エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第7回 議論を活発にする(導入フェーズ)

2008年11月17日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

会議がシーンとして,気まずい雰囲気を感じた経験は皆さんもあると思います。意見が対立して揉めるのも大変ですが,発言がなく,しらけた会議も困りものです。

今回は,話し合いで議論を活発にする方法を解説しましょう。

発言が出ない2つの理由

発言がでない理由は,参加者側からみると,大きくわけて2つの理由があります。

  1. 発言したいけど発言できない。
  2. そもそも発言する意見がない。

それぞれ考えてみましょう。

発言したいけど発言できない訳

ちょっと想像してみてください。今,あなたは会議室にいます。これから定例の報告会議が行われます。かなり大きなプロジェクトなので参加者は50名近く,しかも大会社の偉いさんや,ベンダー会社の大物重役も列席しています。

あなたは,新人プログラマーとして,会議室の隅に座っています。会議は整然と進み終わりに近づいた時,ふとプロジェクトを良くするアイデアを,あなたは一つ思いつきました。

その時,いかにもやり手の議長が「何かアイデアのある方?」と,お約束で発言を求めます。さて,あなたはどうしますか? 勇気を振り絞って発言するか?それともやめるか…。

かなり勇気がいるシチュエーションですね。何か言ったら鼻で笑われる,もしくは怒られるかもしれない。あるいは路傍の小石のように無視されるかも。つまり話を聴いてもらえる保証がないのです。

こんな時,アイデアを即座に判断されるのではなく,きちんと聴いてもらい,受け留めてもらえるのなら,発言してみようという気になるのではないでしょうか? 誰だって聴いてもらえるという確信がなければ発言をしり込みしてしまうものです。

ルールをつくる

参加者にアイデアをドンドン出してもらい議論を活発にするには,まず意見を聴く人が必要です。そこで,ファシリテーターは参加者の話に耳を傾け,受け留め,聴くことをします。とはいえ実際話を聴くのは,簡単なようで実に難しい。

なぜかというと,ファシリテーターは参加者の話を聴く以外にも,プロセス(進み方)にも気をつけなければいけないし,他の参加者の態度も観察する必要があります。またホワイトボードに発言を書くこともあるでしょう。つまり,かなり忙しい状態です。話を聴くことに集中しても,聴くことは難しいのに,他のことにも目を向けながら話を聴くのは,かなりのコミュニケーション上級者でなければできないことです。

できない場合は,どうすればできるかを考えましょう。いろんな事をしながら,話を聴くにはどうしたらよいと思いますか?

ひとつのアイデアは,他の人に話を聴いてもらう事です。つまり参加者同士が話を聴きあうような雰囲気をつくり,話しを聴くのはある程度,他の参加者にまかせるのです。具体的には,次のようなルールを最初にきめておくのです。

  • 「だれかが話しているときは,途中で口を挟まない」
  • 「話しは否定せずに,一度受け留める」

また,これだけでは一人の人が話しすぎる危険もあるので,さらに次のようなルールも追加しましょう。

  • 「一人の発言は30秒以内にする」
  • 「発言が偏らないようにする」

後は,このルールが守られるようにチェックすればよいのです。

実際,会議の場で人の話しを聴く雰囲気ができていると,ファシリテーターは非常に楽チンです。そもそもこの雰囲気というのは,上記のルールが暗黙のルールとしてみんなが守っている状態といえます。

チームを機能させるコツは,このルールをメンバー全員にしっかり定着させることです。ファシリテーターは会議だけでなく,日々の仕事でメンバーを教育することが大切です。

具体的には,ちょっとした会議でも,上記ルールを作って実践したり,いつも見える位置にルールを書いたりして,ルールをメンバーに意識させる事から始めるとよいでしょう。

さて,ルールも作れないような場ではどうするか? 例えば顧客との打ち合わせ会議などで,ルールを提案するような雰囲気にない場合です。この場合は,ファシリテーターは腰をすえて発言者の話を聴きましょう。当然,他の注意が手薄になるので,時間管理はタイムキーパー役をつくり別の人にたのむとか,もう一人ファシリテーター役をサブとしておくとか,ホワイトボードに書く人を専門でお願いするとか,の工夫が必要になってきます。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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