Proactive rep! ~担当者によるプロジェクト推進~

第11回 「もうあかん!」そんな時に使うリカバリーカード

2009年3月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

カードの説明

カードの具体的な説明は,以下のとおりです。

1.スコープを狭める

スコープを狭めるとは,最終的に運用に供される機能やフィーチャーを削減して,本当に大切な部分を必要な品質を満たしたうえで納品し使い続けることです。

ただ,当初は「作ります」と公言していたものを「作りません」という変更が出てくるわけですから,高度な交渉スキルが必要になりますし,交渉相手との信頼関係もこの交渉の成否に大きく影響するでしょう。実際に適用するときは,以下の事柄も予め検討した上で交渉に挑みましょう。

  • 削減することによる影響は何があるのか
  • 削減する分はいつ実施するのか・しないのか
  • 削減する分はどのような手段で代替できるのか
2.締め切りを延ばす

締め切りを延ばすとは,スコープはそのままに納品までの期間を延ばして,予定していたものを元の期限から遅れて納品することです。最も重要な部分の作成が遅れてしまった場合や,途中の締め切りが延びても,最終的には遅れを取り戻せる場合に多く使われます。

ただ,この手法で注意すべきは「学生症候群」です。時間に余裕があればつい着手するのが遅れてしまって,せっかく締め切りを延ばして作った時間を食いつぶした結果になってしまう事がよくあります。そうなってしまうと,更に締め切りを延ばす羽目になることが多々あります。ずるずる締め切りを延ばすと,締め切り感の無いルーズな人だと思われてしまい,信頼を失うことに直結します。

3.他の人に手伝ってもらう

他の人に手伝ってもらうとは,文字通り他のメンバーに仕事の一部を取ってもらい分担することで,期限内に終わらせることを狙うやり方です。チームを組んでお互いに助け合って仕事していると,このカードを使えます。仕事の説明や結果の結合などのオーバーヘッドに注意する必要があるので,分担作業の計画は忘れずに行いましょう。

4.途中の工程を省く

途中の工程を省くとは,例えばドキュメント作成を省略する,レビュー回数を減らす,試験密度を下げるといったことで,締め切りに間に合わせることです。

これによって本来解決できるはずの課題が先送りになってしまったり,ボロボロの品質のものができてしまったりというデメリットがあります。ただ,とにかく早く納品して利用したい,完全なものでなくていいから実物が観たいなどのスペシャルオーダーがある場合はとても有効なカードとなります。

5.労働時間を延ばす

労働時間を延ばすとは,毎度お馴染みの残業や休日出勤などで足りない作業時間を補って辻褄を合せるカードです。外側からは予定通りに進捗しているように見せることができるのと,個人レベルで勝手に実施できる気安さがあるので,一番切りやすいカードかと思います。ただ,家族や日常生活が犠牲になります。長時間働くことは健康を害します。

このカードを多用すると残業や休日出勤が常態化してしまい,ズルズルと無駄に働く事に繋がります。最小限の期間のみ緊急対処としてこのカードを使って,そもそもこのカードを切らなくていいように計画を立て直すことをお勧めします。

6.「頑張る」宣言

「頑張る」宣言とは,以下のようなやり取りの時に使われます。

Q:「遅れをどうやって取り戻しますか?」
A:頑張ります

最悪なカードですが,現実には上記のやり取りを耳にしたり,やってしまったことのある人は多いと思います。自分に気合を入れるために「頑張る」というのは悪くないと思いますが,他人に言った場合は無策であることを表明しているに過ぎません。このような言葉では納得してもらう事は不可能であり信頼が失われていきます。こんな意味のない言葉を紡ぎだす時間があったら,別のどのカードを切るかを選びましょう。

実際にカードを切る上での注意事項

どのカードも,メリットとデメリットがありますので,勝手な判断でリカバリーカードを切るらずに,QCDを勘案して組織として一番メリットが大きいものを相談し合って選択するようにしましょう。よくあるのが,自分の失敗だからと,勝手に残業したり途中の作業を手抜きしてしまうことです。

リカバリーの目的は,どんな手段を用いてでも本当に必要なものは作りきるということです。⁠自分の失敗だから」などといった下らない理由で不適切なリカバリーを行って傷口を広げてしまわないようにするのが肝心です。

著者プロフィール

こしばとしあき

関西出身自宅料理員兼ソフトウェア開発担当者。金融系業務アプリ開発,レガシー移行,Webサービス開発,画面制御基盤開発など様々な開発現場を経て,最近関東に進出。

アジャイル,ライフハック,プロジェクトファシリテーションに強く関心を持ち,講演も行っている。「ペンポッドで世界へミサイル大会」初代チャンプ。

blog『koeだめ』http://d.hatena.ne.jp/bash0C7/
料理blog『kuiだめ』http://kuidame.4038nullpointer.com/

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