「FITC Tokyo 2010」詳細レポート

#4 切通伸人氏「アメーバピグ for Androidができるまで」& 中村勇吾氏「アクチュアル デザイン」

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中村勇吾氏「アクチュアル デザイン」

tha ltdの中村勇吾氏は,世界で評価されているデザイナーの一人であり,Flashのみならず,CMや映像作品も多く手がけている。

写真6 中村勇吾氏

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「いろいろ作ってるけど,アニメーションが好きだな」と語る中村氏は,木が風に揺れるのを例に上げ,⁠木が揺れていることを大人は風圧が関係しているということは理解できる。しかし,子供はそうだろうか?」とする。また,⁠Twitterやインターネットも同じで,仕組みを知っているので利用できるが,インターネット以前の人がこれをみるとなにか分からないかもしれない」とし,アニメーションのデザインとは,⁠動き,それ自体」「その背後にある原動力,文脈」の関係を操作することであると述べた。

アニメーションとインタラクティブの融合の面白みは,どこにあるのだろうか。中村氏はその答えの一つを"関係の構築"にあると語る。

いくつか制作したスケッチ作品を紹介しながら,ユーザーの操作がそのアニメーションやコンテンツにどういった影響を与えていくか,そしてユーザー自身が徐々に理解していくことで,その世界に飲み込まれていく。この考え方は,中村氏の作品の随所に見られるアプローチである。

その作品の一つがMORISAWA fontpark 2.0だ。このプロダクトはモリサワのフォントを一つの物体として捉え,実際の机にあるもののように動かしたり,直感的に操作して新たなモノを作るというもの。ユーザーが作った作品が,過程レベルで保持され完成までを忠実に再現する。⁠人がものを作っている過程は面白い」と中村氏。

写真7 MORISAWA fontpark 2.0

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また,関係の構築には各々が関連している必要はない。一見関係のないものを関係づけることで,予想外の効果を生み出すという。そしてそれは一般的に,コラージュと呼ばれている。

シュールレアリズムや寿司からのカリフォルニアロール,イタリアのパスタから発想を得た明太子パスタなどを例にあげ,⁠こうした手法はあらゆるジャンル,あらゆる業界を問わずに行われている」と解説。他業界でやりつくされつつはあるものの,インタラクティブ表現ではまだまだ未成熟であることから,氏はこのアプローチをアルゴリズムやスクリプティブに置き換えてコラージュしているという。

写真7 コラージュについて語られた時のスライドの一枚

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そして,⁠コラージュに生じる差異は常識から生まれる。人になにか違う,なにか新しいと思わせるのは基準点が重要」だと語る。それには,当たり前をいかに把握し常識を理解した上で,少しずらすことで,人にちょっとだけ何か違うと感じさせることだいう。実質的に新しいものでは一般的な理解を得にくいという理由もあるそうだ。

氏によれば,⁠自分が作っているものをどう呼ぶかで,デザインは変わる」という。

氏の代表的な作品としてWonderwallのオフィシャルページを「WEBサイト面(ヅラ)したアニメーション」と紹介。自分の中の作品対するイメージを定義付けすることで本来の価値観にとらわれない作風が可能になる。

最近の作品としてWonderwall ScreenSaverの紹介も。個展が行われるということで,新たに「タイポグラフィっぽいWEBサイト」をイメージしている。一見ただの文字列のように見えるが,その色みは,Wonderwallここの作品から採られている。で閲覧できる。個々の作品自体はオフィシャルと同じもの,同じデータベースで開発されている。氏によれば「根っこは同じの,バージョン違い」という。

写真9 Wonderwall ScreenSaver

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質疑応答では,氏の「音に対する理由付け」について問われた。回答で,表現と音を結び付けるには"デザインの一部"にする方法と"感覚とシンクロ"させる方法の2通りがあると言及された。前者をWonderwallでは「滑らかに見えるものでも,音が無骨であればそのように見えてしまう」と説明している。また,後者ではiidaを例にあげる。完全に絵とシンクロさせるのではなく,わざと映像と1コマ分遅らせたり,その逆に早めることでまったく逆の印象になり,"ケースによって映像と音の主従関係を意識"していることが強調された。

最後に,⁠関係のデザインとは,プログラミングやアルゴリズムが持っている関係と表に出ている関係をいかにvividに出すか」であると締めくくった。

写真10 iidaのサイト制作時に使用された,クライアントとやり取りされたファイルを示しながら,制作進行についても語られた

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著者プロフィール

加茂雄亮(かもゆうすけ)

株式会社ロクナナにて,ActionScriptを伴うFlashコンテンツや,AjaxコンテンツなどRIA開発に従事するフロントエンドエンジニア。テクニカルライターとしての一面を持ち,WEB・雑誌・書籍、媒体問わず執筆。また,イベントやセミナーでの講演など,精力的に活動している。

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