玩式草子─ソフトウェアとたわむれる日々

第44回 Nexus 7とMTP[その1]

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前回紹介したように,SANEが対応しているスキャナを使えば,Linux環境でも書籍のスキャニングは簡単に行えます。加えて,最近のデスクトップ環境では,tarやzipでまとめた書庫ファイルを透過的に扱うことができるので,スキャンした画像データが何百ファイルになっても,1つの書庫ファイルにまとめたまま閲覧することができます。これらの機能のおかげで,自炊作業もずいぶん簡単になり,次第に自製の電子書籍データもたまってきました。

そうなると外出時やベッドに寝っころがっている時など,PC以外の環境でも電子書籍を読みたくなります。そこで電子書籍用の端末を探してみることにしました。

前回も触れましたが,昨年はAmazon Kindleや楽天Koboなど,安価で高性能な電子書籍用端末が多数発売され,何度目かの電子書籍ブームとなっていました。これらの専用端末は,それぞれの発売元が展開する電子書店と密接に結合され,そこで購入した電子書籍を利用するには便利そうな機能があれこれ用意されているものの,電子書店が販売する電子書籍に不満を持っていて,自炊で書籍の電子化を進めている人間にとっては,特定の電子書店と結合しているような機能はむしろ邪魔になりそうです。そこで汎用的なタブレットPCとしてGoogleが発売している,Nexus 7を試してみることにしました。

図1 Nexus 7の外観

図1 Nexus 7の外観

Nexus 7は,Googleが開発している7インチ画面のタブレットPCで,画面解像度は1280x800,NVIDIAのTegra3というARM系のCPUを使い,メモリは1GB,OSはAndroidの最新版(購入時は4.1で現在は更新されて4.2.2)が入っています。性能的にはAmazon Kindle fire HDとほぼ同等ながら値段は少し高め,でも,開発元であるGoogle謹製なので,常にAndroidの最新版が利用できる,という機種です。

Nexus 7を自炊データ用のブックリーダとして使うためには,まず自炊したデータをNexus 7側に持ち込む必要があります。Nexus 7を動かしているAndroidは,Linuxカーネルを中心としたOSではあるものの,モバイル機器用に特化した作りになっているため,使いなれたLinux環境のようにFTPやNFSでデータを持ちこむことはできそうにありません。そこであれこれ試行錯誤してみることになりました。

Google Drive経由のデータ転送

Nexus 7のネットワーク機能はWi-Fi接続に限られます。一応手元では,ノートPC用に無線LAN環境も構築していましたし,Google Playショップで注文して,Googleで使っているユーザアカウントがあらかじめ設定されて届いたので,特に何も設定しなくてもGoogle Chromeを使ったり,Gmailにアクセスできました。

しかし,Nexus 7を動かしているAndroid上には,ftpやscpといったLinux環境で使いなれたコマンドはありませんし,NFSやSambaを使ってファイルシステムを共有するような機能も無さそうです。さて,どうしたものか,と調べてみると,Nexus 7にはGoogle Driveにアクセスする機能が用意されていて,この機能を使えばLinux環境から自炊データを送れそうです。

図2 Google Driveと同期

図2 Google Driveと同期

データをNexus 7に持ち込めれば,Android用に開発されている電子書籍用アプリを使って自炊データを読むことができます。Google Playを眺めると,無料で使える電子書籍用アプリも多数登録されており,今回は,それらの中から"ComittoN"というアプリを使ってみることにしました。

"ComittoN"に限らず,たいていの電子書籍用アプリは,ZipやRARといったWindows環境で広く利用されている書庫形式に対応しており,書庫を自動的に展開して収められた複数の画像データを表示することができます。

図3 ComittoNの書庫データ表示機能

図3 ComittoNの書庫データ表示機能

残念ながらAndroid用のアプリの多くはUNIX系で主流のtar形式には対応していないものの,Windowsで広く使われているzip/unzipはOSSなコードも公開されており,機能をまとめた共有ライブラリも存在するので,UNIX/Linux環境でも不便なく利用できます。そのため,前回紹介したように,スキャンした自炊データを書庫化するのにzipコマンドを用いたのでした。

一方,WinRARに代表されるRAR形式は元々Windows用のシェアウェアとして開発されたソフトウェアで,展開するためのunrarコマンドはソースコードを公開したfree版があるものの,作成するためのrarコマンドは,Linux用はバイナリのみの試用版が提供され,継続使用するためには別途ライセンスを購入する必要があるようです。

Google Driveはオンラインでファイルを共有するためのネットワークストレージシステムではあるものの,オフラインで利用するというオプションを指定すれば,Nexus 7側にファイルをダウンロードすることも可能です。この機能を使えば,無線LANの届かない寝室のベッドに寝転がりながらでも自炊データを読むことができそうです。

著者プロフィール

こじまみつひろ

Plamo Linuxとりまとめ役。もともとは人類学的にハッカー文化を研究しようとしていたものの,いつの間にかミイラ取りがミイラになってOSSの世界にどっぷりと漬かってしまいました。最近は田舎に隠棲して半農半自営な生活をしながらソフトウェアと戯れています。

URLhttp://www.linet.gr.jp/~kojima/Plamo/index.html

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