未踏ソフトウェア創造事業 2006年度下期 並木・齋藤・高田・黒川 4PM合同成果報告会レポート ~開発の苦悩,完成の喜び~

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GPU上でのCIP法に基づく数値シミュレーション環境の開発(安藤英俊氏)

安藤英俊氏

安藤英俊氏

普通は3Dグラフィックスなどの処理に使われるGPUを,並列計算など他の目的に利用しようという手法にGPGPU(General Purpose Computation on GPUs)というものがある。処理によってはCPUよりも圧倒的に速く,将来的にもさらに高速化するので,最近注目を集めている。

本プロジェクトでは,流体計算などに利用される数値シミュレーション手法「CIP法」を,GPU上で行うもの。共同開発者の鳥山孝司氏がコア部分を実装し,安藤氏がGPUへの実装を担当したとのこと。

開発方針が明確で,GPUに比べて処理の遅いCPUとの連携はせず,処理はあくまでGPUに行わせることを追求した。また,可視化,設定のためのツールを先行して開発するなど,開発前から実用性を意識しているようだった。

デモでは,非常に滑らかに動作しており,本プロジェクトの完成度の高さが窺えた。2D/3Dのオブジェクトを障害物として配置したり,条件も細かく設定できるとのこと。3Dのデータは外部形状データを読み込むこともできる。

本プロジェクトの成果は,無償で公開予定とのこと。

デモンストレーションの動作画面

デモンストレーションの動作画面

「Requirements Driven Developer」の開発(毛利真克氏)

毛利真克氏

毛利真克氏

本プロジェクトは,システム開発における「要求駆動な開発」をサポートするツール「Requirements Driven Developer」⁠RRD)を開発するというもの。要求をモデル化し,ソースコードにする時間をできるだけ短くすることを目指す。

要求は,自然言語で記述できるのが大きな特徴で,顧客が見ても理解できるようになる。ある程度形式的なものだが,人間が自然に読めるものになっていた。また,たとえば「電話番号」だったら自動的に電話番号型にするなど,自動的に型を決定することも可能。これらの自然言語とモデルの結び付きや,型の判定などは,辞書によりカスタマイズできる。

また,このツールはEclipseのプラグインとして実装されており,開発現場に導入しやすいように配慮されている。

今後は,α版,β版を経て,2008年2月末には正式バージョンをリリースする予定とのこと。

ニューラルネットワークを応用したデータマイニングソフトウェアの開発(石原省平氏)

石原省平氏

石原省平氏

本プロジェクトは,株価などの膨大なデータをデータマイニングを利用して解析して今後の予測などを表示し,判断を下す材料とするソフトウェアを開発することを目指した。

プロジェクトの開始前に,ファンドマネージャへの聞き込みなどを行い,要求を明確にした。それによると,さまざまなアルゴリズムを手軽に利用して解析したいというものがあった。そのため,アルゴリズムや基本機能も含めてすべてモジュール化し,自由に取り替えられるようにした。ただ,このモジュール化の仕様の決定にはかなり苦心したとのこと。

発表前にトラブルがあったとのことで,残念ながらデモは見ることができなかったが,かなりの機能は完成しているようだった。

今後の予定としては,解析アルゴリズムの追加などを行う。また,結果のレポーティングの機能を充実させて欲しいという要望も強く,こちらにも注力したいとのことだった。


最後に,PMによる総評が行われた。採択プロジェクトに基盤系のソフトウェアが多い並木美太郎PMは,⁠基盤ソフトの完成には5年はかかる」とし,⁠これからも何らかの形で成果をブラッシュアップしていってほしい」と述べた。そして,⁠今回熱中した気持ちを忘れないでほしい」と述べた。

ウィリアム齋藤PMは,⁠プロジェクトの成果の製品化を目指してほしい」とする一方,未踏ソフトウェア創造事業を経験しての本当の財産は「出会い」であるとし,⁠個人が知っている『こと』には限界がある。知っている『人』が重要」であると述べた。

一方,黒川利明PMは,成果に満足しながらも「できることばかりやっている」と,プロジェクトの内容が現実的であることを指摘。失敗することを厭わず,より「未踏」の分野にチャレンジしてほしいと檄を飛ばした。

最後に,高田浩和PMはアドバイスとして,⁠OSや基盤ソフトウェアは開発過程でユーザの視点になりにくいので,それを意識して開発してほしい」と述べた。