元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第10回 体感!? レポートの裏側

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ライブレポートなんていう仕事

前回『叫訓9』ではインタビュー取材について書いたので,今回はライブレポートなんていう仕事について書きたいと思う。

えっへん。

ふふふ。

すいませんね。音楽ライター講座みたいになってしまって。もっと別の業界で働きたい(働いている)方々も多いとは思うんですが……。しみません。

でも,そこは読解力。偏った話から自分の仕事のやり方に導いてもらえれば助かります。

さて,オイラはオリコン時代も,フリーになってからもライブレポートという仕事をやっていた。ライブを観てゲンコーを書く。音楽雑誌には必ずと言っていいくらいにライブレポートのページがある。

1年くらい,某週刊誌でライブレポートの連載をしていたこともある。それは音楽雑誌ではなく,いわゆる成人誌。日本でいちばん売れている童貞誌であった。

まあ,アイドルとかのグラビアがメインの雑誌。そこにて無理やりのライブレポ。

アポなしで会場に突撃して好き勝手に書きまくるというもの。なので,もちろん,ライブ写真はなし。オイラが会場前でふざけたポーズで写真を撮られるというアナーキーな連載だった。

なんで,1年で終わっちゃったけど。ま,連載なんていつか終わるもんだ。

フリー稼業で連載が終わるのは死活問題である。しかも,終焉はいきなりやってくる。⁠すいません,言いにくいんですが紙面リニューアルで連載が終わることになってしまったんです。すいません……」

リニューアルね? 便利な言葉だ。

連載が終わることが決まり,実際に終わったときには本当に困った。だって,来月の家賃の支払いメドが立たないんだもの。目の前が真っ白になった。貯金もない,助けてくれるカミさんもない。ないない尽くし。ナッシング。

でも,まー,どうにかなったなあ……じ~~~ん。って,今回はそういう話じゃない。ライブレポートの書き方だ。

なぜ,ライブレポートのページが存在するのか?

そもそも,個人的にはライブなんて実際に会場に行って観ないとわからないもんだと思っている。

体感? 会場の熱気だったり,ステージから伝わるエネルギーだったり,そうういったことは文章では伝えきることは不可能だ。

でも,雑誌にはそういうページが存在する。う~~~ん。編集長をやっていた頃からの難問。それって,おもしろいのかな?と。とてもじゃないが,ライブレポートのページのおもしろさが理解できない。

ま,ぶっちゃけ,なぜ音楽雑誌にライブレポートのページがあるかというと,インタビュー取材に応じてもらえないアーティストを紙面に載せるため,というのが大きい。インタビューはNGだけれどライブレポートならオッケーですよ,と。

大物アーティストであればあるほど,インタビュー取材の時間を出してくれない。ま,そんなもんだ。

ライブレポート,写真はもらい(レコード会社,事務所が用意したもの)で,どの雑誌もほぼ一緒。で,原稿の内容もどんなライブだったかを正確に伝えるだけのもの。そこにライターの感情が入ることは基本,許されない。

ちなみに,オイラは某スーパー・トップ女性シンガーに直接ゲンコーNGをくらったことがある。下品な単語を使いまくったせい。

歌姫と呼ばれる彼女が直接に原稿チェックをして「こんな原稿なら雑誌に載らないほうがマシ!」とキレたらしい。ふふふ。まったく,大人気ないんだから。って,オイラか? ふふふ。

しかし,インタビューではなくライブレポートでNGってよっぽどのことだ……。まあ,ムチャクチャ書いちゃったからしょうがない。自業自得だ。わかってはいた。

ホメてホメてホメまくるっ

ま,無難にこなせばいいだけの話。要は本当のことなんて書かなければいい。だって,ライブの感想なんて人それぞれだから。

自分の体調によるところも大きいしね。高熱で観たライブでテンションが上がるなんてことはないからね。早く帰りたいだけだもの。

失恋したばかりで観たライブだって,楽しめるはずがない。でも,そこはお仕事。キッチリと仕上げないといけない。

もっと最悪なのは,ライブ自体がどうにもこうにも……なんていうパターン。ひっどいライブを観るケースもある。でも,それをそのまま書くのは商業誌としてはご法度である。やってはいけない。つまらなかった,とは書けない。

結局,本連載で何度も言っているのだが嘘つきにならないといけないのである。いや,嘘つきというか,良いところを探す作業?

ライブレポートの仕事に行ったのだけれど,あまりにもつまらなく,苦痛に耐え切れずトイレに2時間もこもっていたこともある。

でも,当日のセットリスト(曲順表)をもらえればどうにか書くことはできる。

あと,つまらなかったわけではないが下痢でほとんどライブを観れなかったことも。そんなハプニングもあるわけだ。

そんなときはどうするか? とにかく,ホメるしかない。って,ひどい話になってきたな。でも,まー,そんなもんだ。

円滑に進めましょう

だけど,それも申し訳ないなとも思う。だから,オイラはそういった仕事をすることをヤメた。オイラには向かないな,と。

ま,どんなライブにも数分,数秒くらいは良いところはあるもんだ。そこ広げるしかない。それは演奏だったりMCだったりする。

良いところを探す。これって,普段の生活においても大事なことだ。弁護士みたいな仕事? わからないけど。

まあ,どんな人間にだって良いところはあるもんだ。そこを見つけ出し,膨らます。

そんなに難しいことではない。

平気で嘘をつける人間こそ賢いのかもしれない。⁠いや,今日のライブ良かったですよ」と思っていないのにも言える才能。それって,本当に大事だなあ,と思う。

優しさ?(笑)⁠いや,賢さかな。

本当のことなんて言えない。

つーか,言う必要はない。だって,サービス業なんだもの。その辺のことを勘違いすると,とんでもないことになる。

自分のエゴを出すことはないのだ。自分の音楽論を紙面でぶつけるのはナンセンスだ。そういった時代は終わった。

これはインタビュー仕事でも一緒。良いところを探す。これに尽きる。だって,⁠前回の作品のほうが良かったですよ」って言ったって話は広がらないからね。

美しく,かつスマートな嘘をつくこと。これが大事。だって,ホメられて嬉しくない人なんていないからね。

逆に言えば,けなされて嬉しい人などいない。空気を読む? そんな感じ。

で,今回の結論。言いたかったことは……

叫訓10
嘘(気づかい?)も方便です

著者プロフィール

イノマー

昭和41年東京生まれ。駒澤大学卒業後,(株)オリコンに入社。10年間勤務し編集長2回,副編集長を3回務める。退職後,フリーの編集・ライターとなる。同時にバンド活動もスタート。メジャーデビューも経験し,現在はインディーズでの活動へ。過去に10枚のアルバムと2枚のシングルをリリースしている。

http://www.onamashi.com/

Twitter:@inomar_onamashi

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