無関心な現場で始める業務改善

第23回(最終回) 主役はあなた自身

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改善に境界とゴールはない

「改善にゴールはない」⁠これはその通りだと思います。ただ,時間をかけてダラダラやることではありません。

もう1つ,改善には境界もありません。庭掃除みたいなものです。自分の家の庭を掃除していたら,いつの間にか,隣の庭掃除までやっちゃったでもよいのです。ただ,隣の敷地に勝手に入ると怒られるので一言,声をかけると同時に,共有の場所などがあれば「一緒にきれいにしましょうよ」と巻き込んでしまえばいいのです。

仕事も同じです。自部門だけで仕事が完結することはほとんどないでしょう。少なからず,前後工程との協調・協業作業です。また,業務改善で手に負えない超上流工程の経営領域にぶち当たった時でも,そこで業務改善を止めるのではなく,前に進みます。これが「境界がない」という意味です。

業務改善を長く行っているベテラン勢は,⁠どんどん良かれと思ってやっていたら,あっちこっちに仲間ができたのは大事な資産」⁠業務全体がわかると,会社全体を常に考えるようになった」など,ごく普通に話をしています。素晴らしいことだと思います。

プロセスとは何か?

業務プロセスに限らず,プロセスコンサルティングに携わっている我々が考えるプロセスを下記に示します。

『プロセスとは関係性である』

プロセスは一過的なものではなく,"場"をつうじて継続的かつ恒久的な関係性を作るものです。人間関係,特に信頼関係という絆は,ともに汗をかき,苦労をした仲間だからこそ築かれるものです。一度,信頼関係が築かれたら,よほど薄っぺらなものでない限り,⁠彼・彼女のために一肌脱いでやろう」と思うことでしょう。コラムでも登場しましたが,「一緒になって困ること」に集約されます。

『プロセスとは構造化である』

人には人それぞれの様々な考え方や価値観があります。同様に思考様式も,ゴールは同じでもたどる道筋,アプローチが異なることもあります。答が1つでも,解決方法がいく通りも考えられる場合と似ています。

プロセス的な切り口で物事を見ることができると,一見,複雑に見えることもシンプルに構造化できるようになります。構造化できると,目の前の問題に対して,原因を切り分けることができます。問題解決に際しては,自分の頭の中の引き出しから何番目の解決策を当てはめればよいかを瞬時に導き出すことができます。

『プロセスとは向き合い方である』

プロセスを共有することで,先の「関係性」が構築できるほか,「人と人の向き合い方」⁠問題に対する向き合い方」が変わります。向き合い方が変わるということは,相手を認めるということと,事実をきちんと認識することにほかなりません。

これまで気にもかけなかったこと,誰かがやればいいや!と思っていたことが放置できなくなり,当事者として対峙するようになります。

『プロセスとは森羅万象と言いたい』

問題があるのなら,問題が起きる理由があります。原因というものです。原因を掘り下げた真の原因,なぜを5回繰り返すトヨタではこれを「真因」と呼びます。

よほどの神がかり的な問題でない限り,物事には必ず理由があります。筆者自身も元々は理系で技術者なので,理由や理屈の説明できないものは基本的に大嫌いです。

しかし,ソフトの重要さでお伝えしてきた通り,原因がわかっていても"言えない"組織風土の問題もあるわけです。この場合は,原因は白黒はっきりせずに,話し手は曖昧な言い方をするものです。聞き手は,話し手の裏事情に思いっきり受信感度の高いアンテナを立てなければなりません。⁠言えない理由は何か」を理解し,この重石をどうやって取り除くかも避けて通れない関門です。

宇宙に存在する一切のもの,事物・事象を森羅万象と言いますが,そこまで大げさなものでなくても,物事が起こるプロセスには必ず理由がある,伝わらない・言えないことにもまた理由がある。このように考え,あえてプロセスとは森羅万象と言いたいと思います。

あとがき

業務改善は現場の問題ですが,決して現場だけの問題だけではありません。経営も含めた会社の問題です。やる気のない現場,無関心な現場でも,このままではいけないと心の中で問題意識を燃やし続けている人はいます。適度な危機感と向上心がなくなったら現場は終わりです。

「もっと良くなるかもしれない」⁠今より楽になる」動機もいろいろで構いません。⁠早く帰宅したい」でもいいのです。身近な素朴な疑問も見逃すことなく,隣の仲間や上司に声をかけてみましょう。

業務改善を行うに際して,特別な知識やノウハウなど必要ありません。ほんの少しの「やってみよう」というあなたの勇気だけです。意外に無関心だと思っていた職場も,誰かが声を挙げてくれることを待っていることもあります。

動くか動かないかはあなた次第です。

業務改善を進めていくと,業務の知識はもちろん,やがては経営,組織,ITなどの幅広い知見が求められる局面に遭遇することもあるでしょう。本質を粘り強く掘り下げるしつこさ,問題発見・解決のスキル,コミュニケーション・対話の能力,場をつくるファシリテートも必要です。その時は,本連載を少し思い出していただき,まずは自分たちで進めてみてください。それでもどうしてもうまくいかない場合や,より効率を重視するのであれば,その時は我々のような専門家に声をかけてくれればよいのです。

謝辞等

およそ11ヵ月にわたり,つたない文章を校正していただいた技術評論社の野口様に感謝です。

『上流モデリングによる業務改善手法入門』や本連載読者の方からの感想,問い合わせや相談も頂いています。お気軽に当社までお問い合せください。

合わせて,6月8日に無料セミナーも開催いたしますので,ご興味のある方は参加ください。

以上,長きにわたってありがとうございました。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/