エンジニアと経営のクロスオーバー

第10回 アクセルを踏む決断をいかに下すか

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ハイリスクかローリスクか,短期的か長期的かで判断に悩む

エンジニア出身社長というのは,事業のアクセルを踏むのが苦手な傾向があると思います。

社長の仕事の大半を占めるのが,さまざな判断と決断です。話を単純にするために,AとBの2択の判断があったとすると,境界条件が正しければあらゆる面でAのほうが良いならば悩むことはありません。AとBのどちらを選ぶかが悩ましいケースは,だいたい以下の2つのパターンのどちらかです。

  • ハイリスクハイリターンとローリスクローリターン
  • 短期的と長期的

この2つのパターンは,一概にどちらが良いとも悪いともいえないため,正解というものがありません。具体例を挙げてみてみましょう。

採用のケースでは,多くのケースでは採用するがハイリスクハイリターン,しないがローリスクローリターンです(逆のこともあります)⁠

クライアントとの契約で,フロー契約(製品やソリューションを売り切る形態)は短期的に良く,ストック契約(継続的に請求をする形態)は長期的に良いといえます。

オフィスの拡大とか増床は,するほうがハイリスクハイリターンで長期的に良く,しないほうがローリスクローリターンで短期的に良い,といえるでしょう。

こんな単純に分けられるケースというのはほとんどないですが,いずれにしてもこうした次々に現れる判断事項をどう処理していくかが,社長としては重要になるわけです。

無条件にローリスクローリターンを選択し続けることは,実はハイリスク

こうした種々の判断において,⁠エンジニア出身の社長の場合,相対的に,ローリスクローリターンを好むのでは」というのが私の所感です。⁠借り入れなんかして返せなかったら」とか「そんなに採用して赤字になったら」とか,端的にいうと手を広げることに抵抗があるような気がします。

メンタリティ的には,前回の「委任が苦手」というのと同じかもしれません。もちろん,ローリスクローリターンというのは,悪い判断ではありません。悪い判断ではないので,ハイリスクハイリターンとどちらにするか悩むわけです。

ただ,ローリスクローリターンは機会損失をする可能性があるのはまちがいないわけです。判断するときには結果がわからないので結果論ではありますが,事業に好不調の波があったとして,好調のときにそのメリットを享受していないと,不調のときに耐える余力がなくなってしまいます。つまり,好調というか条件が良いときでも無条件にローリスクローリターンを選択し続けることは,それはそれで実はハイリスクだということです。

「ローリターンが続くのはハイリスク」なのです。ここぞというときには,ある程度アクセルを踏む選択も必要になります。

的確に判断できる経験値がたまるまでの時期をいかに乗り切るか

ただ,⁠アクセルを踏んでいいかどうか」というのは,経営に関する経験値が低いうちは,⁠勘⁠というと聞こえはいいですが,当てずっぽうになりがちです。当てずっぽうでハイリスクな選択をするくらいなら,ローリスクな選択のほうがマシなのもまた事実です。

「事業が軌道に乗る」という表現はよく聞きますが,実際そういうトレンドの変化はあるものです。その要因としては,⁠知名度が上がってくる」⁠メンバーのレベルが上がってくる」⁠製品やサービスの成熟度が上がる」などもありますが,重要な要因の1つに「判断や決断において,どちらを選ぶべきかを当てずっぽうではなく選択できる経験値がたまる」というものがあるような気がします。よっぽど選んだ市場やビジネスモデルが悪いわけでもないかぎり,正しい選択の割合が高ければ,企業は継続的に存続し,かつ成長できるでしょう。

問題は,⁠そうなる前に行き詰まってしまうことが多い」という点です。創業当初は,当てずっぽうでもなんでも,判断や決断をし続けなければいけないわけで,⁠どうやってその経験値の浅い時期を乗り切るか?」が大きなハードルになるでしょう。

創業して10年続くというのはなかなか大変ではあります。3年とか5年で行き詰まってしまうケースは多々見ます。その中には,⁠ローリスクローリターンでやり続ける(というハイリスクを冒す)と,3年とか5年で限界を迎える」という理由も,ある一定の割合であるのだと思います。

「それっぽいことを言う外部の人」を信じるとかえって悪い結果になりうる

「そういう初期のリスクをどうヘッジするか?」という解決策として,⁠外部の有識者の意見を参考にする」というパターンがあります。たとえば,出資を受けてアドバイスをもらうとか,社外役員になってもらってアドバイスをもらうなどです。

それはそれでたしかに1つの有力な選択肢です。外部の意見はそれなりに根拠がある場合が多いので,当てずっぽうではなくて盲目的に信用しても,自分で全部当てずっぽうで判断するよりはだいぶマシではあるでしょう。

ただ,外部の意見をどう評価するかは,結局当てずっぽうになってしまうのもまた事実です。外部の意見を正しく評価できるなら,自分でもそこそこ正しく判断できそうです。

外部の意見を参考にする場合に重要なのは,⁠その外部の人が,どのくらい自分の創業した会社について真剣に考えてくれているか?」です。ぶっちゃけ言ってしまうと「それっぽいことを言う外部の人」というのもうじゃうじゃいます。そういう意見を盲目的に信じると,真剣さがない分,自分で判断するより悪い結果になってしまうかもしれません。

なので,出資とセットにする(ことで自分の会社が成功すればその人にも相応のメリットがある状態にする)ことで,真剣になってもらうようにする方法があります。それが良いか悪いかはさておき,その判断自体,相当難しいでしょう。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータセンターである「データホテル」を構築,運営。2003年にベイエリアにおいてVoIPベンチャーであるRedSIP Inc.を創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZETA CX」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

blog:http://blog.zaki.jp/
社長コラム:https://zetacx.com/column

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