エンジニアのためのSoulHacks

SoulHack #7 心の中になるべく大きな地図を持とう

2008年11月17日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 5 分

1万人対1人の「ウォーリーを探せ」「負けおしみ2.0」

ウィルバーのモデルは,この「私」⁠私たち」⁠それ」という所からスタートし,⁠それ」を単体として扱えるものと,構成要素がコミュニケーションをする複雑なシステム—「それら」に分ける「4つの象限モデル」になり,それぞれの象限を内面からのアプローチと外面からのアプローチに分けた「8つのゾーン」というモデルに発展していきます。

さらに,これと全く違う軸として,可逆的なステート(状態)と順々に発展するステージ(段階)⁠発達ライン等の考え方を含めた複雑なモデルを元に知の全体像を描いていきます。

ここでは,そのモデルの詳細を説明することはしませんが,このようなモデル,⁠大きな地図」を持つことが,現代を生きる為の必須のノウハウなのではないかと私は考えています。

ネットの中で何かをするということは,ある意味で負けることが決まっている勝負に挑むようなものです。議論の勝ち負けだけではなく,何かのメッセージを伝えたいと思って,それがうまく伝わらなかったら「負け」と考えると,負けないことは難しい。

それは,1万人対1人で「ウォーリーを探せ」をやるようなものです。

ある主張の中の論理の穴や,あるメッセージの中に含まれた誤解の可能性がウォーリーだとしましょう。書く側,発信する側は一人きりでその穴を探して埋めていくわけですが,読む側,受け取る側は何千人,何万人といて,そのうち誰かは先にウォーリーを見つけてしまうわけです。

だから,ネットの中でメッセージを発するということは,必然的に負けが運命づけられたゲームなのです。

積極的に発信しようと思わなくても,普通にネットを使うことから,脳内で「ウォーリーを探せ」が始まってしまいます。

たとえば,はてなブックマークのようなソーシャルブックマークや2ちゃんねるのような巨大掲示板を見ると,そこには,ありとあらゆる見解,⁠地図」が集まっていて,さまざまな物事に対してさまざまな視点からの批判があります。

その批判の中に表わている観点,ロジックが知らないうちに吸収されて,脳内で「ウォーリーを探せ」が起こるわけです。そうなってしまうと,自分としてはせいいっぱい頑張って,全ての「ウォーリー」を見つけたつもりでも,どこかにまだ「ウォーリー」が残っているのではないか,そういう疑念を拭うことができません。

ネットには,そういう毒性があって,単に情報を集めるだけの目的であっても常時使っていると,何をする時にも自信を持てなくなってくるのではないでしょうか。

そして,その自信の無さは,ある意味では正しいことです。1万人対1人で「ウォーリーを探せ」に勝てるわけがありません。

できることは,その負け方を工夫すること,よい負けおしみのレパートリーを持つことです。

ケン・ウィルバーのモデルは,そのような「負けおしみ2.0」の材料として,非常に有用なのではないかと思います。

つまり,自分のレパートリーに無い新しい地図を提示された時に,それを自分の世界にどう関連づけたらよいのか,その手法のバリエーションが広がるわけです。

ただ単に「むこうが間違ってる(でなければ自分が間違っている)」としか言えないのと,⁠今回は『それ』の問題として議論されてしまったけど,これは『私たち』の問題として扱うべきだと自分は思う」とか「自分は「打たれ強さ」⁠ステート』の問題ととらえていたけど,これは『ステージ』の問題だったのかもしれないな」等と多様な視点から見ることができるのでは,負けた時のダメージが違います。

そういう技を持っていることによって,自信を持って何かを行うことができるようになります。その「負けおしみ」が,相手に通じるかどうかには関係なく,自分自身が冷静に状況をとらえることができて,すぐ次のステップが取れるようになります。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

株式会社ブレーン研究部にて,Windows用ソフトウエアルーター 「PROXY-2000シリーズ」を開発する。 オープンソースソフトウエアとしては,Ruby用HTMLテンプレートエンジン Amrita/Amrita2,個人用GTD支援ソフト「レビュアブルマインド」の開発に携わる。

アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/essa/

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