エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #6 自分を評価する自分を正しく評価しよう

2008年10月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

はじめに

『フラット化する世界』を取りあげた前々回は「世界が激しく変化している」ことがテーマで,『経営の未来』に触れた前回は「企業が激しく変化している」ことがテーマでした。

今回のSoulHacksはこれを受けて,変わりゆく世界と経済の中で,「自分がどう変わっていくべきか」について考えてみたいと思います。題材とするのは,『ハイコンセプト』という本です。

『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』
ダニエル・ピンク 著,大前 研一 訳

「評価」は高カロリー食品

先日,人間ドックを受けたのですが,メタボ予備軍だと言われて,食生活と運動を改善するプログラムを受けることになってしまいました。ちょっとショックです。

現代人は,高カロリー食品が簡単に手に入りますから,入手できる食品を欲望のままに食べていたら,病気になってしまいます。意識的に自分の栄養をコントロールしなくてはなりません。

人間の本能は文明以前の原始生活をしていたころに形成されています。その時には,高カロリー食品や甘いものというのはめったに手に入らないもので,不足しがちでした。だから,そういうものを食べるチャンスがある時には,他のものより優先度を上げて食べることが生存にとって有利になります。だから,人間の嗜好はそういうものに執着し優先的に摂取するようにできているわけです。

現代人は,人間の本能が形成された時代とは違う環境の中で生きていますので,このように,ビルトインされた本能だけでドライブされていては,自分にとって破壊的なことをしてしまいます。

そういう,本能が生存に有利に働かないケースは,高カロリー食品以外にもたくさんあると思いますが,私は「自己評価」のモノサシもそのひとつではないかと思います。

自分の能力が客観的に見てどれくらいのものか,それを評価する時に,現代人は過去のどの時代より多くの情報を得ることができます。そして,インターネットが生活の中に浸透してくることで,その厳しさが増しています。

絵がうまいとか歌がうまいとか走るのが早いとかケンカが強いとか,そういうことは,ちょっと前までは,自分が属する狭いコミュニティの中で評価されるものでした。だから,100人に一人くらいのレベルで何らかの能力を持っていれば,「すごい」「天才」と言われ,回りの人から一目置かれることが可能でした。

「自分の視界の中で○○について一番凄いのは自分」という状態が普通にあり得たわけです。

ところが,今では,その「視界」とはネットの中に見えるものであり,それは地球全体に広がっています。ネットの中では,100人に一人くらいの能力では目立つことは難しいし,自分の視界の中に見える中で,自分より凄い人がいくらでも見つかってしまいます。「自分なんて大したことない」ということを思い知らされてしまいます。

昔は難しかった「自分を自分で正確に評価する」ということが,ちょうど高カロリー食品の摂取のように,はるかに容易になっているのです。

これは,人間の本能というか精神構造にとって,不自然な環境であると考えるべきだと私は思います。

つまり,「客観的で正確な自己評価」というものを多量に摂取するように人間はできていないのではないかと思うのです。これを無批判に摂取してしまうと,精神のバランスを欠いてしまうのではないでしょうか。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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