“プロボノ”という新しいキャリアパス

第2回 鼎談:私とプロボノ(前編)

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右から,中野さん,吉崎さん,兼松さん

右から,中野さん,吉崎さん,兼松さん

Webサイト構築に関わるディレクション経験やデザインスキルを,仕事だけでなく,NPO支援や復興支援などのボランティア活動に活かす⁠プロボノ”。今回は,この新たなソーシャルなキーワードを実践するWeb業界から3名が結集し,豊富な経験に裏付けられたそれぞれの目から,プロボノをどうとらえ,どのように実践し,どのように仕事に活かしているのかを語っていただきました。Web業界ならではのプロボノへの思い!が溢れる鼎談の様子をこれから2回にわたってお届けします。

プロボノと自分――それぞれの形

中野さん(以下,敬称略)⁠Web制作会社の社長で,サービスグラントの理事でもあります。自分の役割としてはWeb業界にプロボノってこうだよ,と伝えていくことと,僕自身もスキルを活かしていきたいというモチベーションがあって,震災直後に日本ユニバ震災対策チームさんのWebサイトをプロボノで制作しました。やっていることは,とてもアツイのに情報の出し方に改善の余地が満載……,⁠こんなWebサイトにしたらいいと思いますよ」と提案しにいき2週間くらいでCMSを導入したWeb構築を行いました。

吉崎さん(以下,敬称略)⁠私はサービスグラントでプロボノ活動をしています。WebSigのエコピに入ったのがきっかけかな。2年前くらいからサービスグラントのことは聞いていたのですが,同僚がJICAの青年海外協力隊でラオスに行くなど,若い人が頑張っているのに俺たちは頑張らなくてもいいのかな……とサービスグラントに登録したのがプロボノの始まりです。

日本アレルギー友の会というNPOのWebリニューアルのプロジェクトでプロジェクトマネジャー(PM)を担当し,今年はアカウントディレクターとして,医療系の救急医療の質向上協議会というところのサイトリニューアルを担当してつい先日無事に公開を迎えました。

兼松さん(以下,敬称略)⁠greenz.jpというWebマガジンの編集長をやっています兼松です。サービスグラントの初期のころに,枝廣淳子さんのThe Kids' "Create Your Future"というサイトにWebデザイナーとして関わったのが6年前です。当時はまだプロボノという言葉も出ていなかったですが,その頃は大体3ヵ月くらいで終わるWebサイト制作にボランティアとして常に1本は関わるという感じでプロボノ的なことをやっていました。

当時はNPOのWebサイトはとりあえずつくってみたというものがほとんどで,⁠サーバ代ってお金がかかるのですか?」という質問が出ることもありました。さらに予算がなく自分ひとりでかかえこむしかなかったので,⁠もうムリっ」と弱音を吐いたことも。そんなときに「チームで取り組む」というサービスグラントのスキームを知って,⁠あぁ,なんてすばらしい」と応募しました。相談相手でもあり,仲間でもあるつながりが一気に6名も増えて良かったなと思いましたし,チームの仲間もその後どんどん活躍していて,自分のキャリアをみつめる,自分でできることを素直にできると未来がまた見えてくる,開けてくるということを現場で見ていました。

それぞれの思いについて語る3名

それぞれの思いについて語る3名

プロボノと仕事のバランス――社会への思い+合理性

兼松:みんないつプロボノをやっているんですか?

中野:僕は仕事中も含めて,ですね(笑)⁠経営者は裁量労働だから。

吉崎:プロボノと仕事ってあまり分け目がないですね。なるべく土日に寄せるようにはしているけれど結局仕事にも役立ちますから。プロボノも仕事の一部というのかまったく同じスキルだからお互いに役立つことの方が多い。

中野:嵯峨さんの著作プロボノ―新しい社会貢献 新しい働き方を読んだのですが,⁠プロボノをやる人はこういう人だ」というデータで意外だなと思ったのが,プロボノをやる人の多くが実はボランティアをやったことがないんですよね。一見,そういうマインドのある人がやるのだろうと思ってしまうのだけど,ボランティアというよりも,プロボノという切り口に興味あり,という人が結構いるらしい。そういう人が何を求めているのかと思うと,⁠スキルアップにつながるんじゃないか」⁠大きな会社にいて会社の中しか知らないけど他にもネットワークができるんじゃないか」⁠転職という話ではないけれど,今や同じ会社にずっと長くにいることを考える人っていないじゃないですか,だから外の世界も見てみたい,とか,かなり合理的な考えを持っている人が多いんだなということに驚きました。

吉崎:サービスグラントのようなプロジェクト形式のプロボノの場合には,やらなかったら知り合えなかった人と知り合えること,それが本当に面白いですよね。支援する際のNPOも子どもの虐待防止や自然教育などバリエーションは本当にいろいろありますし。

兼松:初めてボランティアするならいいと思うけど,僕はこの問題に興味があるからというイシュー別にマッチングをしないと長続きしないのではないかとずっと思い続けています。

