はじめに
はじめまして,こしばと申します。本連載では,プロジェクトの推進や管理をテーマとして,毎回語らせていただきます。
さて,私は新卒でソフトウェア技術に関わる仕事に就いて以来,一担当者として働いてきました。今も一担当者として日々働いています。よって,立場としては管理される側にいます。
私が大事だと考えているのは,そのような立場にいる担当者こそ,プロジェクトの推進や管理に対して,受身ではなく主体的に関わっていくことが必要だということです。なぜなら,今の仕事を完遂することと共に,長い期間を楽しく働き続けることが真に重要なことであり,特に後者を満たすには,自分自身こそ一番のキーとなるからです。
では,まず担当者としての理想を明らかにしていきます。
担当者重要
さて,ソフトウェア開発で一番価値のある重要なことは何でしょうか。それは成果物を作って納品し,顧客に満足してもらうことです。
ではその「価値のある重要な」成果物を作るは誰でしょうか。会社,プロジェクト,チームなど作業集団の成果物として顧客に納品するとしても,突き詰めていけば作業の担当者である私たちが成果物の要素の一つ一つを作っています。言い換えれば価値そのものを作っています。
つまり,担当者というのは作業集団の中でとても重要な役割を担っています。でも実際には,担当者自身がその重要性を分かっていないのではないでしょうか。流れ続ける仕事と見えない終わりとの間で心が磨り減ってしまい,言われたことだけをこなせばよいと考えてしまう成果物作成機械に成り果ててないでしょうか。
理想的な担当者のメタファー
リーダーでもマネージャでも,成果物の作成において担当している作業があればもちろん担当者です。
私たち担当者が目指す理想像として,第一線で活躍するスポーツ選手──グラウンドで活躍するナインやピッチに立つイレブン──を想像するのが適していると思います。それは以下の点が共通して重要となるからです。
- チームとしての方針に沿う行動を取る
- 最終的な各々の動きは選手自身がコントロール
- 個人技術とチームプレイ
- 状況に対応して能動的に動く
- シーズンを通して活動し続ける
- 選手生命の限り第一線で活躍し続ける
担当者の認識の現状
担当者自身,自分の位置づけをこのように捉えてはいませんか?
図1 ピラミッド

指揮系統の流れ,発言力,給料の額,肩書き,人数を基準とすると,確かにたいていこの構造になります。だからといって,ピラミッドの上が重要で,下は軽視していい訳ではありません。
労働市場での希少性は管理者と担当者では違いがあるでしょうが,個々の人間としては等しく重要です。そして,
- シーズンを通して活動し続ける
- 選手生命の限り第一線で活躍し続ける
ためには,故障して活動できない状態に追い込んでしまわないように,自分で自分を大事にしてケアする必要があります。
また,指揮系統に従って上で立てた計画を下が実行するのは確かですが,何にでもYesと答えて言われるがままやればよいわけではありません。理想は次のようなことです。
- 最終的な各々の動きは選手自身がコントロール
- 状況に対応して能動的に動く
そのため,上で立てた計画,つまり状況に対応して,より良い動きを考える必要があります。もし自分の手に余るようでしたら,周りと連携してクリアする必要があります。
私たちもプロジェクト推進の主役となる
まとめると,状況に即して適切に連携して動けるようにし,不本意なリタイアを避けて第一線で活躍し続けるのが大事です。
そのために,私たち担当者は自分自身を制御できるようになる必要があります。つまり,自分自身の仕事やこれから生きていくこともそれぞれプロジェクトと認識して,管理と推進を担っていくということです。
そして,担当者を一つ一つ制御する役割から管理者やリーダーを解放し,方針を示すことや,集団が使えるリソースの調整,担当者が動きやすい場を整えることなど,本来行うべき集団全体に関わる枠組みの管理に注力してもらえるようにするのが,よりよいあり方だと考えています。
得られるもの
管理と聞くと,つい面倒で邪魔なこととか,現場の実情を知らない人がうるさく唱えることとか,一担当者の自分には関係ないとか考えがちです。むしろ,色々なメリットがあると思います。例えば,
- やらされ感の低下
- 長く第一線で働き続けるという視点
- 陳腐化しにくい管理技術の会得
- 自分のことは自分で制御することから来る心の安定
などが考えられます。
そのようなメリットを味わえる,楽しくてクオリティの高い担当者生活を送るためのやり方を,次回から掘り下げていきます。