「Agile Conference Tokyo 2010」で見た日本のアジャイル開発最前線

#4 トークセッション「アジャイルと大規模開発,品質,そしてコスト」

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セミナーの最後に開催されたトークセッションでは,アジャイルに関しての研究報告に続き,アジャイルについて,品質や大規模開発,コストなどの課題をパネラーがそれぞれの立場から回答しました。

アジャイル開発QIMP研究会研究報告

第1部のアジャイル開発QIMP研究会研究報告発表について,研究会事務局を務めるテクノロジックアートの代表取締役である長瀬嘉秀氏から,研究報告の概要が紹介されました。

長瀬 嘉秀 氏
(⁠⁠株⁠テクノロジックアート 代表取締役)

長瀬 嘉秀 氏((株)テクノロジックアート 代表取締役)

長瀬氏は「2009年10月から4回にわたり,メーカーやSIer,製品ベンダーなどの有志により議論された『アジャイル開発QIMP研究会』の成果報告をまとめました。大規模アジャイルプロジェクトにおける課題への対応策,課題解決の考え方を検討し,非常に踏み込んだ内容になっていますので,アジャイル開発をこれから始める方や,導入を検討している企業,担当者方などにとって大いに参考になると思います」と述べました。具体的な内容はダウンロードサイトからも閲覧できるのでぜひ見てほしいと語りました。

研究会成果報告書ダウンロードサイト

⁠株⁠テクノロジックアート
URL:http://www.tech-arts.co.jp/news-and-topics/press-releases/20100419.html
⁠株⁠オージス総研
URL:http://www.ogis-ri.co.jp/news/g-01-00000213.html

アジャイル開発の3つの課題

続けて行われた2部のトークセッションでは,長瀬氏が進行役を務め,登壇者はThoughtWorks社のJez Humble氏,独立行政法人 情報処理推進機構の松田晃一氏,日本アイ・ビーエムの榊原彰氏,日立システムアンドサービスの英繁雄氏,マイクロソフトの長沢智治氏,NECソフトの飯田治行氏の6人。それぞれの立場からアジャイルについて現在行っている取り組みやアジャイル開発についての考え方を,自己紹介と合わせてスピーチし,トークセッションがスタートしました。

トークセッションの模様

トークセッションの模様

アジャイル開発で品質は向上するか?

最初のテーマは「アジャイルで開発すると品質は上がるのか」という『品質』についてでした。

Jez Humble氏が口火を切り,⁠日本はウォーターフォール型の開発で品質を担保できる稀有(けう)な存在といえます。アジャイル開発は,細かいチェックを繰り返し行い,問題があればすぐに回帰して修正ができるのが大きなメリットです。チーム全員が品質をコミットすることで品質向上が図れますし,繰り返しの作業の中で迅速にバグもつぶせるため,ムラなく質の高いものを開発できると考えます」とアジャイルの品質への考えをアピールしました。

Jez Humble 氏
(ThoughtWorks Inc. Build and Release Principal)

Jez Humble 氏(ThoughtWorks Inc. Build and Release Principal)

続けてコメントした松田氏は,⁠ウォーターフォール型開発では,日本は欧米と比較しても品質は非常に高水準だといえます。一方,アジャイル開発はベストプラクティスの集合ともいえますが,研究会などの報告を見てもまだエンジニアリングと呼べるまでには至っていないのが現状のようです。そういった意味からもアジャイルによる開発で高品質なものを作り出すことについて,疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか」と,まだ普及の途にある現状を踏まえた意見を述べられました。

榊原氏は「やるべきことをやれば品質は上がる」と前置きした上で,⁠ウォーターフォールとアジャイルではリスクヘッジのポイントが異なります。アジャイル開発で重要なことは,機能ごとに『スモールリリース』を繰り返し行うことです。これにより,リスクヘッジができ品質が向上できます」と述べました。

松田 晃一 氏(右:独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター 所長)⁠
榊原 彰 氏(中央:日本アイ・ビー・エム⁠株⁠ グローバル・ビジネス・サービス事業 CTO IBMディスティングイッシュト・エンジニア 技術理事)

松田 晃一 氏(右:独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター 所長),榊原 彰 氏(中央:日本アイ・ビー・エム(株) グローバル・ビジネス・サービス事業 CTO IBMディスティングイッシュト・エンジニア 技術理事)

品質のポイントを確認という見地から捉えた英氏は,⁠品質は確保するには,ユーザ確認を早く行えることが重要です。より早く確認まで行えるアジャイルは,繰り返しテストを行い,再構築も容易にできます。テストの作業量と品質はイコールではありませんが,ウォーターフォールに比べて,アジャイルの方が品質については優れていると思います」との見解を示しました。

エバンジェリストの視点から,長沢氏は「作る時の品質と,でき上がったものの品質は別物です。日本ではいいものができるという確信があれば,これまで培ってきたウォーターフォールの方がやりやすいでしょうし,無理に変える必要もないと思います。そうでない場合は,確信を持つためにアジャイルを使うことが役に立つこともあります。ソフトは建築と違い,でき上がった後でも修復が可能です。最後に直すのではなく,小さな段階で修正することが品質向上につながると思います」と比喩を用いながら,品質のポイントを上げました。

飯田氏はプログラムを行う現場の意見として,⁠品質の中には操作性も含まれていますが,それは机上では分かりません。作って,使って,直すといった作業が必要ですので,繰り返しできるアジャイルは成果があるといえるでしょう」と述べました。

こうしたさまざまな意見が出た結果を受け,長瀬氏は総括して「ウォーターフォールは工程を踏んで,一方のアジャイルは短期開発を繰り返すことでともに品質を確保しています。アジャイルのチームの中には品質を担保する人が含まれているケースもいますが,より明確に,品質に気をつけていくことが重要です」と結びました。

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