元オリコン編集長☆イノマーの『叫訓』

第29回 基本は大切,でも縛られてはダメ──マニュアルとのつきあい方

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規則:決まりを箇条書きにまとめたもの

先日,某チェーン展開しているお弁当屋さんへと入った。仕事の合間。時間も無い。買って,食べるのに20分もかからないと計算。公園で食べよう,と。

オーダーしてから待っていると時間がヤバいと思い,店頭に出来上がって陳列されていた弁当をレジに持っていくことに。

すると,⁠すいません,期限が切れているので,このお弁当は販売できません」

なぬーっ!?

見れば確かに賞味期限を3分ほど過ぎていた。⁠いや,でも,そこにあったお弁当を持ってきたんですけど?」

「すいません,お売りできないんです」と,お弁当屋さんの女性販売員。困った顔をしている。オイラが悪いことをしている気分。

「いや,いいッスよ。お腹壊してもクレームなんて入れないですから」⁠オイラは言った。⁠賞費期限じゃなくて,賞味期限ですよね? 大丈夫ですから」

「いや,でも,上の人間に確認してからではないと」と彼女。⁠規則なんで」

規則って……。⁠そこにあったんですけど」

「申し訳ありません」

ふうむ。まあ,規則ならしょうがない。でも,3分くらい……。⁠あの,どうしてもムリなんですか? 全然,いいんですよ。その,味がどうとか言いませんから」

「すいません,お売りできないんです」

だったら,置いとくなよ!なんて心の中で思いながらも「そ・う・で・す・か」とオイラ。時間をムダに使った。何しろクレイマーと思われたくなかった。

彼女は何も悪くない。いや,素晴らしく従順でマジメな販売員だろう。だから,オイラも腹は減っていたけれど,腹を立てたわけではない。しょうがないな,と。

でも,もうこの店には来たくない。来るもんか!とすら思った。顔覚えられちゃって,メンドーだなとも思っちゃったし。

「本当に申し訳ありません」

はい,はい,はい。そんなに謝らないでください。あなたが悪いわけじゃない。3分を確認できなかったオイラが悪いんです。

即座に店を出て,近くのコンビニでおにぎりを買った。ま,口にすれば何を食べても一緒だ。こだわる必要もない。

ルールを破ってマナーを守る

彼女は何度も⁠規則⁠という言葉を使った。いわゆる⁠マニュアル⁠というものが存在するんだろう。企業にとってマニュアルというものは確かに必要だ。

雇う側にしてはもちろん。そして,雇われている側にとってはどう動いたらいいのか,無いと困るルールブックだったりする。だから,マニュアルを否定するわけではない。

でも,そればかりに気を取られるのはデンジャラス。臨機応変? これ,大事なことだ。

3分くらい賞味期限が切れたって「う~~ん,わかりました。でも,何があってもお客さま,こちらは責任は持ちませんよ。今回だけですから。この件はショナイでお願いしま~す。ふふふっ」でオッケー。

ミクロなアクションかもしれないけれど,これで日本の経済は動く。そして,その積み重ねでビルも建つだろう。ビルが建てば,そこで働く人が必要になる。人が動けば経済は潤う。

そんなもんだ。大げさか?

つーか,何で今回はこんな話をしてるんだ?(笑)⁠いやいや,でも,290円の弁当ひとつで世界は変わる。そんなもんだ。

マニュアルはマニュアル。マニュアルには応用編は載っていない。

新しく携帯電話を購入したときに,ツッコミを入れたくなるくらいの分厚いマニュアルがついてくる。よ,読めるか~~~!と,思いつつもパラパラと……。

退屈。

基本的なことだけは知っておきたいと読むものの,まったく頭に入って来ない。結局,自分で新しい携帯をいじって「あ~,こうすればこうなるのね」と。マニュアルはその確認作業のためにある。

