NEWS & REPORT

マーケティングと技術の二刀流で市場を切り開く─
エンジニアインタビュー 日本電気(株)第一システムソフトウェア事業部 エンジニアリングマネージャ 吉羽幹夫さん

2008年7月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

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NECのWebSAMはITのシステム運用管理を行うソフトウェアです。WebSAMがカバーする「システム運用管理」とは具体的に何を指すのか? (1)システム全体の統合管理や資産管理などを行う「コーポレート・マネジメント」,(2)ジョブ管理やソフトウェア配布,バックアップなどを行う「オペレーション・マネジメント」(3),サーバ管理,ネットワーク管理,アプリケーション管理を行う「システム・マネジメント」から成る一連の管理機能を指します。WebSAMはもちろん単体でこうした機能を全部実装しているわけではなく,上記の機能別のコンポーネントの集合体です。

この膨大なソフトウェアを束ね,その製品企画,マーケティングを担当するグループの指揮をとるのが,今回お話を伺う吉羽幹夫さんです。まずは吉羽さんに,これまでのご経験と,今の職務に関わった経緯について伺いました。
入社して,最初はEWS4800などのUNIX機のOS開発部隊に入りました。その部署はOSだけではなく,今で言うミドルウェアの範囲の開発もやっていました。その中に運用管理のソフトウェアもあったんです。今はWebSAMなんて名前が付いてますけど,そのころはいっぱいあるアプリケーションの中の一つといった規模でした。
配属されたのは,その開発事業部の中でも製品企画の部門です。プログラミングはやっていません。大学は情報科学だったので,プログラミング経験はありましたけど,入社のときに「開発はイヤだ」と言って(笑)そうなりました。ただ,技術ベースで製品をどう持っていくかを考える仕事なので,技術系ではあるんです。
そこに5年くらい居て,そのあとミドルウェア専門の部隊に異動になりました。そこでも製品企画や販売促進をやりました。担当製品としては運用管理と,アプリケーションサーバも扱いました。そのあと2年くらいは事業部全体の事業計画の企画に携わりました。このときは運用管理,アプリケーションサーバのほか,セキュリティ関係も含めたミドルウェア全体を担当しました。
そして,この2年はWebSAMを中心とした製品企画をやっています。入社以来何らかの形で常にWebSAMには関わっていますね。
扱う製品や部署は変わっても,一貫して製品企画とマーケティングに携わっていると,いろいろと見えてくることがあると吉羽さんは語ります。
製品企画というのは,全体のコンセプトやアーキテクチャ,あと個別の製品としてどういうものを出して売っていくか,ということを計画する仕事です。もちろん開発の細かいところまでは見ませんけど,大きな流れの中での機能としてはつかんでいます。モノを作る前段のところで,どういう製品であるべきか,どういう領域のものを作っていくかといったところを,いつも考えています。
仕事を続けていると,あるスパンの中で見るべき製品というのは変わってきますので,そのつど勉強はします。実際に製品を売りに行ったりすることもあるので,そのときは当然お客さんと話をするのですが,そうするとお客さんが何を求めているかがわかるんですよね。その両面の積み重ねでこれまでやってきました。
昔は,作ったモノをお客さんにどう使ってもらうか,というのを重要視していたのですが,やはりそれだけではダメで,お客さんに使っていただくためには,どういうモノを作らなければいけないか,という視点が必要です。マーケティング的な視点ですね。

「マーケティング」の本当の意味を知って

その視点を磨くため,吉羽さんは仕事の傍ら早稲田のビジネススクールに通い,MOT(技術系のMBAに相当する資格)を取得しました。そうして培った知識や仕事の経験を元に,製品企画とマーケティングを担う専門部隊の立ち上げに動きます。
はじめは自分がやっていること,やろうとしていることが何かわからなかったんですよ(笑)。で,今から7,8年前,2000年ごろに「マーケティング」という言葉の本当の意味を知ったんです。ちょうど社内でマーケティングの講習があって,そのときに「マーケティング=売ること」じゃなくて「売るための仕組みをつくること」だということに気づきました。ああなるほど,自分がやりたいのはそういうことなのか,というのがわかって,それから本格的にマーケティングの勉強をしはじめました。
その延長線上に,現在のマーケティンググループの立ち上げがあるんです。2年前のことです。ちょうど世の流れもそうなのですが,実際にお客さんと話をすることでマーケットのニーズを吸い上げることが,社内でも重要視されるようになってきたんです。そのためには,技術とお客様の視点の両方を常に考えなければいけない。
今はそのグループのリーダーをやっています。ですが,大変ですね(笑)。実際にやり始めようとすると「言うは易く行うは難し」です。コンシューマ系だと,ほかにやっているところもあるので参考になるのですが,ビジネス系の,企業相手の商品だと,なかなかやれることも少なくて…。たとえばあるお客さんから「こう作ってよ」と言われて1つ1つ開発に持っていっても,対応できませんよね。お客さんもいろいろいますし,今日希望上げて明日できるってものでもないですから。それに,お客さんが言ってることが全部やるべきことなのかといえば,そんなことはない。それをどう咀嚼して反映させていくか,というのが難しいところです。その点は試行錯誤ですね。

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こうして発足したマーケティンググループの活動の成果を生かして作られたのが,WebSAMの最新バージョンであるWebSAM Ver.7です。Ver.7のコンセプトに「製品のシンプル化」がありますが,それを推し進めるにもマーケティングの視点が役立ちました。
もともとWebSAMっていうのは多くの製品の固まりで,全部で120以上もあるんですよ。なぜこうなったかというと,運用管理の分野っていうのはメインフレームのころからあって,はじめはサーバの管理だとかネットワークの管理だとか,1つの機能があればすむようなものだったのですが,この10年くらいでオープン化の流れに乗って,いろんな機能が爆発的に出てきた。これは各社さん同じだと思います。
それで何が起こるかというと,同じ機能が複数の製品に載っていたり,同じデータをもっているのにまったく違うところで管理されていたりといったことが起こるんです。微妙に似ているんだけど少し違うというものができてしまう。
こうした状況を何とかして製品の作りをシンプルにしたい,という希望はあったのですが,では120以上あった製品をできるだけまとめていく際に,どれを使ってどれを除けば良いのか? これをお客さんの声を聞きながら作っていきました。できるかぎりお客さんの声を反映して機能を統合してわかりやすくしています。

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