玩式草子─ソフトウェアとたわむれる日々

第76回Plamo Linux、OSCへ─「オープンソースカンファレンス2015 Tokyo/Fall」出展レポート

Plamo Linuxメンテナとして活動させていただいている松木と申します。今回はこじまさんからのご指名により、オープンソースカンファレンス2015 Tokyo/Fall(以下OSC)の出展レポートを書いてみたいと思います。

とはいっても当日のレポートだけでは何なので、出展までの経緯、準備した内容、当日の流れ・状況など、OSCにこれまで出展したことはないけど、今後出展したいなと思われている方々の参考になりそうな事柄についても少し書いてみたいと思います。

OSC出展について

OSC出展に関しては、Plamo LinuxのメンテナMLでここ2年ほど東京開催があるたびに持ち掛けていました。けれど、賛同者が居ずに流れていました。今回も声をかけてみましたが、これまでと同様、賛同者は現れない状態でした。

しかし、出展側から見るとどんな様子なのかとか、Plamo Linuxのユーザの声なんかをちょっと聞いてみたいなという興味があったので、どこまでできるかわかりませんでしたが少し時間を作って一人でも準備して出展してみようかと思い、Plamo Linuxメンテナの方で許可をもらいました。この時、OSCの申し込み締め切り3日前(8月21日)でした。

そこから急いでOSC事務局に連絡し、申し込み書類をメールで送ってもらいました。せっかく出るなら、セミナーも展示も両方やろうかなと思い、その形で申し込み書類を記入して事務局の方にメールで送り返し、無事、受理されました。申込用紙記入の際にグループ名を記入する必要があり、これまで特にグループ名などはなかったのでどうしようかと少し悩みましたが、とりあえず適当なもので良いかと思い、今回は「Plamo Linuxメンテナグループ」というグループ名にしました。

展示会場向けの準備

Plamo Linuxとしては、過去にPC98シリーズをサポートしていたことはありましたが、現在はPC/AT互換機しかサポートしていません。しかし、少し興味があったので、手元では2008年ごろからMacでも動作するように調整をかけていました。その作業を行うために、手持ちのMacBookでPlamo Linuxを稼動させていました。このマシンを展示すればPlamo Linuxを使っている人たちにも少しは興味を持っていただけるかなと思い、持っていくことにしました。PC/AT互換機は、手持ちのもので展示できる状態のものはなかったので省略することにしました。

また、Plamo LinuxのインストールDVDを展示会場で配布しようかなと思っている旨をメンテナMLで伝えたところ、せっかく配るなら新しいバージョンをリリースした方が良いんじゃないかなという話になりました。当初は、5.3.1の次のバージョンなので5.3.2かなという話もありましたが、区切りのいい数字にしたほうが良いんじゃないかということでバージョン6.0とすることになりました。

インストール DVD を配布するのと同時に、Live DVDのP-Plamoの方も配布したほうがいいんじゃないかという意見もありましたので、インストールDVDだけではなく、P-Plamo DVDも配布することにしました。

そんなこんなで、Plamo Linuxのリリースに向けての作業が実質2ヵ月前くらいから始まりました。こじまさんをはじめ、メンテナの皆さんで新しい機能の追加やパッケージの差し替え、インストーラの調整、実動作チェックなどを行って作業を進めていき、OSC開催2日前(10月22日)に無事リリースすることができました。

そこから2日間で配布用のインストーラDVDを作成しました。どのくらいの枚数が必要なのか目安が全くわからなかったので、とりあえず 32bit版を5枚、64bit版を30枚用意しました。

一方、P-Plamoの方はPlamo Linux 6.0ベースに変更するには時間的に厳しいという判断で6.0ベースにするのをあきらめ、OSCでは現在の最新版である5.3.1のDVDを配布することになりました。こちらはリリース作業を待つ必要はありませんので、OSCの1週間前くらいから作成しはじめ、32bit版を5枚、64bit版を25枚用意しました。

その他の準備としては、配布DVDに添付するちょっとした説明書の作成、DVDに貼るためのラベルシール準備、DVDメディア用の袋、あと会場展示用のちょっとした看板などを準備しました。配布DVDを入れておくための箱や、その箱につけるためのポップなども用意しました。

配布DVDに添付する説明書は、当初、インストールDVDの方はインストールの方法を書いた紙を、P-Plamoの方は簡単な使い方を書いた紙をつけようと思っていましたが、今あるドキュメント類を探したところそういったものはないことに気がつきました。ゼロから作成しようかとも考えたのですが、ちょっと今回は時間が足りず、仕方なくリリースノートをつける形にしました。DVDに貼るラベルシールは、プリンタ用の印刷シール用紙を購入してきて印刷。看板の方はA4サイズの用紙に普通にプリントアウトしたものにダンボールで足を作って立てかけられるように作成しました。

