進捗とは何か
これまで,複数人のグループで仕事を進めるために必要な計画立案の方法,そして全体納期を左右するクリティカル・パス(隘路)みつける方法について学んできました。計画はできた,工程表もきっちり作った,あとはゴールを目指して走るだけ--なのですが,その際に大事になることが,進捗の確認です。よく,工程表を書き終えると安心してしまって,実行段階で進捗状況を確認しないまま走っていく人たちを見かけます。計画通りに事が進めばいいのですが,なかなかそうはいかないのが現実です。互いに他のメンバーの担当しているタスクがどういう状態になっているのか,そしてグループ全体ではゴール地点にどれだけ近づいたのか,定期的にモニターしておく必要があります。それを正確に把握できてはじめて,仕事の完了まであと何時間(何人日)の作業量が残っているかを推測できるのです。
そもそも,進捗とは何でしょうか。たとえば,スタート地点から100mはなれたゴールまで走っていくタスクを考えてみましょう。いま,スタート地点から70mまで走ってきました。進捗率は,当然70%ですね(図1-a)。
ところが,ゴール地点とは少しそれた方向に70m走っていたとしましょう。これでも,進捗率は70%と言えるでしょうか?(図1-b)
まして,ゴール方向とは直角に70m走ってしまったとしたら――今,ゴールまでの距離は,約125mになりました。すると,進捗率は,マイナス25%(?)ということになるのでしょうか。
このような混乱が起きる理由は,進捗を測るモノサシについて何も決めごとをしないまま走り出してしまったからです。むろん,この図をご覧になった皆さんは,「自分たちはそんなに愚かな間違いはしない」と思われるでしょう。しかし,ホワイトカラーが中心となって進めるオフィスワークは,製造作業や建設工事などと違って,具体的に目に見える成果物がすぐに上がってはきません。たとえば橋の建設工事なら,どこまで橋梁が出来上がったか,川を渡りきるまでにあとどれくらいの作業が残っているか,一目瞭然です。これに対して,「新製品をアピールするための展示会実施」というようなプロジェクトの場合,展示会当日直前にならないと,具体的なモノはほとんど目の前にできてきません。ゴール地点が見えぬまま走っているレースのようなものです。
たとえば,10日間で終わると見積もった仕事があるとしましょう。今日は9日目です。これまで毎日,フルタイムで一生懸命そのタスクに従事してきました。このとき進捗率をたずねられたら,「90%」と答えていいでしょうか? もし,さらに1日経った翌日も,まだあいにく仕事は終わっていなかったときに,進捗率は何%と答えるべきでしょうか?
終わってもいないのに「進捗100%」と答えたら,おかしいと誰もが感じるはずです。当初の作業量の見積が甘かったのかもしれません。あるいは,進め方が下手で生産性が低かったのかもしれません。あるいは上司の横やりで条件が変わってしまったのかもしれません。理由はどうあれ,完了していないのですから,100%でないことだけはたしかです。
つまり,進捗というものは,"今までどれだけ頑張ったか"ではなく,"目標まであとどれだけ残っているのか"で計るべきものなのです。冷静に考えると,これは自明のことに思えるでしょう。しかし,大きな組織の中では,しばしばそれが忘れられてしまいがちです。