携帯電話にはきっと裏技的なものがあるんだろう(推測)⁠でも,そんなのはマニュアルには載っていない。自分で探すしかない。

でも,とりあえず電源の入れ方をマニュアルで知らなければいけない。何もはじまらない。だから,読む。それだけの話だ。

マニュアルは掛け捨ての保険

1日に平均3~5本くらいインタビュー取材をしていた時期がある。そうなると,事前のリサーチが怠ってしまうこともあった。

レコード会社からの資料と音源をチェックしてから,何を聞こうかとインタビュー・シートを作成して臨めればベストなのだけれども,それが難しいことも。

しみません……。反省。

そんなときのため,オイラはインタビュー・マニュアルを作っていた。

  • 「結成のいきさつは?」
  • 「バンド名の由来は?」
  • 「それぞれの音楽的バックボーンは?」
  • 「最新アルバムのコンセプトは?」
  • 「レコーディングでのエピソード」
  • 「最近,ハマっていることは?」
  • 「今後,バンドの未来予想図について」

などなど……

はあ,つまらない。我ながら最低。

50項目くらいをインタビューの際は常に携帯していた。そう,お守りね。困ったときにはこれを使えばいい,と。それプラス,一問一答を100個。⁠好きな色は?」⁠今,いちばんやりたいことは?」みたいなどうでもいい100問。

アーティストによってはインタビューでまったく喋らない人もいる。マニュアルは命綱。でも,使ったことはない。あ,1回だけあるか!(誰とは言えないけど)⁠

無難なインタビュー取材になってはしまうが,雑誌のページが真っ白になってしまうよりはマシだ。

そう,オイラが今回の叫訓で言いたいことはマニュアルなんて⁠保険⁠みたいなものだということ。しかも,掛け捨てのね。

安心を得るためだけのもの。

マニュアルを舐めてかかれ!

基礎や基本(マニュアル)は大切。でも,そのレベルではおもしろい仕事にならない。基礎や基本をクリアした上でそれをブッ壊す。それが本当の仕事だ。

その辺を勘違いして,ベースも作れていないのにムチャをする族(やから)がいたりする。そういう人間と仕事をすると,本当に疲れる。暴走族,いや,妄想族?

「大丈夫ッスよ~,任せてくださいよ~~」⁠って大やけどしたことが何度も。恐い,恐い。

ギターでいうと,初心者がいきなりアドリブを弾きたがるようなもんだ。ま,たまにそういったアクションがハンパないギターソロを発明したりするけど。それは奇跡でしかない。

マニュアルを脳ミソに入れた上で,自分なりのオリジナルな⁠やり方⁠で動く。基礎,基本なくして新しいことはできない。

マニュアルに縛られて,現場での判断ができなくなることがいちばん危険だ。まずは,マニュアルを自分の中に叩き込んで,くだらねーなくらいに思うことがイチバン。しょっぱいこと言いやがってくらいに。

しつこいかもしれないけれど……

あのとき,あのお弁当屋さんの販売員さんは,オイラに3分賞味期限を切れたお弁当を売るべきだったと思う。

マニュアル違反になるかもしれないけれども,彼女はそうすべきだった。それは彼女云々の話ではない。日本全体の話だ。

マニュアルで縛って,縛られて……これでは日本経済発展にストップがかかる。

彼女の取った行動は正しかったかもしれないが,大きな目で見れば間違っていた。

いや,あの,その,お弁当が食べれなかったから言ってるわけではないッスよ(笑)⁠グローバルな視点から。って,説得力ないな。はい,お腹空いてましたー⁠ー。

ということで今回の叫訓↓

叫訓29
マニュアルはお守り(保険)
熟知した上でシカトするべし

著者プロフィール

イノマー

昭和41年東京生まれ。駒澤大学卒業後,(株)オリコンに入社。10年間勤務し編集長2回,副編集長を3回務める。退職後,フリーの編集・ライターとなる。同時にバンド活動もスタート。メジャーデビューも経験し,現在はインディーズでの活動へ。過去に10枚のアルバムと2枚のシングルをリリースしている。

http://www.onamashi.com/

Twitter:@inomar_onamashi

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