インタビュー

LINE株式会社CTO,Park Euivin氏に訊く~“CLOSING THE DISTANCE.”を支えるカルチャライゼーションとエンジニアの実力

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9月末に開催されたLINE株式会社主催の技術者向けカンファレンス「LINE DEVEROPER DAY 2016」。国内外から多くの来場者を集め,盛会のうちに閉幕しました。今回,カンファレンス中に,同社CTOのPark Euivin氏に個別インタビューをする機会を得たので,その模様をお届けします。

LINE株式会社CTOのPark Euivin氏。キーノート直後に改めて同社の開発に対する考え方を語ってくださいました

LINE株式会社CTOのPark Euivin氏。キーノート直後に改めて同社の開発に対する考え方を語ってくださいました

LINEの開発体制~チームであること,多様な経験を積むこと

まずはじめに,6ヵ国にまたがる開発拠点について,現在どのような開発体制を取っているのか,LINEとしての取り組みについて伺いました。

Park氏:

現在LINEには,日本(東京・福岡)をはじめ,韓国,中国,台湾,そして,あらたにタイやインドネシアを加える予定で,アジア6ヵ国に開発拠点を展開します。

まずCLOSING THE DISTANCE.を実現すること,これが共通の考え方としてあります。そして,どの国で開発するにしてもサービスに関わることはすべて共有する”,これもLINEの中で徹底しています。

こうした前提のもと「プロジェクトとして動く」「開発者自身に多様な経験をしてもらう」と言った点がLINEならではの特徴ではないでしょうか。

プロジェクトとして動く,というのは,プロダクトやサービスでも,機能的なものでもすべて組織横断型の「プロジェクト」としてまとめ,そこにエンジニアがメンバーとして参加するということです。

多様な経験をしてもらうことについては,たとえば,LINEのように多様な国・地域で使われているサービスに関わる場合,日本以外の国に向けた遠征隊をつくり,そこに参加して,現地で通信環境や使用状況を調査してもらうと言ったことです。この遠征隊にはもちろん新人も参加する場合があります。

こうした経験を積んでもらうことで,エンジニア自身が持っていた経験の外側に,実は異なる環境や価値観があることを肌で感じることができるからです。すなわち,機能以外の部分,その国・地域の社会であったり文化であったり,その点をエンジニア自身に意識してもらいたいからです。私たちはこの「カルチャライゼーション」を強く意識したサービス開発を心がけています。

大事なのは英語ではなく,実力

LINEは今,世界4ヵ国に開発拠点があり,各々の国のエンジニアがLINEおよびLINEに関連するさまざまなプロダクト・サービスの開発に関わっています。しかし,そこには国や地域を超えた,社会や文化を意識した開発体制,Park氏が言う「カルチャライゼーション」を大切にしていることがわかりました。

一方で,エンジニア同士のコミュニケーションはどのように取っているのでしょうか? 情報共有や組織づくりを含めた点と併せて伺いました。

Park氏:

経験の多様性を大切にすることと同時に,私たちが大切にするのは当然ながらエンジニアの実力,すなわち開発力です。その開発力を最大限発揮するためには,サポートは惜しみません。

お話に上がったエンジニア間のコミュニケーションについては,同国のエンジニアであれば母国語で行えますが,当然それ以外の言語も必要です。この点については他社と同様に英語が使われることが多くあります。そして,何よりもエンジニアにとっての共通言語はコードだと思っています。

ただし,私たちは「英語が話せること」はそれほど重要視していません。私たちが目指しているのは「英語を話すこと」ではなく,「エンジニア同士がコミュニケーションを図ること・意思疎通をすること」であり,その結果としての「質の高いサービス・プロダクト」だからです。

ですから,どちらかと言うとその国のネイティブの言語を大切にし,もし,他の言語体系の人とコミュニケーションが図りづらいのであれば,その部分を会社がサポートする,ということもあります。通訳であったり,外国語の教育サポートであったり。

繰り返しになりますが,私たちはサービス開発が主目的ですので,最も重要視するのは,エンジニアの力,開発力です。

世界を目指す企業として英語力・英会話力を大切にするというのは,とくにIT/Web企業ではよく耳にしますが,LINEではその部分はもちろんのこと,何故英語が必要なのか,その本質としてのコミュニケーションを意識し,もっとシンプルに開発しやすい環境づくりを目指していることが伺えました。

