ニュー選挙パラダイス

第3回汚れなき悪戯~無意識の悪意が誹謗中傷を生む~

ようやく市民権を得てきた「ネット上の誹謗中傷・風評被害」という言葉

参院選の選挙期間が残り一週間を切り、ニュースは選挙の話題で持ち切りですが、今回のネット選挙解禁によって知名度の上がった言葉があります。それが「ネット上の誹謗中傷・風評被害」という言葉です。ネット選挙とセットで語られることも多かったこのキーワードについて、皆さんも今月になって良く目にし、耳にしているのではないでしょうか。

「風評被害」というキーワード自体が注目を集めたのは、おそらく2011年の3.11のときだったと思います。日本中が原発問題に揺れ、放射能・放射線関係の話題が至るところで語られていた時期です。震災当日から数日にかけて、とくにTwitterを中心にデマが飛び交っていたのと同じ時期に、根拠のない“無意識な”情報も拡散され、それが風評被害となって被災地やそれ以外の地域に対して影響を及ぼしました。

その当時のネット上の状況を振り返ってみると、もちろん中には明確な悪意を持って、または面白がって事実とはまったく異なる情報や憶測を流していくユーザもいましたが、その情報をネット上に多く拡散させてしまったのは、その情報を信じたり、またはよく確かめていないにも関わらず安易にリツイートやシェアをしてしまった一般ユーザでした。

そのユーザには悪意なんてまったくなかったのですが、結果だけ見てしまえば、デマの拡散、風評被害の拡大の一部を担ってしまったとも言えるのです。

無意識だからこそ怖い、ネット上の情報拡散力

私どもの会社ではこれまで多くのネットでの炎上事例を調査してきましたが、その多くが「無意識」が生んでしまったものでした。TwitterやFacebook、mixiといったソーシャルネット・ソーシャルメディアがあまりにも身近になり過ぎた結果、友人へのメールやおしゃべりと同じような感覚で情報を発信してしまい、気付いたときには取り返しのつかないことになる、というケースが後を絶ちません。おそらく発端となったユーザにとっては「まさか自分が!?」と思ったに違いないでしょう。それでも毎日のように、ネット上では何かしらの事件が起きています。

今回のネット選挙のコラムの中で、こうした「無意識が生む風評被害」は大きなテーマの1つだと個人的には感じています。残り一週間を切った今だからこそ、改めてこのテーマに触れる必要があると考え、今回はこれまでのネット炎上事例(=風評被害や誹謗中傷)について、取り上げてみたいと思います。

最新事例:某コンビニチェーンの場合

これは正に現在進行形(2013年7月16日現在)で推移している最新の炎上事例です。ご存知の方も多いでしょう、某コンビニチェーンの事件です。

事の発端自体は1ヵ月ほど前でした。四国のとあるコンビニ店にて、従業員がふざけてある行動に出ます。その行動とは、コンビニに設置されているアイス販売用のケースの中に体ごと入り、商品の上に寝転んでいたのです。「涼しそう!」というレベルの問題ではもちろんなく、売り物であるアイスの上にそのまま寝転がってしまうこの行為は決して許されるものではありません。でも、もしその行為だけであれば、おそらく誰の目にも触れずに済んでいたかもしれません。しかしその光景を写真に撮ったユーザ(悪ふざけをした従業員の友人)が、その写真をあろうことかFaceboookに投稿してしまったのです。

結果としてどうなったか。その実際の行為から1ヵ月経ったころ、写真が公になってしまいます。発端は2ちゃんねるでしたが、その行為に対するバッシングは瞬く間にネット上に広がり、多くのネットユーザが知ることになったほか、その事実をネットメディアが取り上げることでさらに多くのユーザに広がり、その事件発覚から数日後には、検索エンジンでそのコンビニチェーン名を検索すると、今回の炎上事件を取り上げたネットニュースやまとめサイトが検索上位に表示され、何も知らないユーザにも今回の顛末が知れ渡る状況になってしまいました。その間、僅か数日。数十人レベルの閲覧者だと思って投稿したFacebookの写真が、あっという間に何百万人以上のユーザに情報が拡散してしまいました。

拡散元となってしまった投稿者である従業員の知人は、そのコンビニに対して悪意を持って情報を拡散させようだとか、当事者となってしまい後日解雇されたその従業員に対しても恐らく貶めようといった悪意はおそらくなかったものと推測されます。無意識に「面白いだろう」という意識で行った行為が、現実世界に多くの影響を与えることとなったのです。

この事件から学ばなければならないこと

この従業員の行為自体は肯定できるものではありません。しかし、こうしたニュースを追っているユーザの中には、当事者の人々が「何でこんな行為をするんだろう」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。「自分は絶対にしない」とも思っているかもしれません。それでも、油断をすれば誰もがこうした事態に陥ってしまう可能性はあるのです。そのぐらい、自分自身の情報発信力が上がっているという自覚と、合わせて自分自身の個人情報がネット上に散在していて、意図を持ったユーザによって瞬く間に丸裸にされてしまうリスクがあるということを知る必要があるでしょう。

誰も見ていないだろう、知り合いしか見ていないであろう投稿も、どこの誰が見ているかはわからず、きちんと情報発信先の設定をしていないと、独り言のつもりが実は全世界に対して発言しているのと同じ状況になっていることも起こり得ます。ネット選挙の解禁でネット自体の情報に過敏になりつつある今だからこそ、自分自身のプライバシー設定を再度見直す機会かもしれません。

今回の選挙期間で気をつけなければいけないこと

今回のネット選挙では、マスコミを始め多くの関係者がネット上での情報に目を光らせているといっても過言ではありません。これまでであればまったく問題に上がらなかった(正確には見逃されていた)行為が、後々になって問題となってしまうケースもあるかもしれません。何しろネット選挙解禁後初の選挙です。どういった事例が出てくるのかが、誰も正確にはわからないと言えます。こうした状況だからこそ、改めて自分自身の発言内容には責任を持ち、また他人の発言内容の真偽を疑ってかかる必要があるのではないでしょうか。

4回目となる次回は、参院選開票直前!これまでの内容の振り返りと、選挙当日に気をつけなければならないこと、注目すべき点を改めて解説していきます。

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