レポート

「WordCamp サンフランシスコ 2009」レポート

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WordPressの現況(マット・マレンウェッグ氏)

「WordPressの現況(State of the Word)」は,WordCampで毎年行われる恒例のプレゼンです。講演するのはWordPress.orgの創始者であり,WordPress.comを運営するAutomattic社を立ち上げたマレンウェッグ氏ma.tt)。過去一年を振り返る統計情報と,これからの一年に対するビジョンがたくさん詰まった内容で,WordPress の成長や今後の方向などを知ることができました。

今年誕生から6周年を迎えたWordPressプロジェクトは順調に成長しており,ダウンロード数・投稿数などすべてが昨年を大きく上回る数字になっています。昨年のダウンロード数は各バージョン合計して1千万回以上,現在世界中にあるインストール型のWordPressブログは約500万サイト,そしてWordPress.comのレンタルブログは約340万サイトという発表がありました。

特に英語以外の言語圏での成長は目覚ましく,昨年は全体の27%だったローカライズ版パッケージの合計ダウンロード比は,この一年で42%を占めるようになったそうです。これを受け,使い方のスクリーンキャストなどの動画を集めたWordPress.tvにはdotSUBという字幕翻訳サービスを統合し,英語以外の情報リソース提供にも前向きに善処していきたい,と述べていました。

写真4 統計情報をたっぷり使ってプレゼンを行うマット・マレンウェッグ氏。圧倒されるほどの桁数からWordPressの展開スケールの大きさが感じられる

写真4 統計情報をたっぷり使ってプレゼンを行うマット・マレンウェッグ氏

この先一年の課題のひとつとして,GPL準拠のテーマの配布をさらに促進する活動を行っていくことを挙げていました。プロプライエタリーライセンスのテーマやプラグインは,WordPressのライセンスに反しているだけではなく,自由でオープンな派生物の創作や開発を妨げてしまうのが問題です。Thematicテーマを例に挙げ,GPLライセンスでソースコードを配布してコミュニティに貢献しつつ,サポート提供などのビジネスを両立させることも可能だと紹介していました。

さらにマレンウェッグ氏はこの場で,WordPressおよびWordPress MU(マルチユーザー)のコードベースをマージするという大きなニュースを発表しました。これは 一つのインストールで複数ブログが可能になることや,MU限定のプラグインセットであるBuddyPressがより簡単に利用できるようになることなどを意味しており,詳しい時期については言及されませんでしたが,これから非常に楽しみな動きといえます。

その他,WordPress関連の開発やサポートを行うビジネスモデルを成功させているCrowd Favorite社のアレックス・キング氏の紹介,リリース間近のバージョン2.8の説明,コミュニティによるWordPressプロジェクトへの貢献を促進する取り組み,既存のiPhoneアプリに加えたBlackBerryアプリなどでモバイル方面への対応を強化していくことなど,駆け足ながら多岐にわたった話題が語られた講演でした。

写真5 コロラド州でWordPressに限定した業務のみの会社を運営するCrowd Favorite社のアレックス・キング氏。同社はGPLライセンスのプラグインやテーマも多数配付している

写真5 コロラド州でWordPressに限定した業務のみの会社を運営するCrowd Favorite社のアレックス・キング氏

Whuffieの作り方(タラ・ハント氏)

Whuffie(ウッフィー)とは,有名ブログBoing Boingのコリー・ドクトロー氏による造語。彼のSF小説によると,Whuffieは周りからの評判が高まることに量が増えるという新しい概念の「通貨」のこと。小説では,生活に必要な物品や贅沢品の多くが誰にでも無料で手に入るようになった未来に,貨幣の代わりにWhuffieを目に見える形で交換したりといった世界が描かれています。ハント氏::HorsePigCow::はこの概念をさらに掘り下げ,オンラインなどのコミュニティでこのWhuffieという考え方をどう活かして成功するかを書いた「The Whuffie Factor」という書籍を出版しています。

ハント氏は,Whuffieを増やすことに集中すれば,オンラインでより多くの人へ自分の声を届けることができるようになる,と語りました。例えば同様の手法で顧客満足度の向上に成功した Dell 社は,Direct2Dellというブログをベースにこれを実践しています。

もともとDell HellというアンチDellサイトなどでの批判によってブランドへの評価が下がっていた同社は,ブログなどをはじめとしたツールを使ってネット上での声にすばやく誠実に対応することにより,見事にWhuffieを作り出して評判を取り戻していきました。

こういった例をたくさん挙げながら,Whuffieを作り出すためのコツをまとめて紹介しました。

1. お客さんに大声でどなりつけて振り向かせるような宣伝やアピールはやめる
マスではなく個人にフォーカスし,一人一人の違いを尊重したコミュニケーションをする。
2. コミュニティの一部となり,信頼を得る
そのためには何か注目に値する価値があなた自身(または商品,サービス)に必要。
3. 相手に「すごい!」という感情を持ってもらえるようにする
シームレスなユーザーエクスペリエンスで感動してもらったり,役には立たなくてもちょっとした楽しい機能などによってクチコミを促進したりする。
4. 無秩序さを受け入れる
制御しようとせず,バランスのとれたオープンさと透明性を,ちょうどいいさじ加減で見極める。
5. 自分にとって価値ある目的を発見する
自分がコミュニティに対してお返しできるような,たくさん与えても減らないようなものを見つけ,どんどん共有していく。例えばブログの記事を書くことでも良い。

いわゆるマーケティング担当の人が上記のようなルールに従った広告展開などをしているわけではないWordPressのようなプロジェクトでも,照らし合わせてみると自然に同じ方向性のアプローチを取っている点が多く,興味深い内容でした。個人ブロガーから大企業まで,それぞれの環境に応じて活用できるヒントがたくさんあったと思います。

写真6 Flickr が行った海賊の日にちなんだサイト上でのイベントを紹介するハント氏。役に立つかどうかは別として,訪問者が楽しんでくれて友達に話したくなるような遊び心も大切と語った

写真6 Flickr が行った「海賊の日」にちなんだサイト上でのイベントを紹介するハント氏

著者プロフィール

マクラケン直子(まくらけんなおこ)

米国ミシガン州在住。

KotobaMediaユニットに所属すると同時に,Automattic, Inc.への日本マーケット向けコンサルティング,WordPress 日本語版プロジェクトの翻訳,管理などに関わっている。

現在までに3冊刊行の「WordPress 標準ガイドブック」シリーズの著者。

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