「エンジニアの未来サミット」レポート

エンジニアの未来サミット:速報レポート

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2008年9月13日(土),大手町野村ビルにあるパソナテックセミナールームにて,エンジニアの未来サミット((株)技術評論社主催,(株)パソナテック協賛)が開かれました。Ustream.TVによる中継の他,IRCチャットのログを利用することで,閲覧しているユーザからのコメントを受け付けるなど,新しい試みを導入したイベントです。

第一部:アルファギーク vs. 学生-エンジニア業界の過去・現在・未来,そして期待と現実

13時40分より第一部の「アルファギーク vs. 学生ーエンジニア業界の過去・現在・未来,そして期待と現実」がスタート。小飼弾氏(ディーエイエヌ(有)),ひがやすを氏((株)電通国際情報サービス),よしおかひろたか氏(ミラクル・リナックス(株)),谷口公一氏((株)ライブドア),伊藤直也氏((株)はてな)の5人のアルファギークと,田村健太郎氏(一橋大学),源馬照明氏(名古屋大学大学院),益子謙介氏(芝浦工業大学),新井貴晴氏(芝浦工業大学)の4名の学生によるパネルディスカッションが中心です。

第一部の模様

第一部の模様

自己紹介とITのセグメント分け

小飼氏の進行により,まずは自己紹介と今回のサミットが開かれた経緯を説明。企画・発案者のひが氏は,はてなキーワードで話題となった「泥のように働く」などの例を挙げつつ,「暗いイメージが先行していますが,本来のIT業界はばかりでもなければばかりでもない場所。その事を現場の人間としてざっくばらんに話せれば」と語りました。参加者の大半がIT業界従事者という中,「ITと一口に言っても,さまざまな立ち位置があるからそれを確認しておくべき」というよしおか氏の提案から,職種のセグメント分類,パネラー自身の分野確認ヘ。パネラー諸氏からは「これだけ立場が違うから,発言に食い違いが生じる場合があるかもしれないね」と笑いを交えた声が上がります。

IT業界ってどんな所?

第1の質問は「IT業界ってどんな所?」。「技術者は10年泥のように働け」と言われるようなイメージは本当なの? という問いがパネラーに投げかけられました。「泥」とは自分の作業に光の当たらない時期,大枠で下積み時期のこと。ネガティブ面を誇張しすぎだという意見が多い中,伊藤氏から「自分が身を置く業界を知って十分な製品を作るには,どんな優れた技術があっても多少の下積みが必要という意味も含まれているのでは? 個人と会社ではプログラミングの作法も違うし,会社に入ればグループで作業するためのルールも学ばなければなりません。10年は言いすぎですけど,ある程度の下積み期間は必要だと思います。僕自身,就職した当時は何もできなかったので‥‥」という発言が。やはり多少なりとも,イメージ先行の状況ではあるようです。

エンジニア35歳定年説

第2の質問は「エンジニア35歳定年説」について。大卒で10年下積みをしたら3年しか陽の目を見られないのかという小飼氏に,現時点で35歳以上のひが氏とよしおか氏は「とくに意識する必要はないのでは」との回答でした。35歳以下の谷口氏からも「コード書きが好きではない人たちが早く管理職になりたい,と作った言葉なのでは? それがコード書きが好きなエンジニアからするとネガティブに聞こえるのかもしれないですね。でも本当に好きならやれる場を探しながら続ければいいのでは」との意見が聞かれました。

この質問中に出た「プロダクトに興味があるからコードには興味がない」(田村氏)「マネジメントの上で知っておきたいという程度」(益子氏)という意見に対し,伊藤氏が「新たな物は技術レベルから生まれてくることも多いです。だから自分で何かを作り出したいなら技術はきちんと知っておく必要があるんじゃないでしょうかね」とアドバイスする場面も。

学生パネラーで唯一「コードを書くのが好きだからやっているだけであって,それを外からいろいろ言われるのは不快ですね」と語ったのは源馬氏(名古屋大学大学院)。

アルファギークとは?

