タイム・マネジメントの心得 ~あなたを多忙から開放する10の方法~

第12回 まとめ―もっと「考えるための時間」を!

2009年4月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

考える時間はどこに?

上の図にはさらに,⁠不明」5%という項目も入っていることに,気がつきましたか。⁠不明」とは,その日の終わりになってふり返っても,どの作業に使ったかどうしても記憶にない時間のことです。おそらく,記憶に残らない(たいして重要でない)メールの読み書きや,職場でのおしゃべりや,あるいはちょっとした休憩だったのかもしれません。こうした「不明」時間がかならず出てくるというのも,日誌をつけてみてはじめて気がつくことです。自分は何をしていたのだろう? それが,時間の使い方に関する反省と改善の第一歩ですね。

ところで,誤解していただきたくないのですが,おしゃべりや休憩が,省くべきムダ時間だとは,私自身は決して思っていません。同僚とのおしゃべりは,しばしば「気づき」を与えてくれますし,休憩はリフレッシュして集中力を回復し,また思い込みから自分を解きほぐすきっかけになると考えています。ブルーカラーの職場には,必ず強制的休憩時間があるのに,ホワイトカラーのオフィスに休憩時間が欠けているのは,むしろ問題だとさえ思います。

これに関連して,先の図をもう一度見てください。順位で最下位のところに,⁠思考」1%という項目があります。思考がたった1%とは! 何も考えていないのか,このエンジニアは!? と驚かれたかもしれません。しかし,この人が「思考」に分類している作業とは,文字通り,机に向かって腕組みをし,じっと深く考え続ける状態のことを指しています。この人だって,メールや会議では瞬時に頭をめぐらし,いろいろ考えては決断を下しているのでしょう。そうした,瞬発力的な思考は当然なされているはずです。しかし,仕事においては,沈思黙考して答えを探り続けなければならないような,重要な問題もたしかにあります。これを,会社の職場で,机に向かってできた時間が1%だったのです。上司や周囲からは,"何もしていない"としか見えない状態のまま,あなたは考え続けられますか。

ソフトウェア工学で有名なデマルコは,その著書「ピープルウェア」の中で,かつての知人のエピソードを紹介しています。その知人は一流の研究所で働く優秀な研究者でしたが,ある日,複雑な問題を頭の中で追いかけながら,机にむかってじっと目をつぶっていたそうです。そのとき,上司が彼の部屋に入ってきて,⁠いったい君は何をしているんだ?」と質問しました。彼が,⁠え,考えていたんです」と答えると,その上司は

「考えるなんてのは家でやりたまえ!」

と一喝して部屋を出て行ったそうです。この知人が後に研究所をやめて自分の会社を興したのも,なんだか理解できますね。

みなさんは,どこで「考えて」いますか? 瞬発力的な判断ではなく,じっくり深く考えるような時間を,どこでとっていますか? 電車の中とか,歯を磨いているときとか,風呂の中とか,いろいろな答えを聞いたことがあります。しかし,⁠会社の中」というのは,残念ながらとても少ないのです。会社にいるときは次々と作業に追いまくられるだけで,真剣に深く問題を考える時間はめったにとれない,という人が多いのではないでしょうか。それで,本当に良いと思いますか?

タイム・マネジメントの究極の目的とは,この「考える時間」を生み出すことにあります。多忙感に追われる毎日,何も考えられない毎日から脱して,じっくりとものを考えられる日々を作る─⁠─これが時間管理術の本当の価値だと私は信じるのです。

著者プロフィール

佐藤知一(さとうともいち)

プロジェクト・アナリスト。エンジニアリング会社に勤務し,国内外の製造業向けの工場設計および生産システムづくりに従事するかたわら,執筆・講演活動などを行っている。専門はプロジェクトマネジメント・スケジューリング・生産計画・リスク分析など。海外におけるプロジェクト事情にも詳しい。

URLhttp://www2.odn.ne.jp/scheduling/

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