エンジニアと経営のクロスオーバー

第11回 営業をやるとエンジニアライフに絶対にプラスになる

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この連載もあと2回ですが,最終回はこれまでのまとめになると思うので,実質今回が最後のトピックです。

今回は,エンジニアは営業が苦手,という内容です。⁠そんなのあたりまえ」と思うかもしれませんが,営業といっても,営業職ではなく,営業行為という意味です。

会社の仕事の大部分は「社外の人を振り向かせる」という意味ではほとんど同じ

実は,会社の活動のかなりの部分は営業です。営業職が営業なのは当然として,採用,資金調達,広報なども全部営業です。

たとえば採用ですが,⁠この人を採用したい」という候補者に会ったとき,そういう人は他社からも採用オファーが出ていることが多いでしょう。そうした場合に,⁠どうやって当社の良い点を伝え,入社してもらうか?」というのは,営業職で発注をもらうケースにかなり似ているといえます。⁠口八丁手八丁が良い」ということではありません。営業職にしても採用にしても,当社の偽らざる良い点をアピールし,お互いにメリットがある付き合いができる可能性を探るということです。

資金調達も,これとまったく同じであるといえます。銀行や信金,またVCの担当者に当社の良い点を説明し,融資なり出資がお互いにメリットがある可能性を探り,相手にもそれを理解してもらうというのが,資金調達の本質です。

結局のところ,会社の仕事の大部分は,⁠社外の人を振り向かせる」という意味ではほとんど同じということです。

経営者が営業できないと,会社の成長はスピードダウンしてしまう

ところが,エンジニアは相手が人間ではなくコンピュータであることが多い,ある意味めずらしい職種です。相手がコンピュータの場合,振り向かせる必要はなく,⁠こうすれば目的どおりに動作する」というソースコードなり設定なり設計をするのがアウトプットです。もちろん,仕様面で社内の別のだれかやクライアントの人とやりとりする必要もあるので,コンピュータだけ相手にしていればいいということはないですが,⁠相手を振り向かせる」という必要はさほどありません。

そのため,エンジニア出身の経営者の場合,会社の業務の大半を占める「相手を振り向かせる」という経験値が少ないまま経営者になっている可能性があります。⁠相手を振り向かせる」というより「口説く」というほうが,表現としてはしっくりくるかもしれません。いちエンジニアであるうちはよくても,社長になった場合,優秀な人材を口説くとか,銀行やVCを口説くとか,重要な案件の相手先を口説くとか,そうした営業的な行為を求められることはままあります。そこが苦手だと,会社の成長は相対的にスピードダウンしてしまうでしょう。もちろん,ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫とか,ソニーの井深大と盛田昭夫のような,役割分担をしてうまくいくケースもなくはないですが,これはレアケースではないでしょうか。

ちなみに,逆パターンはたくさんあります。営業とか企画出身の社長もしくは起業家の社長とCTOという組み合わせです。ただこの場合,CTOは純粋に技術の追求を期待されるケースが多いので,エンジニアの営業経験の少なさというのはあまり問題にはなりません。

余談ですが,⁠追求」「追及」を誤用しているケースは多いですね。

いちエンジニア,いちスタッフのときに,営業をやってみよう

私見ですが,エンジニアも1年くらいは営業をやるほうが,その後の20年,30年と続くエンジニアライフにとって絶対にプラスだと思います。ただ,それに同意して実行するエンジニアは限りなくゼロに近いでしょうが(笑)⁠

私は新卒採用でエンジニアでしたが,なぜか入社時の配置で営業になりました。最初の2ヵ月くらいは営業としての経験もノウハウも何もなかったので苦労しましたが,1件小口の受注(20万くらいでした)を取れたあとは不思議と順調に受注できるようになり,年間6億円くらいの実績を出すことができました。そういう意味では,営業に配置した当時の会社の慧眼だったのかもしれません。ただ,これを読んで,万が一「営業をやってみたい」と思う人がいたとしても,それで貴重なエンジニアを営業に配置転換をしてくれる会社がそもそもあまりない気もします。

もし,自身が「エンジニアからいずれ起業とか経営にシフトしたい」と考えていたら,営業という行為は必ず必要になります。起業してから,経営層になってからは責任も重いので,いきなり経験のない営業行為に取り組むのはハイリスクであるといえます。そういう意味では,いちエンジニアとかいちスタッフのときに,営業をやってみるといいのではないでしょうか。

チラシ配りは相手の考えを把握するのに役立つ

私の経験だと,単なるチラシ配りも結構いい経験になります。昔,知り合いの会社がイベントに参加しているときに,会場でそのチラシ配りを手伝ったことがあるのですが,2時間もやっているとだんだんコツがわかってきました。来場する人を自分に近づいてくる5秒くらいでどんな人か,もしくは複数人だったらどういう関係かを見抜いてチラシを渡すと,何も考えないで渡すより格段に成功率が高くなりました。たとえば1人なら空いてる手に渡すほうがいいですし,カップルの場合は受け取ってくれそうなほうに渡すなどです。ちなみにカップルの場合,男女でどっちが受け取ってくれそうかは,両方のパターンがありました。

結局,営業というのは「相手の考えを把握する」というのが最初の一歩なので,チラシ配りでは「口説く」というアクションまではいかないですが,相手を把握するには結構いいと思います。もしよかったらやってみてください(笑)⁠

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータセンターである「データホテル」を構築,運営。2003年にベイエリアにおいてVoIPベンチャーであるRedSIP Inc.を創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZETA CX」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

blog:http://blog.zaki.jp/
社長コラム:https://zetacx.com/column

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