第3の質問はまさに「自分のやりたい事をやっている」人,「アルファギークとは」。でもそう呼ばれている自身はどう思っているのでしょう? 「最近は学生時代からオープンソースソフトで有名になって,泥をすっ飛ばしちゃう人も多いよね」と小飼氏。企業に属しながらSeasarを開発,日本におけるアルファギークのオリジネイター・ひが氏の経験談を引き出すべくマイクを向けます。「自分はただプログラミングが好きなだけで,管理仕事も好きではなかったので会社評価はあまり良くはなかったですね。ただ,プログラミングを丸投げした案件の失敗例を見て,設計する人間がコードを書けないといずれ会社は傾くよとずっと言ってきたんです。そしてコードを書ける人間を育てようという流れが生まれつつあったところに,僕がSeasarを開発させた。それで言い分が認められて今みたいな立場になったんだと思います」。

また「SIerに所属するエンジニアでキャリアパスから逃れたい,マネージャになりたくないと思っているならプログラムで認めさせるべきです。オープンソースシステムは最も良い手段だから,積極的に取り組んでほしいですね」と自身の思いを語りました。会場からの「実際に会社の雰囲気は変わったか?」という質問には,「新入社員には半年のコードに関する研修をするようになったので,そういう意味では変わったと思います」とのこと。

その言葉によしおか氏も,「地道に自分のやりたいことをやって,周りを変えることに成功したひがさんみたいな例もあるから動く価値はあるよ」とコメントしていました。

マネージャの必要性について

「今マネージャが不足している状況だけど,マネージャになりたい人はどうするべき?」との問いには,伊藤氏が「メンバーの能力を引き出しつつ,製品開発にどう結びつけていくかを考えるのはマネージャの仕事です。見極めはエンジニアの技術を持っていなければできないですからね」とエンジニア上がりのマネージャ職の重要性を主張。企業として「しっかりしたマネジメント力のある会社はエンジニアもイキイキしていると思う」「マネジメントを含めた専門的な管理能力が重要」などの意見が上がりました。

日本のSIer,そして海外のIT業界

会場からの質問コーナー後,話は日本のSIerの職業形態や海外のIT業界の状況へ。ここでよしおか氏がインドやアジアの例を出し「日本の企業はもっと技術への誇りを持って,高めていく活動を意欲的にするべき」「経営者の認識を変えさせるくらい,技術者がすごいことをやってるんだと認めさせる活動をしているギークが日本には少ない!」と熱弁。エンジニアに少しでもいい環境を作るために,もっと自分自身で動いて変える活動をすべきと主張していました。

学生にとって望まれている情報とは?

後半,伊藤氏の学生側に対する「この業界の良さをアピールする上で,学生側にどんな情報を提供するといいんでしょうか?」という質問をきっかけに進んだ学生との意見交換。そこで出た「僕たちはおもしろい部分をアピールして,良い会社に人材を循環させる事でひどい企業を淘汰したいと思ってるんです。おもしろい会社だけを残せば,IT業界はもっと良くなるはずだと思ってこういう場に出てきるわけですから」という発言には,パネラーはじめ会場からも拍手が起こりました。

まとめ

最後はパネラー全員からのコメント。「現状に不満がある人は,自分のウリを見つけてそれを活かせる方向に進むべき」(谷口氏),「自発的な行動をしてほしい。もっとよく業界を知ってもらうために,月一回のひがやすを呑み会を企画しているので参加して」(ひが氏)などの言葉をいただきました。

討論がヒートアップした場面や,パネリストの主観によるコメントが強調し続けられた場面,そして「自己責任」における言及が多少強い傾向はありましたが,密度の濃い第一部となりました。

スポンサーセッション:パソナテック

第一部終了後,本イベントの協賛企業パソナテックによるスポンサーセッションが行われました。スピーカーをつとめたのは同社キャリアアドバイザーの室井啓臣氏。

まずご自身の紹介と経歴,そしてなぜパソナテックに入ったのかから話を始め,同社が今年8月に10周年を迎えたことなどをふまえて紹介し,派遣と正社員との比較などについて解説しました。

パソナテック 室井啓臣氏によるスポンサーセッション

パソナテック室井氏によるスポンサーセッション

著者プロフィール

木村早苗(きむらさなえ)

フリーランスライター。滋賀県出身。ギャラリー勤務,Webデザイン専門誌の編集を経て,現在はデザイン,ファッション,音楽,IT系など幅広い分野で執筆を行う。著書にWSE BOOKSシリーズ『社内ブログ導入・運用ガイド』(技術評論社)。お笑い&音楽好き。

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