中野:自分の興味のあるイシューだと多分,パフォーマンスが違うし話を聞く真剣度も違ってくると思うけど,まず一回目は体験として色々な分野を経験してみたらいいですよね。それ以降は個人の興味に応じてやっていけばいいと思う。

プロボノの醍醐味――ハードルが低いわりには絶対的なつながりができる

吉崎:そうだな,僕は最初のPMをやって何がすごく記憶に残っているかというと,プロジェクトの最後にたまたまCMSを教えるために僕だけNPOの事務所に戻ったら,そのときに先方の代表の方が握手を求めてきたのですね。握手を求められるというのは一般的な仕事ではほとんどなくて,とくにクライアントはお金を払っているので当然でしょ,という感じですよね。15年くらいやってきて初めてだったのでそれが本当に記憶に残っていて,それだけで嬉しかった。後はなにもいらないっ!という感じ。

中野:報酬の意味を考え直しますよね。

吉崎:ほかにもう何もいらない,っていう感じだったなぁ(遠い目)⁠

兼松:よっぽど今の日本社会に「ありがとう」が足りてないですね(笑)⁠

吉崎:プロジェクトを始めるときに,メンバーにプロボノに期待していることは何ですか?と質問したんですね。自分は「サードプレイスとしてのプロボノ」と書いた。都会で暮らす人には会社でも家でもないサードプレイスが必要だという意見があって,それがパブでも,朝活でもいいのだけど,その1つの選択肢としてプロボノというのが絶対あると思います。なかなか異業種交流会で名刺を配ってもそんなに知り合いにはなれないけど,今まで一緒にやったこともないような業種の人と仕事を一緒にすれば相当知り合いになれる。そういう機会としては割とハードルが低いわりには絶対的なつながりができるというのがいいよ,というところは勧めたいんですよね。

中野:一定期間一緒に仕事をやる,というのは仲良くなるには円滑な方法ですよね。

吉崎:あと,サービスグラントの今の仕組みを実際にやれる制作会社は殆どないと思うんですよ。最初にマーケッターを複数人配して,リサーチをプロジェクトの半分くらいまでずっとやる。そのやり方でやったらこれだけ面白いものができるという経験は,お金がかかりすぎて会社でしようと思っても経験できない。お客さんも上流工程にはなかなかお金を出してもらえないですしね。

だから,大体の想定でこういうユーザじゃないか?と作ってしまいがちですが,ちゃんと20人くらいにリサーチインタビューをかけて進めていくと,⁠仮説と違うんだな」⁠やっぱりこうやってやらないとな」とわかるし,そういう経験は日本の制作会社にいてもそんなにできないと思うんですね,広告代理店の中にいてもどうだろうな,という感じだと思うので,そういう意味でも一回やるときっと身になるよ,という感じがします。

コーディングとかにはまっていってしまうとテクニカルになってしまうけど,結局はWebを作るときには,まず人がいて,向こう側にも人がいて,間にネットがつながっているだけ。相手をきちんと見ないといけないわけなので,そこがみえていないといいものつくれない。それが再認識できる意味でもいいんじゃないかな,と。

中野:ステップアップという意味では,割と小規模な会社でやっている人はちゃんとしたプロジェクト管理を経験したことがない人が多いですよね。マーケッターが入って役割分担をして線を引いてやるというやり方自体が新鮮でそこから学ぶことが多いという話を聞きましたね。フリーランスのデザイナーさんなどは全部自分でやっていく,判断していくという人が多いので,分担してスケジュールもマイルストーンを切ってやっていくという進め方が学びになる,という人は結構多いかもしれません。話は全然変わるけど,サービスグラントのボランティア同士で結婚した人はいないの?ぼくが去年まで運営チームにいたWebSig24/7では結構あるんだけど。

事務局:まだ,祝福電報を事務局からお送りした経験はありませんが,いずれ!そうした嬉しいご報告もあるかもしれませんね。

兼松:結婚はともかく(笑)⁠そもそも本来の目的には置いていなかったけれど,人のつながりが結果的に営業活動につながっていたり,チームメンバーの中からユニットを組んで起業したりとビジネスにも発展しているパターンがあるというのはいいですよね。

後半は “プロボノとこれからの働き方⁠についてへと話題が発展。次回はその様子をお伝えします。

ぜひ,皆さまもプロボノのネットワークに参加してみませんか?

サービスグラントでは,ボランティア登録を随時受付中です。

また,プロジェクトの進め方やスケジュールなどについて共有させていただく説明会を東京エリア(渋谷)⁠関西エリア(阿波座)にて定期的に開催しています。詳しくはこちらから。

著者プロフィール

岡本祥公子(おかもとさよこ)

NPO法人サービスグラント

慶應義塾大学 総合政策学部卒業後,映像,ゲーム,ウェブ,広告などクリエイターに特化した人材会社クリーク・アンド・リバー社にて,企業とクリエイターのマッチング業に従事。サービスグラントのNPO法人化にあたって,週末ボランティアとして参加を始め,2009年9月より専従スタッフ。プロボノワーカー(ボランティア)のリクルーティングや企業との協働プロジェクトの運営を担当。

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