エンジニアと経営のクロスオーバー

第4回 採用によってバーンレートよりも収益の向上を高くする

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今回も,チームについて考えてみます。チームというのは当然ながら構成するメンバーがいるので,そのメンバー自体の増員というステップが必ず存在します。つまり,採用です。会社の規模が小さいうちは,この採用という行為がかなり経営にとって重要な要素になります。

「バーンレート」でどれぐらい会社が生き延びられるかを考える

毎月毎月固定してかかる経費のことを,バーンレートと呼びます。バーンというのはBURN,つまり燃焼のことです。

これは小さい会社の場合,だいたい人件費が一番大きな比率となることが多いのではないでしょうか。成長期に入ると,ビジネスモデルによっては広告宣伝費が大きな比率を占めるようになるケースもあります。

収入というか売上がない場合,現金とバーンレートを見れば何ヵ月会社が存続できるかがわかります。もちろん,収入とか売上がある場合もあるので,ストレートにいえば

  • 「現金をバーンレートで割ると⁠最悪のケース⁠でも何ヵ月会社が生き延びられるかがわかる」

ということです。

広告宣伝費が売上の主要因ならば,バーンレートから広告宣伝費による純益を引いて考える

ちなみに広告宣伝費は微妙なところで,お金がなくなったからやめようとすれば,支出としてはなくすことができます。ただ,広告宣伝費が売上の主要な要因になっている場合,それで売上がなくなってしまえばもっと状況が悪化するケースもあるので,そうした場合には広告宣伝費によって発生している粗利から広告宣伝費を引いた費用,つまり広告宣伝費による純益をそれ以外のバーンレートから引いて考えるほうが自然だといえるでしょう。

ちょっとわかりづらいかもしれないので,具体的に数字を挙げて説明してみます。

人件費やオフィス家賃など純粋な固定費が毎月1000万だとして,広告宣伝費が500万,広告宣伝費をかけていることで発生している売上が700万だとすると,広告宣伝費による純益が200万,なのでバーンレートは800万と考えることもできます。ただ,その売上がそこまで固くない場合,1000万をバーンレートとして考えるほうが自然です。

前者をネットバーンレート,後者をグロスバーンレートと呼んだりもするそうですが,私はあまり聞いたことはありません。いずれにしても,バーンレートは良い意味でいえば「資金を燃焼する効率」⁠悪い意味でいえば「会社を燃やし尽くす速度」ということです。

採用はバーンレートと戦力を上げる非常に重要な行為

さて,会社が小規模の場合なぜ採用が重要かというと,最大の理由は「それによって変動するリソース比率が大きい」からです。5人の会社が1人採用すると20%アップ,6人となり全体で17%となります。戦力のアップでもありますし,バーンレートのアップでもあります。これは,かなり経営に与える影響が大きいといえるでしょう。それだけに,採用というのは,非常に重要な行為なのです。

前回も触れましたが,エンジニア出身の社長の場合,相対的にはエンジニアの力量を見極めることが得意だといえます。また,良いか悪いかはさておき,エンジニア出身の社長が経営する企業はエンジニア比率が高いことが多い傾向があるため,それだけに余計エンジニアの採用の機会が多くなることもあり,そうしたメリットはプラスに働くといえます。

ただ,エンジニアの比率を上げる傾向にあるのは,ビジネスモデルとしてはあまり良くない場合もあるので,それ自体の良し悪しはまた別の話です。当然のことながら,採用というのはバーンレートのアップ以上に戦力アップを期待しておこなうものです。戦力というよりは,利益というほうがより適切ですね。アップするお給料のほうが利益より大きければ,会社が燃え尽きるのが早くなるだけです。ただ,入社していきなり戦力になるわけではないので,最初の半年くらいはバーンレートのアップ率のほうが高くなるのはやむをえないともいえます。

「社員の給料をどれだけ上げられるか?」はビジネスモデルによって変わってくる

ここでちょっと話は変わりますが,基本的に社長というものは,⁠社員の給料は,上げられるものなら極力上げたい」と考えているものです。社員の給料は低いよりは高いほうが気持ちよく働いてもらえますし,不満も減るでしょうし,勤務年数も上がるでしょうし,いいことづくめです。

ただ,青天井で上げてしまうと会社が倒産してしまいますから,⁠許容できる範囲で」アップするしかありません。それは経営手腕とかビジネスモデルによって変わってくるため,やはり最重要な要素はビジネスモデルだといえるのです。

ビジネスモデルが素晴らしいものではないため,お給料がそこまで上げられない,というのは,いわゆるブラック企業みたいに呼んで(呼ばれて)しまうのは可哀想ですね。社員からの搾取を意図的にやっている,いわば確信犯のケースはまちがいなくブラック企業といえるでしょうが,企業が発展途上のために起こるケースはまた違う名前を付けたほうがいいかもしれません。

「エンジニアの採用は得意なのでそれを活かそう」とすると本末転倒になりかねない

それはさておき,会社が小規模のうちは,この「採用によってバーンレートよりも収益の向上を高くする」ということが,ビジネスモデルが決定した後であれば最重要な経営判断の1つになるのはほぼ確実です。しかも,最重要なわりに,その機会が多いのも特徴です。少なくともエンジニア出身であれば,エンジニアの採用においては有利なのはまちがいないですから,そうしたメリットを最大限に活かすようにすることが企業経営にとっては重要だといえます。

ただ,それがエンジニアメインのビジネスモデルにつながる,つまり本末が転倒してしまうと意味がないので,その点に注意する必要があります。⁠とりあえずエンジニアの採用は得意なのでそれを活かそう」とすると,かんたんに受託という選択肢に転がり落ちてしまうことがよくあるのではないかと思います。

しかも,⁠自分が戦力になりやすい」という誘惑もあります。このあたりは,この連載の第1回あたりと合わせて,参考になれば幸いです。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータセンターである「データホテル」を構築,運営。2003年にベイエリアにおいてVoIPベンチャーであるRedSIP Inc.を創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 株式会社ゼロスタート)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZETA CX」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

blog:http://blog.zaki.jp/
社長コラム:https://zero-start.jp/category/column

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