モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第39回 結果を出す人には、強い「ハート」が描ける

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こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこです。

さて今回も,⁠ハート」が描けるといいなあ,という話です。

「ハート」が描けないと,人は動かない

その日は,ある企業で,管理職の方を集めた研修でした。テーマは部下育成。研修会場に40人ほど集まった管理職の皆さんは,20年目超のベテランぞろい。講師の方は何度も「傾聴」の重要性について語っていました。

  • 「会社での朝の挨拶を,パソコンを見たまましていませんか」
  • 「腕組みしながら部下の話を聴いてませんか。頭の中は,次にじぶんが話すことばかりを考えていませんか」
  • 「相手の目を見て,きちんとその人の話を聴いていますか」
  • 「多くの人は本当には聴いていません」
  • 「"聴く"とはとても難しいスキルです」

最初は,どこか重たい空気の中,始まった研修でした。じぶんよりずっと若い講師の方の話を,受講者の皆さんはじっと厳しい表情で聴いていました。が,意外にも,素直に「早速やってみます」という実行宣言が聴こえてきました。

  • 「確かにわざわざ顔を上げて挨拶はしていない」
  • 「今日会社に戻ったら早速,部下の話に"傾聴"します」
  • 「腕を組むのをやめて,頷きながら話を聴きたいと思います」
  • 「相手の目を見て,前傾姿勢で聴いてみます」

しかし,わたしが描いていた絵は,管理職の皆さんが必死にじぶんの口を押さえて,しゃべりたくて仕方ない気持ちをこらえている姿でした。今にも部下の発言をさえぎってしゃべり出しそうです。指摘したい,問いつめたい。 わたしはそんな管理職の皆さんの姿に,思わずバッテンマスクの絵を追加してしまいました。⁠しゃべっちゃダメー!」という気持ちからです。

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上の絵を見ながら,わたしは思っていました。

  • (口では言うけど難しそう)⁠本当にできるのかなあ)

絵の中のその人たちが本当にそれを実行するのか,それを継続できるのか,とても疑わしいのです。グラフィックフィードバックのとき,思わずその場に居た皆さんに聴いてしまいました。

  • 「1回やって終わり,にはなりませんか?」
  • 「職場に戻って続けられますか?」
  • 「いや,やるよ,やるやる」という笑い声もありましたが
  • 「やるつもりだけど…」
  • 「…………」

その場には,ちょっとした沈黙が流れました。

「ハート」が描けると,人は"心から"動く

そんな中,わたしの絵筆の疑念を一気に解いてくれたのは,その後すぐに続いた事業部長の話でした。

「今日の研修のテーマ,部下育成において,傾聴はぜひ職場で継続してほしい。じぶんが若い頃は,傾聴できる上司なんて一人もいなかった(笑)⁠ただそれでも,"いつも上司がじぶんを見守ってくれていた"という思いだけは残っている。部下の話を遮ってつい「それは違うだろう」とか言いたくなるだろうが,目の前の部下の成長を見守ってやる,そんな[親心]を忘れずにいてほしい」

  • (親心!!!)

「親心」と聴いて,とっさに絵筆が走りました。そのとき描けたのが「ハート」でした。

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そして,この「ハート」が描けた途端,これなら傾聴できる! と確信が持てたのです。この「親心」というハートを持って部下に向き合えば,管理職のみなさんも傾聴できる気がしてきました。実際,事業部長の話の後,皆さんが「親心」の絵の前に集まってきました。

  • 「ハートの絵がいいよな」
  • 「そうそう,これこれ」
  • 「これが大事だよ」
  • 「おれも昔,仕事で大ミスしたとき,上司が夜中までつきあってくれて……」

ベテランの皆さんも,若かりし頃,じぶんが上司からもらった「親心」のエピソードに花が咲きました。会議で「ハート」の絵が描けると,参加者の皆さんの表情が必ずといっていいぐらいパッと明るくなります。⁠ハート」にはその会社の人たちが共通して持っている「ハート」が描けてくるのかもしれません。忘れかけていた大事なものを思い出した。そんな大きな気づきを皆さんの様子から感じます。

いくら「傾聴しましょう」と奨励だけしても,この親心という「ハート」を持っていない限り,長続きしない。⁠how to」だけ真似ても弱く,そこに「ハート」が伴って,初めてひとは"心から"実行できる。⁠やり方よりもあり方」⁠how toよりもto be」という言葉をよく聴きますが,まさに「傾聴」「親心」もその関係だと思います。

絵筆を持って議論を聴いているわたしにとって,会議で「ハートが描けるか/描けないか」は,その後の実行・実現の本気度を測る1つのバローメーターになっています。

話はそれますが,わたしは「ハート」の存在を知ってから,本の読み方が変わりました。特に書店で山積みになっているノウハウ本を読むときには,⁠やり方(how to)⁠「ハート」を読み分ける癖がつきました。以前は「これならできる/これは無理」⁠この方法が続けられたら苦労しないよ」と一喜一憂していたのですが,それよりもそのノウハウを実行できるその人の「ハート」に尊敬と興味が湧いてきます。ときに凄腕セールスマンの本を読んで「わたしはそこまでの気持ちにはなれないなあ」と静かに本を閉じてしまうことも増えましたが,そもそもじぶんに「ハート」が無いのに「このノウハウは使える/使えない」という品定めをする,といったことはしなくなりました。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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