心の調子を管理する
前回の記事の終わりの方で,自分の感情や感覚からフィードバックを受ける事について触れました。今回はそれを更に深めて,心のコンディションをできるだけ良い状態に保ち,安定して働き続けられる事を目的として,心の調子を管理することについて述べていきます。
技術者は論理の塊
私たちソフトウェア技術者は,日々ロジカルさを求められています。特に,「切り分けること」を強く求められます。
例えば,開発を行っている場合は,クラス設計やモジュール設計などでクラスやモジュールの責務を切り分けることを求められます。保守を行っている場合は,改修を行う際に影響範囲の切り分けを求められますし,障害が起きた場合は,障害箇所の切り分けが求められます。テストを行っている場合は,テスト結果が正しいか正しくないかを厳密に切り分けて判断し,バグフィックスの優先順位付けでは緊急性が高いか高くないかを切り分けを行います。他には,元請け・下請けの責任範囲が切り分けられたり,要求分析・外部設計・内部設計・実装・テストと局面によって工程が厳密に切り分けられたりする現場もまだまだ多くあるでしょう。
ソフトウェア技術者の仕事はソフトウェアを作る・ソフトウェアを動かす事であると考えがちですが,むしろ何かを切り分ける事こそがソフトウェア技術者の日常となっています。
人間は適当
確かに技術者という役割としては切り分けることが強く求められますが,人間としてはどうでしょうか。少なくともわたしがこれまで接した人間は,コンピュータのようにロジカルで0と1に切り分けられる要素のみで構成されたような人は誰一人としていませんでした。みな,それなりにあいまいでむらのある感情や感覚を多く持っています。当然,わたし自身もそうです。
それにもかかわらず,技術者として毎日ロジカルさや切り分けばかり求められていては,その方向に重点が置かれてしまい,感情や感覚を適当に扱ってしまいがちです。そして,知らず知らずのうちにストレスが蓄積し,結果として心が疲れ果ててしまいます。
では,どのようにすれば,心が疲れ果てることを解決できるでしょうか。
気持ちを盛り上げて人間的な感覚を取り戻す
人間的な感情に目を向け,気持ちを盛り上げるのは良い手段です。わたしはプロジェクト・ファシリテーションの手法を気持ちの盛り上げのために利用しています。本来プロジェクト・ファシリテーションでは,チームを一つにまとめたりコミュニケーションを促進したりといった,集団や人間関係に対するプラクティスが多くあります。実はプロジェクト・ファシリテーションのプラクティスのいくつかは個人に対して,特に自分自身に対して適用することで,気持ちを盛り上げて心を活性化することができます。
例えば,前回取り上げたバーンダウンチャートは,プロジェクト・ファシリテーションのプラクティスの一つです。
図1 バーンダウンチャート

前回私が拡張した4ライン・バーンダウンチャートを紹介しました。本来は進捗の遅れが発生する前に対処するためのものですが,あとどれだけ作業をこなしたらゴールに達成できるかを意識することによって気持ちの盛り上げるためにも使っています。また,単にゴールに向かうだけでなく理想の進捗になるようにする要素があるため,計画にそって淡々とすすめるだけでなく,どれだけ前倒しにできるかを挑戦することで,更に気持ちを盛り上げていくことができます。
図2 4ライン・バーンダウンチャート

コラム:プロジェクト・ファシリテーションとは
個人のスキルを十二分に引き出し,個人個人のコラボレーションによる組織作りを行うプラクティスの総称です。コミュニティが中心となって活動しており,日本各地でワークショップが開かれています。
技術評論社から『システム開発現場のファシリテーション~メンバーを活かす最強のチームづくり~』(新岡優子, 前川直也, 西河誠, 小田美奈子, 上田雅美)という書籍も出ています。
