3年半ぶりに東京に返ってきたYAPC~YAPC::Tokyo 2019

第4回YAPC座談会、Lightning Talks、そして、キーノート

いよいよYAPC::Tokyo 2019レポートの最終回です。今回は、座談会、Lightning Talks、クロージングキーノート、クロージング&懇親会の模様をお届けします。

これまでについては以下をご覧ください。

北海道、大阪、福岡、沖縄、リブート後のYAPCを支えたキーマンたちのトーク

最終回にあたってまず、ランチ前に行われた「北海道、大阪、福岡、沖縄のYAPCキーマンたちが勢揃い!YAPC座談会~リブート後のYAPCはどうだったのか?そして、新時代のYAPCはどうなる?」の模様をお届けします(本トークのレポートの文責は技術評論社・馮となります⁠⁠。

本トークは、リブート後に開催されてきた、北海道、大阪、福岡、沖縄の4地域のYAPC::Japanの実行委員長をパネリストに迎えた、ディスカッションスタイルで行われました。

左から北海道の@nagatani(永谷)さん、大阪の@nqounet(若林)さん、福岡の@debility(平田)さん、沖縄の@codehex(上川)さん。右端は司会の技術評論社 馮
左から北海道の@nagatani(永谷)さん、大阪の@nqounet(若林)さん、福岡の@debility(平田)さん、沖縄の@codehex(上川)さん。右端は司会の技術評論社 馮

YAPC::AsiaからYAPC::Japanに変わって最初に開催されたのが、2016年12月の北海道。このときは29年ぶりの大雪とぶつかり、開催自体も危ぶまれた中、スピーカや参加者を含め、多くの方たちが楽しみ、そして、記憶に残る初の北海道開催のYAPCとなりました。

その後、大阪、博多、恩納村と、それぞれの地域で、実行委員が地域色を出しながら開催されていた中、各実行委員長とも、開催の準備~開催後の対応まで非常に大変で苦しい部分は合ったとしながらも、異口同音に「それを補って余りある嬉しさ・楽しさが合った」とコメントしていたのが印象的です。

運営の観点では、歴史あるコミュニティイベントだからこその取り組み、意識が感じられた点が多々ありました。たとえば、運営スタッフの集め方として、普段から関係のある地域コミュニティとの連携や地元の学生を巻き込むことのメリット(コミュニティの交流やイベントの世代交代などにつながる⁠⁠、当日のタイムテーブルを考える上で、募集が集まらないことよりも集まりすぎたことに備えて多めの枠を用意しておく(会場やトーク数のあとからの調整は、増やすより減らすほうが対応しやすい)など、まさに舞台裏を経験している方たちの生の意見を聞く場となりました。

途中、開催中のYAPC::Tokyo 2019の実行委員長である@kfly8(小林)さんがいてもたってもいられなくRoom 1に現れ、現在進行中のイベント責任者として、飛び入り参加する一コマもありました。

飛び入り参加のkfly8さん。耳にはインカムをつけてイベントも運営中(笑)
飛び入り参加のkfly8さん。耳にはインカムをつけてイベントも運営中(笑)

5分厳守のLightning Talks

朝から続くイベントもいよいよキーノートを残すだけとなり、ここからは全員がホールに集まるLightning Talksです。LTという言葉の起源は2000年に米国で実施されたYAPCにあると言われており、YAPC::Tokyoにおいても5分を過ぎてしまうとドラを鳴らし、トークの途中でも強制的に終了するという方式が取られています。

ドラ担当は運営メンバーの一人papix氏
ドラ担当は運営メンバーの一人papix氏

今回のLTには6名が登壇されました。元内さんは企業ブースで開催されていたPerl6正規表現バトルの問題制作についてを、尾形さんはPerl入学式の2018年の活動報告を、aerealさんはnpmを使ったCPANモジュールの管理を、八雲アナグラさんはGo言語によるPerl1.0の実装を、門松さんは成長するプログラマーの探し方を、それぞれ発表されました。

LTのトリを飾ったmoznionさんは、AWS Lambda LayersでPerlを簡単に実行するためのApp::Perlambdaの公開について話しました。⁠非常に力強い名前」の通り、AWSでPerlを使おうとしている方々に勇気を与え、見事ベストLT賞を受賞しました。

ベストLT賞はmoznion氏が受賞
ベストLT賞はmoznion氏が受賞

Future Perl Community is You!

