい話にして紹介するのが何よりの楽しみ。ライフハックとは「自分を変える新しい習慣作り」をポリシーに,日々地味に更新中。

URLhttp://lifehacking.jp

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