エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #1 仕事の枠組みと中身のギャップを前提として働こう

2008年5月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

この連載について

これからしばらくの間,「エンジニアのためのSoulHacks」というテーマで連載させていただく中島拓といいます。よろしくお願いします。

この連載テーマである「SoulHacks」とは,最近はやりの「LifeHacks」という言葉をちょっとずらしてみたいと思って作った造語です。

GTDをはじめとするLifeHacksや,いわゆる「自己啓発」は,今,ちょっとしたブームになっているようです。私も大小さまざまなことで毎日悩み続ける現代人として,すごく興味があるし,共感する部分も多いのですが,あまりにも「仕事術」として割り切りすぎたLifeHacksには,乗りきれない所もあります。

SoulHacksは,そういうアンビバレントな気持ちをこめて,一味違うLifeHacksを目指しています。つまり,ほぼLifeHacksと同じだけど,次のような方向にちょっとだけ延長した言葉として使いたいと思います。

  • 生活上のちょっとした知恵であるLifeHacksから,「自己実現」「人生の目的」といった方向に一歩だけ踏み出したもの(一歩だけであることが重要です)
  • 仕事とプライベートの境界にあるようなこと
  • 悩まない為のLifeHackと対比して,悩むことに積極的な意味を見いだす

一冊本を読んだり,仕事の方法を少し変えただけで,そんな簡単に人生が明るくなるわけはありません。むしろ,それがブームになること自体が,それ系の本を渡り歩いている(けど安心は得られず悩み続けている)人が多いことの証明かもしれません。

私も,仕事術によって「悩みが消える」という効能を強調するような方向性には疑問があります。しかし,それは仕事術に意味がないということではなくて,受け入れ方の問題ではないでしょうか。

つまり,この時代に生きていて,悩まずに生きるなんてことは不可能です。でも,悩み方,迷い方にも意味があるものとそうでないものがあると思うのです。

そして,「意味ある悩み方」として受け止めるならば,有用な方法論やそのヒントになるノウハウはたくさんあると考えています。この連載ではそれを「SoulHacks」としてお届けしていきます。

マスオさんの幸せ

突然,話題が変わりますが,私はこういうことを考えるといつもマスオさんのことを考えてしまいます。サザエさんのご主人である,あのマスオさんです。

マスオさんと言えば知らない人はほとんどいないと思いますが,ではマスオさんの仕事は何でしょうか?

これには漠然と「サラリーマン」としか答えられない人がほとんどだと思います。私もそうです。しかし,そういう漠然とした「サラリーマン」という生き方が,かってはかなりリアリティを持っていました。私は,昭和40年代に子供時代を過ごしたのですが,当時は,マスオさんのような人が回りにたくさんいたような,漠然とした記憶があります。カツオくらいの年だった頃には,自分も将来はマスオさんのような大人になると思っていました。

しかし,いつの間にかマスオさんの年をはるかに越えてしまいましたが,自分の生活は,マスオさんとはかけ離れた所にはあります。今では,マスオさんのようなキャラクターは,完全な虚構の中にか存在し得ないもののように感じます。

この違いは何かと言えば,「仕事」「プライベート」の境目が無くなったということではないでしょうか。

サザエさんは,磯野家のプライベートを描くマンガであり,そのプライベートな空間には,波平氏の仕事もマスオさんの仕事も侵入することはありませんでした。プライベートな空間から見えるのは,二人の出勤の光景だけであり,二人とも仕事を家に持ち帰ることもないし,家の中で仕事について考えたりすることもありません。

それにもかかわらず,波平さんもマスオさんも,それなりに充実した仕事と幸せな家庭生活をしっかり両立させていたように感じます。

仕事とプライベートがきちっと区切られていて,その両方の空間の中で二人は,充実感と自身を持って暮らしているように見えました。ほのぼのとしたアニメですから,現実とかかわりなくそういうキャラクターとして描写されるのは当然かもしれません。しかし,そういうのんきな「サラリーマン」という生き方が,ファンタジーとして求められていることことが,逆に,今の仕事というものの難しさを表しているような気がします。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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