エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第4回 ファシリテーションとは何か?

2008年8月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

連載も4回目になりました。「何となくファシリテーションはわかってきましたが,結局どういう活動をする人がファシリテーターなのですか?」という質問を読者の方からいただきました。

そこで今回は,「ファシリテーションとは何か?」その根本的な疑問を解説します。

ファシリテーションとは?

ファシリテーションは広い適用範囲があります。ビジネスはもちろんですが,他に教育やコミュニティ・街づくり,研修などでも活用されています。使われる場所が異なれば,ファシリテーションの意味もファシリテーターの役割も微妙に違います。しかし共通しているのは,ファシリテーションとは,参加者の活動を支援するため,集団への働き掛けを行うという事です。

促進する人

ファシリテーション(facilitation)の接頭語であるファシル(facil)はラテン語でeasyを意味します。容易にする,促進するというのが原意です。ファシリテーターを一言でいうと,促進する人といえます。具体的には,チームの活動を阻害するさまざまな要因(感情的対立,意見が噛み合わない,発言できない雰囲気)を排除し,うまく事が運ぶように促す人です。

ファシリテーターは落としどころに落とす人か?

ファシリテーターは落としどころに落とす人でしょうか?という質問をよく受けます。つまりファシリテーターとは自分の想定した結論(落としどころ)に向かって,参加者を導いていく人か?という疑問です。しかし,これは違います。ファシリテーターはあくまで脇役です。参加者が納得する合意を得るために,充分に議論をしつくさせる事に徹し,参加者を自らの想定へと誘導することはありません。

ファシリテーターは話をまとめる人ではなく,話がまとまるように支援する人といえます。

話をまとめるために

話がまとまるには,その前に充分な話し合いが必要です。顧客の要件を決めるときも,顧客の様々な部署のステークホルダーから充分に意見を聞き,みんなが納得するまで話し合う事が必要です。

要件定義を中途半端な話し合いで終え,次のフェーズへ進んだプロジェクトは,最後には大抵失敗してしまいます。充分に意見を言えなかった人のモヤモヤした気持ちは最後に抵抗という形で現れます。みなさんもそのようなプロジェクトの経験はないでしょうか?

しかし,わかっていても,なかなか充分に話し合う事ができません。その理由は,部署間の対立があるため,話し合いが感情の対立になり,思うように話ができなかったり(喧嘩になったりして),意見がうまく言い出せなかったり,意見がでても整理できなかったりするからです。

こうした時に,感情的対立を解消させたり,意見を引き出したり,でてきた意見を整理する人,つまりファシリテーターが必要になってくるのです。

※)ファシリテーター
=話し合いをまとめるために,議論をし尽くさせる人

よいチームワークのために

ドラッガーは次のように言っています。

知識は高度であればあるほど単独では役立たない。したがって知識社会は,さらに一層組織社会となる。しかも知識には上下が無いがゆえに,個々の組織の構造は軍隊型でなく,チーム型とならざるを得ない。

こうしたチームが力を発揮するためには,充分なコミュニケーションが必要です。一人ひとりをみると優秀なSEがそろっているのですが,全体としてみると納期が遅れたり,品質がいまひとつだったりするチームをこれまで何度かみてきました。これはSE同士の横の連携がうまくいっていないのです。

こうした時,チーム内のコミュニケーションが悪い原因を探し出し,取り除く人が必要です。SEは特に内にこもってしまう傾向があるように感じますが,SEが安心して自由に意見交換できる場作りを行う事が必要です。

※)ファシリテーター
=チームワークを阻害する要因を排除する人

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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