勉強会のススメ

第2回 対話を促進する学び場の運営ノウハウ[中編] 勉強会当日の進め方

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勉強会当日の形式

当日の進め方には,いくつか方法があります。筆者が経験したことのあるものを中心に,5種類を紹介します図1)。

図1 勉強会の形式

図1 勉強会の形式

手法を選ぶ際の目安として,図2では2つの軸を考えました。1つは参加人数の多寡,もう1つは事前準備負荷の高低です。

以下で,それぞれについて説明します。

音読

文字通り,書籍を隅から隅まで一字一句漏らさず読み進める方式です。1人がずっと読み続けるのは疲れるので,適当な分量で音読する人を交代します。わからない箇所があれば,都度あるいは音読の区切りで質問し,議論します。事前準備がほとんど不要なので運営負荷は低いですが,1回の参加人数が多い場合には,進行ペースや発言者の偏りに注意しましょう。

担当者によるサマリー発表(輪講)

勉強会の形式として一般的なものがこの「担当者による発表」です。題材が書籍の場合は,いわゆる「輪講」形式です。

この形式は通常のセミナーと似ていますが,その目的は大きく異なります。通常のセミナーの目的が「壇上の講師から聴衆への情報伝達」であるのに対し,担当者によるサマリー発表では,あくまでも「担当者のサマリーを呼び水とした,議論の活性化」が目的です。

筆者の経験からは,担当者によるサマリー発表の形式では,淡々と担当箇所を並べて報告するよりも,担当者自身の疑問や質問を参加者にぶつける形式のほうが,充実したセッションとなることが多いようです。担当者以外の参加者も事前に予習していると,さらに良いものになります。

この形式は,セッションの時間をうまく活用した有意義なものにできます。その一方で,担当者はもちろん,参加者にも予習などの事前準備が必要です。この形式はほかの手法に比べて運営負荷が高くなりがちです。参加人数の多寡(あまり人数が少ないと発表のしがいも少ない)や,忙しさの度合い,勉強会の開催間隔など,配慮すべき要素も多くなります。

オープンスペース

勉強会のテーマがホットなトピックだったりする場合には,参加者がとても多くなることがあります。ここでの「多い」とは,筆者の経験からは1回の参加者が30人を超えるような場合です。人数が十分に多く,場所がそれなりに広い場合には,「オープンスペース」も有効です。

オープンスペースとは,参加者が自主的にセッションを開催するための方法で,海外のカンファレンスでの適用事例が多いです。オープンスペースでは,会場のホワイトボードなどに「場所」「時間帯」のマトリクスを用意します図2)。セッションを開きたい参加者がセッションの概要とタイトルを告知し,参加者を募ります。セッション内容の告知は事前でも当日でも構いません。

図2 オープンスペースでの掲示の例

図2 オープンスペースでの掲示の例

同時並行して開催するセッションは4セッション程度,1セッションあたりの時間は90分から120分が適当だと思いますが,確固たる基準はありません。各セッションが終了したら,参加者が簡単なまとめを発表したり,議事録をまとめておくと,そのセッションに参加していなかった人たちへのフォローになります。

オープンスペースの詳細については,後述する「エクストリームプログラミング」でも有名なMartin Fowler氏による記事この記事の日本語訳が参考になります。参加者が100人を越えるような状況でのオープンスペースの適用事例もあるようです。

ペアプログラミング

プログラミング言語などの新しいソフトウェア技術の勉強会では,ペアプログラミングも有効です。

ペアプログラミングとは文字通り,1台のPCを二人一組のペアで使用しながらプログラミングする手法です写真1)。ペアプログラミングは「エクストリームプログラミング」というソフトウェア開発の進め方に由来するもので,筆者も仕事で日常的に利用しています。

写真1 ペアプログラミング

写真1 ペアプログラミング

2人が一緒になって1つのプログラムを作り上げていくので,プログラミングの途中でわからないことが出てきた場合や,判断に迷った場合などはいつでも相談できます。ペアプログラミングは仕事を進めていく上での学習の効率化も狙いに含まれているので,勉強会にも適用できます。

筆者も実際に,プログラミングの勉強会でこの手法を採用してみたところ,参加者にも好評でした。

エクストリームリーディング

エクストリームリーディングは読書会の方式の1つで,先述した「エクストリームプログラミング」を読書会に応用したものです。筆者はこの方式の経験はまだ浅いですが,とても興味深いので紹介したいと思います。運営負荷の低さに対して高い学習効果を得られます。まったく事前準備をしないで行うことが特徴です。

  1. 一度に読む単位を参加者間で合意する。1読書単位は数ページ
  2. その場で黙読。わからない箇所はいつでも質問する
  3. 1単位読み終わった人は「終わった」と宣言。余った時間はまとめや次の読書単位に充てる
  4. みんなが1単位読み終わったらまとめを行う。議論は,内容よりも制限時間を重視する
  5. 最初に戻る

テキストにする書籍は,良書と言われているけれども1人で通読するには難しいものが適しているようです。実践や運営のコツについての詳細は「PICSY blog」の記事を参照してください。

エクストリームリーディングは文字通り「極端」(エクストリーム)なものなので,3~6人程度の小規模が前提です。忙しい職場での勉強会にも向いています。筆者の職場では毎朝30分間,仕事で必要な英語の技術書を5名のチーム内で読み進めています。読書会の参加人数が多い場合には,グループ分けをしたり,オープンスペースの1つのセッションに組み入れるなどの工夫が必要になります。

著者プロフィール

角谷信太郎(かくたにしんたろう)

(株)永和システムマネジメント,サービスプロバイディング事業部所属プログラマ。「『楽しさ』がシステム開発の生産性を左右する」と信じてRubyによるアジャイル開発を現場で実践するテスト駆動開発者。目標は達人プログラマ。好きな言語はRuby。好きなメソッドはextend。著書に『アジャイルな見積りと計画づくり』(共同翻訳),『JavaからRubyへ』(翻訳),『アジャイルプラクティス』(共同監訳),『インターフェイス指向設計』(監訳)。

URLhttp://kakutani.com/

著書

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