Re:PoIC~ライフハッカーのためのPoIC入門
第1回 現在位置情報~PoICに至るまで
PoICとは?
PoIC(Pile of Index Cards:情報カードの積み重ね)という生産性向上システムがあります。
5mm方眼罫入りの5×3インチサイズの情報カードを用いたアナログのシステムとメソッドの体系のことです。
PoICのエッセンスは次の3つにまとめられます。
- 頭の中のアイディア,身の回りの情報をカードを使って収集する。
- それを箱の中にすべて時系列で保存していく。
- それをあとで利用し,新しい知恵・知識・成果の再生産を行う。
Hawkexpress氏によって考案された,この生産性向上システムのすべては「PoIC マニュアル」において知ることが出来ますが,gihyo.jpのLIFESTYLE STAGEでHawkexpress氏によって連載されていた「PoIC : 情報カードの積み重ね」によっても,その骨子を充分知ることが出来ます。
いまさら情報カードなんて,と思われる方が大半だと思いますが,PoICは実に完成度の高い洗練された知的生産システムですし,その考え方は情報カードだけに留まるものではありません。
今後,この「Re:PoIC~ライフハッカーのためのPoIC入門」において,僕がPoICを通して考えたことを記していこうと思います。無論,考案した本人による説明に触れることが理解への一番の早道ですが,実際にPoICを実践してみた第三者(PoICer)の意見や感想,改良法などを記しておくことも無駄ではないでしょう。今後,本連載は理論の書ではなく,経験の分かち合いを目的に書かれることになります。そうした意味で,gihyo.jpの「PoIC: 情報カードの積み重ね」が,梅棹忠夫氏の著作「知的生産の技術」だとすると,本連載は続編「私の知的生産の技術」に相当すると言えるのではないでしょうか。
この連載でPoICの魅力が少しでも伝われば幸いです。
連載の概要
まず今回の第1回では,PoICの簡単な概要と,この連載で今後書かれること,そして僕がPoICを始めるまでの経緯を簡単に記します。
続いての第2回では,PoICの始め方と利用方法について記します。PoICは一定量以上の情報カードが貯まらないと真価を発揮できません。そのため,すぐに利用できる方法を用いることで,PoICを続けていくモチベーションを維持していく必要があります。そこで僕が考えた実践方法などを記していこうと思います。
第3回では,GTDとPoICについて記します。両方を実践してみた結果,GTDとPoICはお互いを補完する関係にあるのではないだろうかと思うようになりました。したがって,GTDとPoICの性質の違いを理解して,両方を併用することが望ましいのではないかと思います。
第4回では,PoICの特性について記していきたいと思っています。PoICとは情報を貯めるためのシステムであり,メソッドです。したがって再生産の方法は自分で見つけなければなりません。それにはPoICとは何であり,また何ではないかということをはっきりと自分なりに理解しておく必要があります。
第5回では,43Tabsについて説明したいと思います。PoICはシンプルなシステム,シンプルな手順,シンプルな管理方法を標榜しているために,締め切りのはっきりしたTODOのような情報の管理には向いていない場合があります。それを補うために,出来るだけPoICとシームレスに繋がるようなTODO管理方法を考えました。それが43Tabsという手法です。それをどのようにして思いついたか,そして実際の運用方法などを記していきたいと思っています。
そして,最終回の第6回では,PoICの可能性について考えてみたいと思います。PoICは5mm方眼罫入りの情報カードに最適化された方法ですが,その手法と考え方は綴じられたノートやデジタルでも通用します。例としてMoleskineとシャープ社のザウルスを取り上げて説明したいと思います。
GTDを知る
僕が初めてGTDを体系的に知ったのは,gihyo.jpの連載「ライフハック交差点」の著者である堀 E. 正岳氏が以前に運営していた「Edmeister's Homepage」内の「Getting Thing Done.(a.k.a.GTD):Part(1)~(4)」によります。
3年程前,僕の仕事の内容が激変した上,自分の時間をどうしても確保したかった僕は,効率よく仕事をこなすための仕事術に関して調べ始めました。その頃「仕事術」というキーワードで検索すると「ストレスフリーの仕事術」という語句が多く現れるような状態になっていました。その中で,上記の「Getting Thing Done.(a.k.a.GTD):Part(1)~(4)」を知り,初めて体系的にGTDというシステムを知ったのです。
GTDとはDavid Allen氏の提唱した仕事術で,頭の中にあるすべての事柄を外部の信頼出来るシステムに移管し,その上でひとつひとつの項目をGTDのスキームに沿って処理していくという方法で,gihyo.jpの「GTDでお仕事カイゼン!」でも,詳しく説明されています。
Hipster PDAを使う
とりあえず,GTDの手順をふまえて実行していくと,仕事は片付いていきます。ところが,半年ほどして仕事のパターンというものが判り出すと,途端にGTDは破綻してしまいました。
その理由として考えられるのは,次の事柄です。
- 仕事の概ねの内容,かかる時間,手順などが,経験から見通せるようになった。
- そのため,いちいちプロジェクトとして書き出し,タスクに細分化していく煩雑な処理がいらなくなった。
- すると,新しいタスクが増えないので,レビューする必要もなくなった。
つまり,GTDという仕事術は日々締め切りの判らない新しい種類の仕事を次々と処理しなければならないナレッジワーカーのための方法であり,締め切りのはっきりとした半固定・半創造的な職人的な仕事には向いていなかったのです。
やがて僕は,すべての気になる事柄を書き出したA4サイズのコピー用紙を手帳にはさみ,スケジュールに落とし込んだその日のTODOを,Hipster PDAという5×3インチサイズの情報カードをダブルクリップで止めるだけのメモ帳に抜き書きして持ち歩くというスタイルに落ち着いていきました。
PoICに出会う
Hipster PDAを通して僕は初めて情報カードというものを知り,他の人がこの情報カードというものを一体どのように使っているのだろうという興味がわいてきました。そこで色々と検索してみた結果,2ちゃんねんの文房具板の情報カードスレッドで「PoIC」というとてもすごい情報カードの使い方を考案された方がいると知ったのです。その当時の情報カードスレッドはほぼPoICの話題で持ち切りだったように思います。
僕はそこに記されていたURLを辿り,現在PoICのメインページとなっている「PoIC マニュアル」を知りました。
PoICは,5mm方眼罫入りの5×3インチサイズの情報カードに特化したカードシステムで,あらゆる情報を「記録」「発見」「GTD」「参照」の4つに分類するというシンプルなルールと,それに応じて最上部左辺にある升目4つをそれぞれ塗りつぶすというシンプルな手順と,それらのカードを時系列順にただ並べるというシンプルな管理方法が特徴で,サイトにはそのように処理したカードがドックと呼ばれる箱の中に大量に収まる様を写した写真が掲載されていました。僕はその写真を一目見て単純に「カッコいい」と思ったのです。この「カッコいい」というのが僕にとっては実に重要で,カッコいいものを所有したいという物欲は,PoICを始めるための一番の動機となりました。
このようにGTDを途中下車し,PoICに乗り換えたわけですが,このことは両方の特徴を知る上で大変有意義なことだったと思います。
次回は,僕がどのようにしてPoICを始めたのかお話しします。

