Googleが語るChrome拡張 ─ベータ版公開と開発者コミュニティの立ち上げ

12月8日に公開されたされたGoogle Chromeのベータ版から、これまで開発者向けのバージョンでのみ有効であったExtentionsの機能が搭載され、⁠Chrome拡張」という名称で公開された。これに伴う説明会が東京のGoogle本社で開かれた。

新しいことを覚える必要はない

最初に説明に立ったのは同社シニアプロダクトマネージャーの及川卓也氏。Chromeの特徴として、その動作の速さとともに、開発の早さを挙げ、その特徴があったからこそ短期間で進歩を遂げ、2008年9月のChromeのリリース以来、全世界で4000万ものアクティブユーザを獲得するに至ったことを強調した。またこのうち日本、米国、オーストラリアのユーザだけで合わせて55%を占めているという。

Chrome拡張については、開発者バージョン(Dev版)でかなり早い時期から提供され、多くの開発者からフィードバックを受けつつブラッシュアップを行っていたが、API仕様などがある程度固まったので、いよいよ機能拡張を使ってもらおうということで、まずはベータ版での公開に踏み切ったとのこと。なお、Chrome拡張はLinux版のベータ版では利用可能だが、Mac版では利用できない(開発者バージョンでは「Comming Soon」とのこと⁠⁠。

Chrome拡張の特徴は、Webの標準技術+専用APIで構成され、HTML、CSS、JavaScriptで開発可能なため、Webサイト制作者も新しいことを学ぶ必要なく開発に移行できる点。機能拡張のメンテナンス、アップデートもWebページと同様に行えるという。またChrome拡張のAPIは、Googleの他のWebアプリケーションAPI(Google Maps、YouTubeなど)と相性良く作ってあるため、GoogleのWeb APIと連動した拡張などはとくに作りやすい。また、現在Googleなどが進めているHTML 5の技術も使うことができるようになっている。

そして、Webサービスの提供者がChrome拡張を開発するビジネス的なメリットとして、自サービスへの容易なアクセスルートとして意味を持つ点、Webページとは違い、ブラウザ自体に一部サービスが組み込まれることによってユーザの目にとまる点、そして拡張ギャラリーでの露出を挙げた。実際に、こうしたメリットを認めたFirefoxで機能拡張の制作実績のあるパートナーや、当然だがGoogleのプロダクト関連、そしてSkype、DeliciousなどのメジャーなWebアプリ、サービスがChrome拡張のパートナーとして名乗りを上げている。

及川氏が例として紹介した同日発表のはてなブックマーク拡張Chrome版。
及川氏が例として紹介した同日発表のはてなブックマーク拡張Chrome版。
読売新聞社の人気コンテンツ「発言小町」用の拡張。こちらはiGoogleのガジェットで提供済みの機能をChromeから直接使えるようにしたイメージ。
読売新聞社の人気コンテンツ「発言小町」用の拡張。こちらはiGoogleのガジェットで提供済みの機能をChromeから直接使えるようにしたイメージ。

Chrome Extensions galleryから

続いて説明に立ったのは同社デベロッパーアドボケイトの石原直樹氏。同時に公開となったGoogle Chrome Extensions galleryなどにアップされている中からいくつか紹介しながら、Chrome拡張が具体的にどのようなものかを紹介した。

石原氏も冒頭の及川氏の話を引き継ぎ、Chrome拡張の開発者にとっての大きな特徴として、新しく覚えることが非常に少なく済む点を挙げた。標準技術のみを使っているため、今後ブラウザがバージョンアップした場合も、それによって拡張が動作しなくなるといったケースが少ないのも大きなメリットとなる。

まず基本知識として、Chrome拡張の種類について説明。大きく以下の3種に分かれている。

Page Action
特定のページと連動して動く拡張。アドレスバー脇にアイコンで表示される(RSSフィードの購読 など⁠⁠。
Browser Action
ツールバーにアイコンを表示して、これをクリックすることによってブラウザの状態や機能をカスタマイズする。
Content scripts
Webページを表示した際のUIや振る舞いが変わる。
表示ページのQRコードを自動生成する拡張。Googleマップで表示させている部分が変わると連動してQRコードも変化する。
表示ページのQRコードを自動生成する拡張。Googleマップで表示させている部分が変わると連動してQRコードも変化する。
ブラウザタブを開きすぎて「タブ地獄」に陥っている方のために、タブを一覧表示して整理できるChrome拡張。
ブラウザタブを開きすぎて「タブ地獄」に陥っている方のために、タブを一覧表示して整理できるChrome拡張。

この後gihyo.jpの連載「続・先取り! Google Chrome Extensions」でおなじみの太田昌吾氏が自作のChrome拡張のデモを行った。

ブラウザの必須機能と言う人も多い太田氏作成のマウスジェスチャー拡張。マウスの動きによってブラウザの振る舞いをどうさせるかを細かく設定できる。
ブラウザの必須機能と言う人も多い太田氏作成のマウスジェスチャー拡張。マウスの動きによってブラウザの振る舞いをどうさせるかを細かく設定できる。
ユーザスタイルシート拡張。表示しているページの見た目や振る舞いを、スタイルシートを書くことによってダイナミックに変更できる。ここでは"zoom"というスタイルシートを書いて表示全体を拡大して見せた。
ユーザスタイルシート拡張。表示しているページの見た目や振る舞いを、スタイルシートを書くことによってダイナミックに変更できる。ここでは

太田氏によると、Chrome拡張とFirefoxの機能拡張の違いは、Firefoxがブラウザの根幹部分までいじれる拡張であることに対して、Chromeはそこまでさせず、あくまで表示や振る舞いを変更してWebブラウズを便利に補助する点だという。

石原氏は、開発した拡張をギャラリーにアップするプロセスについても紹介。非常に簡単なので、拡張の開発スピードも早めることがきるとアピールした。Chrome拡張開発時に用意するマニフェストファイル(manifest.json)に、アップデートした際に置くURLなど自動アップデートに必要な情報を書いておけば、あとはギャラリーが自動的に最新のものをアップデートしてくれるようになっている。ギャラリーへのアップロード自体は、Zipファイル形式(パッケージ)に説明用のスクリーンショット、アイコンなどを用意すればいい。

開発者コミュニティ「Chromium Extensions Japan」発足

またこの日、Chrome拡張の開発者コミュニティ「Chromium Extensions Japan」が発足したことが発表された。API Expertとしてコミュニティを引っ張るのは太田昌吾氏。及川氏、石原氏がGoogle側から開発者を支援する。今後はハッカソンなどの活動を通じて、Chrome拡張の開発者をふやしたり、Extensions galleryの充実を図っていく。

「Chromium Extensions Japan」の概要を説明する石原氏。これまでGoogleのWeb APIなどについて同様の開発コミュニティを多数立ち上げてきたが、今回は異例の早さで発足することになったという。
「Chromium Extensions Japan」の概要を説明する石原氏。これまでGoogleのWeb APIなどについて同様の開発コミュニティを多数立ち上げてきたが、今回は異例の早さで発足することになったという。

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