と、こんな感じで展示会場用の準備は行いました。

セミナーの準備

Plamo Linuxとしてのセミナーはおそらく初めて行う形になるので、内容はPlamo Linuxの紹介と、どのようにメンテナンス・開発作業を行っているのか、パッケージ作成方法に関して説明することにしました。また、セミナーのときに簡単なPlamo Linuxの動作デモと実際にパッケージ作成を行う作業のデモ、lxc-plamoのデモなども行おうと考えました。

セミナー資料作成は最初に簡単なテキストを作成し、メンテナ ML の方に投げて間違い等がないか確認をとりました。その後、そこでいただいた意見を反映させた形でPowerPoint形式に整形しました。

セミナーのプレゼンテーションで使うマシンですが、デモも行う都合上、当初は展示会場に展示する予定のMacBookを使おうと思って一通り準備を行っていました。しかし、開催1週間ほど前にモニター出力のチェックを行った所、Plamo LinuxでのVGA出力がうまく動作しないことが判明。修正していると間に合わないかなと思い、 Windowsマシンを使ってプレゼンを行い、VirtualBox上にインストールしたPlamo Linuxでデモを行うことにしました。ちょっと残念。

その他の前準備

OSC開催の1週間ほど前にメンテナMLの方で「一緒に参加して、手伝っていただける方っていらっしゃいますか?」と尋ねたところ、田向さんが手を上げてくださり、両日フルタイムで参加していただけることになりました。また、P-PlamoのUSBメモリ版も10個ほど作っていただけることになり、展示会場の方で配布することになりました。展示機も、当初は私の持っていくMacBookだけしか想定していませんでしたが、PC/AT互換機を1台持ってきていただけることになりました。感謝。

また、展示マシンやDVDなどいろいろと荷物を持っていくので、ついでに書籍も展示しておこうと、こじまさんの書かれた書籍や、過去に技術評論社から出たPlamo Linux 関連書籍、そして雑誌『Software Design』のPlamo Linux特集号なども持っていくことにしました。

OSC当日の様子

さてOSC当日です。開催は10月24日(土⁠⁠、10月25日(日)の2日間でした。

初日は9時からから出展者準備、展示時間が11時からから17時30分まで、Plamo Linuxのセミナーが11時から11時45分、2日目は9時から出展者準備、展示時間が10時から16時までというスケジュールでした。

写真1 初日の朝の様子。まだひっそり
写真1 初日の朝の様子。まだひっそり

初日は準備のためにどのくらいの時間に行けばいいものなのか不明だったので、9時頃に会場に着くように行ったのですが、ほとんどの展示ブースにはまだ人はいませんでした。他の皆さんは10時30分くらいから増え始めた感じでしょうか。大掛かりな展示でなければ30分もあれば準備できますから。そこから学習して、2日目は展示会場オープンの30分前に着くように行きました。

セミナー

OSCのセミナーは時間になれば勝手に始めるという形です。セミナー会場では無線LANが使えないので、各自LANケーブルを持参してくださいと事務局から事前に連絡がありましたので、LANケーブルを持っていきました。けど、この持って行ったLANケーブルの長さが見事に足りない。ちょっと焦ったのですが、展示会場の無線LANを何とか捕まえられたので事なきを得ました。

あとで事務局の方に、持っていくLANケーブルの長さも連絡して欲しかったと言ったら、当日、事務局の方で貸し出ししていたとのこと。もっと早く言って欲しかった…。

セミナー出席者は20名程度でした。思っていたより多かったですね。セミナー開始時に少し質問してみましたが、出席者のうちPlamo Linuxを知っていた方は3分の1くらいでしょうか。LXCを知っていた方は数名程度でした。

セミナー内容は前述のとおりPlamo Linuxの紹介と、どのようにメンテナンス・開発作業を行っているか、また、パッケージ作成方法を説明しました。資料はspeakerdeckの方に置いてありますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

30分ほど説明を行って、残りの15分でデモを行いました。Plamo Linuxの大まかな動作と、パッケージ作成をどのように行うのかを簡単に説明しました。lxc-plamoのデモもやろうと思っていましたが、時間切れになってしまいました。

展示会場

展示会場の方は思ったよりも展示用の机が狭く、マシン2台を置くのが精一杯。仕方がないので、椅子を持って来て机の前に置き、箱に入れたインストールDVDとP-PlamoのDVDは、その椅子の上に置くことにしました。持っていった書籍も椅子の上に置くことに。

写真2 Plamo Linux 関係展示の全体
写真2 Plamo Linux 関係展示の全体
写真3 展示マシンの様子
写真3 展示マシンの様子

OSC 全体の来場者は主催者の方からの発表で初日950人、2日目600人で、トータル1500人以上とのことでした。

1日目の展示会場は、人がひっきりなしに来る状況でした。エアコンは入っていたようですが、部屋の温度もかなり高く汗ばむほどでした。2日目は人が割と閑散とした状態。部屋の温度は快適そのもの。

