RubyKaigi2009 スペシャルレポート

Ruby会議2009 2日目レポート[更新完了]

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コミュニティアピール

まつもとさんの基調講演の前に,様々な地域で活動するRubyコミュニティによる,コミュニティアピールの時間が設けられました。

Ruby上海

Shanghai on railsという,中国で最大のRailsコミュニティです。 アピールの大部分を中国語で行い,会場を驚かせました。

Ruby札幌

RubyKaigi2009を,KaigiFreaksとして応援しているRuby札幌の紹介です。 Ruby逆引きレシピを出版し,ジュンク堂RubyKaigi店にてサイン会が行われます。 秋には,札幌Ruby会議02を準備しているそうです。

tokyu.rb

東急線沿線のRubyistが集まる勉強会です。参加者が少ないことを嘆いているそうですが,絶妙な掛け合いで笑いを誘っていました。

Rubyist 九州

地域Ruby会議の九州Ruby会議を開いたRubyist 九州の紹介です。 会場がいっぱいになるほど盛況だったそうです。 熱い九州を熱くアピールしてくれました。

Asakusa.rb

東京下町周辺で活動するコミュニティです。 かくたにさんやささださんなど,豪華なメンバーで活動しています。

Mitaka.rb

三鷹周辺,新宿より西側の地域で活動しています。 ⁠おいしいRuby」と称して,レストランなどを会場に勉強会を開いています。

Ruby勉強会@青森

RubyKaigiを応援するRuby札幌が応援する勉強会だそうです。 一年間続けられたことが嬉しいと述べていました。

Ruby Taiwan

台湾のRubyコミュニティです。 まだRubyConf Taiwanはないけど,いつかやります!と強くアピールしました。

toRuby

栃木の北部で勉強会などの活動を行っているコミュニティです。 勉強会では,dRuby本を写経しているそうです。

Engine Yard

Engine Yardは,Railsアプリケーションをホスティングするサービスをしています。 RailsやRubyの開発も強力にサポートしています。

ニコニコ動画:http://www.nicovideo.jp/watch/sm7670611

まつもとゆきひろさん「基調講演」

Rubyの作者まつもとゆきひろさんによる基調講演は,今回のメイン会場となる一橋記念講堂で行われました。

Ruby羅針盤

発表が始まるまで,タイムテーブルに記載された発表概要(と,スピーカープロフィールも)空欄のままです。発表が始まってようやく知ることになったこの基調講演のタイトルは「Ruby羅針盤」でした。RubyKaigi2009のテーマ「変わる/変える」を受けて,⁠Rubyは,そして我々は今どこにいるのか」⁠これからどこへ向かい,どう変わろうとしているのか」という観点での発表でした。

「皆さん,21世紀です!」と呼びかけ,気付けば21世紀になってから10年が経とうとしている今年,2009年を,まつもとさんは「プログラミング黄金時代」と言い表しました。80年代にLisp,90年代にRubyが,なかなか評価されないでいた苦労の時代を思い出し,ようやく良い時代になったと喜びを表現していました。

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「アイデンティティ」⁠

基調講演ひとつ目のトピックは,個人の「アイデンティティ」です。

「まつもとゆきひろの最も強いアイデンティティはRuby作者だろう」という意見に,賛同しない人はいないでしょう。⁠寝坊して慌ててチェックアウトして名札を忘れても,顔パスでなんとかなったのはRubyのおかげ」と言って会場を沸かせました。他のアイデンティティは,よくご自身を説明するときに言われる「言語オタク」「プログラマ」⁠文筆家」⁠Blogger」⁠Twitterユーザ」を並べていました。学生時代の得意科目は国語で,数学は苦手だったと語りました。

「文筆家」としての活動といえば,⁠まつもとゆきひろ コードの世界』ですね!本の表紙の写真については「なんでこんなことに…」とぼやきながらも,壇上であのポーズを取ってくれていました。

「アティチュード」

ふたつ目のトピックは「アティチュード」です。Rubyの作者としてのまつもとさんが「どういう態度でいるべきか」という話をされました。

立場上,他のプログラミング言語のコミュニティから厳しい意見をぶつけられたり,感情的な批判があったり,苦労も多いとのこと。そういった状況に対しての,まつもとさんの行動指針に関する話です。出てきたキーワードは「感謝」⁠酸っぱいブドウ」⁠割れ窓理論」⁠責任」でした。著者の印象に残っているのは「責任」のところで語られた「自分のパワーを最大化するためにRubyをデザインしている」という信念でした。これがRubyの魅力の源泉となっているのだと感じました。

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原則

まつもとさんが「原則」として掲げた言葉です。

  • フェアである
  • 自己責任
  • 信頼する

「Rubyのコミュニティはフェアである」とし,不満を遠慮なくぶつけられるプロジェクト,コミュニティを維持していくことを誓うと,はっきりと述べていました。⁠場合によっては,私がRubyのコミット権を奪われることもある」と言って会場から大きな笑いが起きましたが,それくらいにフェアであるべきだと,強くアピールしました。

「自己責任」⁠信頼する」とは,道具を利用する立場であるプログラマに「枷をかけるのではなく,力を与える」という意図のものです。作る側も使う側も含めて,全体として最もパワーが大きくなるようにしようという考えは,先にお話があったRubyの設計方針ともぴったり合致しています。

未公開スタック

発表の後半には「未公開スタック」と題して,作成途中のものから,作成が完了しているものまで,手元にはあるがRubyの本体に取り込まれていない27個のスタックが紹介されました。

普段は見ることのできないものです。会場で見ていた参加者の皆さん,この中に魅力を感じるものはあったでしょうか。大きな声で「ほしい!」と叫べば,次のRubyに取り込まれるかもしれませんよ!

まとめ

発表の最後に表示されたまとめのスライドには,先述の3つの「原則」「継続する」が付け加えられていました。

「Rubyはよくagileな(変化の早い)言語だと言われるが,fragile(壊れやすい)とも言える」と語ります。確かに,前に進むために後方互換を切り捨てることは「壊れやすい」とネガティブに捉えられるかもしれません。しかし,まつもとさんは「変化しないソフトウェアは面白くない」と思いを述べ,これからもRubyの開発がアグレッシブに続けられていくであろう未来を想像させてくれました。まつもとさんの,変わらないRubyへの愛とともに,Rubyや,Rubyを取り巻くコミュニティは,これからも進化し続けていくことと思います。

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著者プロフィール

大和田純(おおわだじゅん)

ハンドルネームはjune29。RubyKaigi2009当日スタッフ(KaigiFreaks)。

ディスカバリーエンジン「デクワス」を開発・運用中のサイジニア株式会社勤務のWebクリエイタ。北海道出身。技術が人々の生活をどのように豊かにしていくかを考えるのが楽しくて,新しいものはどんどん日常に取り入れてみる。好きな言語はRuby。尊敬する漫画家は荒木飛呂彦先生,好きな擬音語は「メギャン」。

URLhttp://june29.jp/


白土慧(しらつちけい)

ハンドルネームはkei-s。RubyKaigi2009当日スタッフ(KaigiFreaks)。

ディスカバリーエンジン「デクワス」を開発・運用中のサイジニア株式会社勤務のWebエンジニア。札幌市出身。大学時代にWebと複雑ネットワークの楽しさを知る。人と情報のつながりを考えるのが好き。好きな言語はJavaScriptとRuby。好きな小説家は舞城王太郎。

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