RubyKaigi2008 スペシャル★レポート

RubyKaigi・アンド・ナウ――日本Ruby会議2008運営委員長の個人的なふりかえり

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RubyKaigiの課題

RubyKaigi2008は新しいRubyKaigiのあり方を探る試みという点では一定の成果を出せましたが,一方で課題も残されています。

  • 開催規模と運営負荷
  • 多様性と文化摩擦
  • RubyKaigiという名前の重み

RubyKaigi、RejectKaigi等の全日程終了後のスタッフふりかえり

RubyKaigi、RejectKaigi等の全日程終了後のスタッフふりかえり

開催規模と運営負荷

スピーカーやスタッフも含めたRubyKaigiの開催規模は年々拡大しています。2006年は約200名,2007年は約400名,2008年は約600名でした。今後,規模の拡大を目的に拡大するつもりはありませんが,⁠参加してみたいと思った人がチケット完売で悲しい思いをする」という事態をなるべく減らしたいと考えています。そのためには,余裕を持った規模での開催が望ましいのですが,現状の素人を中心にした運営体制には限界を感じ始めています。

過去のRubyKaigiは「次がなくても今回が最高のものにしたい。継続性を求めて小さくまとまるよりは,二度とできなくてもベストを目指すべき」という方針で取り組んできました。そのため,基本的には会期中に次回の開催を考えることはしていませんでした。ところが,RubyKaigi2008のクロージングでは,高橋征義さんから「2009年のいつか」⁠日本のどこか」で開催されることがアナウンスされました。これはRubyKaigiの歴史としては大きな転換点です(実際には何も決まってませんが……)⁠

そろそろ運営の体制やスケジュールなど,継続的な開催を可能にする仕組みを整備していく機が熟しつつあるかなと考えています。また,規模が大きくなると,扱う金銭の額も大きくなります。この点については,RubyKaigi2008で新しく主催に迎えたRubyアソシエーションとの連携を深めていくことで対応したいと考えています。

多様性と文化摩擦

Rubyの認知度の高まりや開催規模の拡大,Ustream.tvでの中継といったさまざまな要因によりRubyKaigiの参加者層が多様化したことで,バックグラウンドの異なる人たちとの間で文化的な摩擦が起こるようになってきました。yuta4839さんのエントリは今回の文化摩擦を象徴しています。ここでも,私にはDave ThomasがRubyKaigi2007の基調講演で残した言葉が思い起こされます。

  • 「Protect what we have(自分たちを大事にしつつ)⁠
  • 「But learn from them"(彼らに学ぼう)⁠

「彼ら」とはこれからRubyと,Rubyの文化に触れることになる人たちのことです。RubyKaigiについて「内輪受けに過ぎる」という参加者からのフィードバックは初開催のRubyKaigi2006から毎年寄せられていますが,Rubyist Magazineのキャッチに倣っていえば,RubyKaigiはRubyistのRubyistによるRubyistとそうでない人のためのイベントです。Rubyistが自分たちの所属するコミュニティでの「年に一度のお祭り」を楽しむとともに,Rubyコミュニティ外の文化を背景に持つ人たちとの間で,お互いがお互いを尊重しあえるようになるといいなと思っています。

RubyKaigiの会期運営中のスタッフのモットーはMatz is nice and so we are nice.です。これはMINASWANと略されることもある,英語圏のRubyコミュニティで生まれた標語です。⁠Matzがイイ奴だから,僕らもイイ奴なんだ」という標語に,⁠優しい独裁者」モデルで開発されているRubyコミュニティらしいユーモアを感じて,私は気に入ってます。⁠Matz is nice and so we are nice.」――RubyKaigiがそんな気持ちに満ちたナイスな場であり続けられるようにしたいと考えています。

RubyKaigiという名前の重み

3年間続けた甲斐もあって,RubyKaigiは国内のみならず海外のRubyコミュニティからも一定の認知度を得るようになりました。

たとえば,最新版スナップショットである1.9.0-2はRubyKaigi2008をリリース目標としてアナウンスされましたruby-core:17162)※2)⁠Rubyの開発にとってマイルストーンとなるイベントとして認知されることは,運営している身として素直にうれしいです。ちなみに,JRuby 1.0のリリースアナウンスはRubyKaigi2007で行われました

海外のコミュニティにRubyKaigiはde-facto authoritative Ruby conferenceとして紹介されています。ほかにも,コンポーネントスクエアの田島さんの尽力もあってInfoQのニュースとしても取り上げてもらっていますその1その2)。

一方で,青木峰郎さんから「Rubyリファレンスマニュアル刷新計画」の枠について,文字通り忌憚のない意見123をいただいたことは襟を正す機会となりました。誤解や行き違いはあったにせよ,青木さんにこうした感情を抱かせてしまったのは事実ですし,同時にこれはRubyKaigiの運営側に対して「日本Rubyの会主催のイベントである」という自覚を持て,というメッセージだと受けとめています。

今後のRubyKaigiでは,こうした周囲からの期待や注目に恥じない運営を目指すとともに,当初からのモチベーションである「運営している自分たちも楽しむこと」を忘れずにRubyKaigiを運営していきたいと考えています。これからもよろしくお願いします。

※2
実際のリリースは1.8系のセキュリティ修正と一緒にアナウンスされているruby-list:45099)ので気づかなかった方もいるかもしれません。

著者プロフィール

角谷信太郎(かくたにしんたろう)

(株)永和システムマネジメント,サービスプロバイディング事業部所属プログラマ。「『楽しさ』がシステム開発の生産性を左右する」と信じてRubyによるアジャイル開発を現場で実践するテスト駆動開発者。目標は達人プログラマ。好きな言語はRuby。好きなメソッドはextend。著書に『アジャイルな見積りと計画づくり』(共同翻訳),『JavaからRubyへ』(翻訳),『アジャイルプラクティス』(共同監訳),『インターフェイス指向設計』(監訳)。

URLhttp://kakutani.com/

著書

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