セミナー会場を覗いてみたところ、セミナーに出られている方は結構いたようでした。セミナー間の休憩時間などにはぼちぼちと人が来ていましたが、それ以外は開店休業状態って感じでした。

また、過去にPlamo Linuxにメンテナとして関わっていた方も数名いらっしゃいました。

DVD配布状況、来場者の意見、感想など

配布 DVD、USBメモリは、詳細な枚数は数えていませんが、下記の表に記したくらいの枚数・個数を配布しました。

パッケージ初日(10月24日)2日目(10月25日)
6.0 32bit install DVD5(予定数終了)3
6.0 64bit install DVD30(予定数終了)13
P-Plamo 32bit DVD32(予定数終了)
P-Plamo 64bit DVD1510(予定数終了)
P-Plamo USB両日で7個

あらかじめ用意していたインストールDVDが初日でなくなってしまったため、急遽、2日目用に同数程度作成して持って行ったのですが、半分くらい余ってしまいました。P-Plamo DVDの方は作成したものが2日間でちょうど全部なくなった形でした。USBメモりの方は単価が高いのを気にしてか、貰った方が恐縮してしまうみたいで、予想外に余ってしまいました。

展示会場の方にいらっしゃった方々とお話したところ、若い方はPlamo Linux自体を知らない方が多かった印象でした。また、Slackwre Linuxベースと聞いたとたん、⁠難しい奴ですよね」って言う方などいましたが、インストールDVDを配っていたので、⁠試しに使ってみます」と言ってくださる方が多かったです。

筆者と同世代くらいの方々は「PC98サポートしてた奴ですよね。懐かしいです」⁠今は別のディストリビューションを使っていますけど、昔使ってました」と懐かしがる方や、以前使っていましたという方、⁠1.0の頃から今も使ってます」⁠会社で異端児扱いされてるけれど、自分のデスクトップは Plamo Linux を使ってます」⁠使い続けているけど、自分で作成したパッケージだらけで原型とどめてません」⁠Plamo Linuxはハードの細かいことを考えながらチューニングするのには非常にわかりやすい」と、使い続けて手放せないと言っていただける方などが居ました。

あとは「ディストロウォッチみてたらPlamo Linuxの新しいバージョンが出ているという記事があって、それでPlamo LinuxのWebを見たらOSCでメディア配布していると書いてあったので来ました」という方、また、⁠Plamo Linux 6.0ベースの書籍は出さないんですか?」とか「contribってよくわからないのでいまだに昔の書籍をひっぱり出してみています」など、書籍などに関して言及する方もいらっしゃいました。ネットが発達しても、書籍に対するニーズも多少はあるようですね。

展示マシンに関して、Plamo Linuxのデスクトップ環境の中ではAfterStepはある程度作りこまれていてPlamo Linux独自のものになっていますが、その他のデスクトップ環境は各環境のデフォルトをそのまま使用しています。そのため、Plamo Linuxの稼動状態として、AfterStep以外のデスクトップ環境を立ち上げていてもPlamo Linuxと認識してもらえないということがわかりました。今後の課題として、AfterStep以外のデスクトップ環境も少しいじってPlamo Linux独自のものにしておいたほうがよさそうかなと感じました。

また、他のディストリビューションでは古めのLibrettoなどにインストールして稼動・展示しているものもありました。こういった昔懐かしい、みんなが知っているハードに入れたものを展示しておくと目を引くのか、人が集まっていました。ちょっと次回以降の参考にしようかなと思いました。

今後について

今回、初めてPlamo LinuxとしてOSCに出展してみましたが、Plamo Linuxを知らないという若い方もけっこう多かったので、幅広く知ってもらうためにこういった展示会等に定期的に出展する必要があるかなと感じました。あとはいろいろと資料が足りなかった所もありましたので、必要な資料などを時間のある時に少しずつでも作成して貯めていくことや、目を引くための展示方法などのノウハウを貯めていくことも必要かなと思います。

また、使っている方々の意見を聞いて、少しでも使いやすいようフィードバックができれば良いなとも思っています。

今後もできるだけ都合をつけて、Plamo LinuxとしてOSC等の展示会に出展していければと考えています。その際、セミナーでこういう内容について話しをて欲しいとか、こういった展示を行って欲しいなど要望がありましたらPlamo ML等に投げていただければ今後の参考にさせていただきます。

最後になりましたが、OSCを主催されている株式会社びぎねっと 様、当日のOSC運営をしていただいた関係者の方々、Plamo Linuxメンテナの皆さま、また当日、セミナー開場や展示会場に来ていただいた皆さま、どうもありがとうございました。また今後ともよろしくお願いします。

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