あたりまえですが,英語も手段の1つです。その点を企業が理解し,エンジニアを含めた社員ときちんと共有している点も,LINEならではの特徴ではないでしょうか。

chatobotをはじめとした人工知能に関して

今回のLINE DEVELOPER DAYのメインの発表は「bot」,具体的にはLINEプラットフォームにおけるchatbotに関する話題について多数取り上げられました。また,それを取り巻く人工知能について,LINEとしてどのように考えているのかを伺いました。

Park氏:

今回,私たちが発表したLINEのbotの方向性には3つの特徴があります。1つは「グループでの利用」,1つは「Webとのシームレスな連携」,最後に「プラットフォームとしての可能性」です。

まずグループとしての利用。これまで多くのchatbotは,1ユーザに対してchatbotが対応する,いわゆる1対1のものがほとんどでした。しかし,今回発表したAPIでは,LINEグループ内でchatbotが利用できるようになります。人間と人間の会話,そこに自然に入ってくるchatbot,こうしたコミュニケーションが,また新しい価値を生み出すと考えています。

次にWebとのシームレスな連携についてです。こちらもキーノートで紹介したように,基本的にはLINEアプリ内でのやりとりが前提になる一方で,現在,世の中にある多数のWebサービス・Webアプリ,たとえば予約サイトなどとシームレスに利用できるようにしました。これにより,すでにユーザが慣れているWeb上でのアカウント管理など,ユーザに新たな学習コストを押し付けることなく,LINEとWebの連携からchatbotの便利な部分だけを体験してもらえるようになります。

最後にプラットフォームとしての可能性です。LINEには今,コミュニケーションツールとしてのLINEに加えて,LINE PayやLINEポイントなど,決済に関するさまざまな機能が用意されています。こうしたLINEを中心とした,「LINEスマートポータル」を実現するうえで,今回発表したbotに関する新展開が,その価値をさらに高めると信じています。

また今後展開していく新しいサービスにも,chatbotを活かしたものが続々と登場する予定です。

インタビュー後,同社が新入社員向けに配布する「HANDBOOK FOR NEW EMPLOYEES(写真右)」について説明してくださいました。LINEの開発について,体系的にまとまった冊子となっており,まずこれを読むことがLINEの開発者の第一歩となります。

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日本のエンジニアに期待すること

最後に,日本のエンジニアたちに期待することを伺い,メッセージをいただきました。

Park氏:

キーノートでも発表したように,今回のchatbotに関する新展開の発表と合わせて,「LINE BOT AWARDS」を開催いたします。これは,LINEのchatbotを使い,エンジニアの皆さんのアイデアと実装力により,今までにない新しいサービスやプロダクトが生まれることを期待して開催するコンテストです。

私たちLINEとしても日々新しいサービス,質の高いプロダクト開発に取り組んでいますが,1つの企業でできることには限界があります。そこに,日本をはじめ多くの国のエンジニアの皆さんが持つ叡智を集結してもらい,自分たちだけでは考えられない「未知の価値」を生み出してもらえたら大変嬉しく思います。

LINE BOT AWARDS
https://botawards.line.me/

最後に,私が今,エンジニアの皆さんにお伝えしたいことは「基本を大切にすること」,そして「挑戦をしてもらうこと」です。

先ほど私はLINEのエンジニアには多様な経験をしてもらうと話しました。経験を積むことは非常に大切です。しかし,誤解をしてほしくないのは経験を積むことだけが目的ではないということです。そうならないためにも,まず,しっかりと基本を大切にすることを忘れないでほしいです。基本を身に付けることは,新しい経験を積んだときに,何が新しくて何が同じなのか,そういった判断ができるようになるからです。

そして,何事に対しても挑戦する意識も持ってもらいたいです。インターネットの世界は日進月歩で進化・変化していますので,その中で1つのことにとどまらず,興味を持ったことであれば,ただ考えているだけではなく,まず挑戦すること,その先に新しい価値が生まれてくると思っています。

先ほどのLINE BOT AWARDSなど,これからたくさんのエンジニアの皆さんからどのような新しいものが生まれてくるのか,私自身ワクワクしています。

――ありがとうございました。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業部電子出版推進室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部に配属。現在,電子書籍を考える出版社の会の事務局長やWebSig 24/7のモデレーターを務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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