YAPCを締めくくるキーノートは、松野徳大さん(@tokuhirom)です。PSGIの発案者の一人であり、Amon2Minillaの生みの親でもあるtokuhiromさんは、⁠Perl Community への報恩感謝」というタイトルで自身とPerlコミュニティの関わりについて過去を振り返りました。

YAPC::Tokyo 2019のテーマでもある「報恩謝徳」にちなんだ内容でクロージングキーノートの大役を務めたtokuhiromさん
YAPC::Tokyo 2019のテーマでもある「報恩謝徳」にちなんだ内容でクロージングキーノートの大役を務めたtokuhiromさん

tokuhiromさんは学生時代はPythonでニューラルネットワークの研究をしており、Perlを使い始めたのは就職をしてからなのだそうです。新卒の会社ではとにかくすばやくサービスを作ることが求められ、また、作ったサービスが存続せずに終了してしまうことも多かったそうです。そんな環境でもモチベーションを維持するために、tokuhiromさんは、新しいサービスを作る毎に必ず新しいチャレンジをして、たとえサービスが終わっても得たものがあるように心がけていました。また、すばやくサービスを作るためにライブラリも多く開発していました。

その後、tokuhiromさんは冒頭に挙げたようなさまざまなOSSを生み出すわけですが、PerlのエコシステムであるCPANは「ちょっとしたものでもアップロード」してよく、Javaでは1,000行以上あるライブラリが多いのに対し、Perlでは100行程度のライブラリでも利用してもらえることから、CPAN Authorとしての活動が手近なところから始められるのは良い点であると述べました。

また、OSSに関わる理由として、⁠不満やバグがあるから貢献したい」のだとし、貢献の内容についても「コミュニティの一員であるという自覚を持ち、他人にそれを伝えるだけでも貢献」であるとし、気負いすぎる必要はないのだと参加者に説きました。

キーノートの終盤、tokuhiromさんが最近Perlを書いているのかに触れましたが、tokuhiromさんは複数の言語が使えることがいいことだと思っており、昔からPHPやPythonなどさまざまなカンファレンスへも登壇しており、Perlだけに思い入れがあるわけではないと述べました。それでも、Perlがもともと得意とするテキスト処理の分野では便利な言語で、正規表現リテラルであったり特殊変数$_、気軽に使える__DATA__セクションなど、Perlならではの便利な機能は他のスクリプト言語では代替できないとし、Perl本来の強みを生かして利用している様子が伺えました。

最後にtokuhiromさんと共にPerlを支えた歴代のPerl Hacker達の写真とともに謝辞を伝えたうえで、これからのPerlコミュニティを作るのは参加者であり、これからも引き続きPerlのコミュニティを支えてほしい、⁠Future Perl Community is You!⁠⁠、とキーノートを締めくくりました。

今回はもちろん、これまでのYAPCを支え、彩ってきたたくさんのPerl Mongerたちの写真とともに締めくくった
今回はもちろん、これまでのYAPCを支え、彩ってきたたくさんのPerl Mongerたちの写真とともに締めくくった

クロージング&懇親会

最後に、YAPC::Tokyo 2019の実行委員長を務めたkfly8さんによる、クロージングが行われました。今回、来場者は384名、29のトーク、30社のスポンサーと、たくさんの関係者とともに、イベントがつくられ、そして、参加されました。

YAPC::Tokyo 2019の実行委員長を務めた小林氏
YAPC::Tokyo 2019の実行委員長を務めた小林氏

kfly8さんは、久しぶりの東京開催、さらに、前回が2,000人の来場者規模であったことに触れながらも「自分たちはその規模感の参加者を集めるYAPCはできないかもしれませんが、多くの方たちの助けを借りながら、自分なりの今できる最高のYAPCを実現できたと思います」と、感謝の気持ちと自身の達成感に満ちたメッセージを述べました。

総勢37名のYAPC::Tokyo 2019のスタッフ
総勢37名のYAPC::Tokyo 2019のスタッフ

クロージングのあとは、同じ会場の別フロアに移動し、参加者、スピーカー、スタッフが一堂に会した懇親会が行われ、今回の感想、これまでの振り返り、これからのことなど、たくさんの交流が図られ、YAPC::Tokyo 2019の幕を閉じました。

和やかな雰囲気の中、最後までYAPCの魅力を体感できた懇親会
和やかな雰囲気の中、最後までYAPCの魅力を体感できた懇親会

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