「Web CMS導入後2年を語る! 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社のWeb CMS活用事例」セミナーレポート

2010年11月2日、FatWire株式会社主催による「Web CMS導入後2年を語る! 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社のWeb CMS活用事例」と題したセミナーが開催されました。複数のシステムでユーザー認証を共通化するシングルサインオン、そしてシステム開発におけるプロジェクトのリスクを低減する手法などについて説明が行われ、多くの受講者が熱心に耳を傾けていました。その模様をレポートしていきます。

セッション1 欧米で普及するPOC

FatWire株式会社
代表取締役社長 田中猪夫氏
FatWire株式会社 代表取締役社長 田中猪夫氏

まず最初に登壇したのは、FatWire株式会社の代表取締役社長である田中猪夫氏です。FatWireは米国を始め世界各地に拠点を設置、ワールドワイドでソリューションを展開していると説明し、Web CMS導入における海外と日本の違いとして、POC(Proof of Concept:概念実証)が日本で行われることが少ないと指摘します。

POCとは、プロダクトや開発パートナーを選定する際、そのプロジェクトにおいてもっとも重要なこと、鍵となる技術について実際に実装を行い、ユーザー側の要求を満たせるかどうかを確認するというフェーズです。田中氏によれば「日本では書類のやり取りのみで済ませられることが多く、POCが実施されることは少ない」とのことです。

一方欧米では、まずユーザー企業から提出されたRFP(Request For Proposal:提案依頼書)に対して5社程度が提案書を提出、その内容から2社程度に絞り込まれ、重要なポイントに対してPOCを実施、十分なパフォーマンスがあるのか、他のシステムとの連携に問題はないかを確認することが多いと田中氏は話します。

開発プロジェクトにおいて、たとえばシステム連携が想定していたよりも困難で、それによって開発期間が大幅に伸びてしまったという例は少なくないでしょう。こうしたトラブルを未然に防げるというだけでなく、ユーザーとベンダー双方において、そのプロジェクトで何がポイントになるかを明確にできることなどを考えると、POCは極めて有効です。

なおFatWireでは、POCを行った実績も多数あると話し、最後に「今後も積極的にPOCに取り組んでいく(田中氏⁠⁠」と締めくくりました。

セッション2 リニューアルで浮き上がった課題

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
広報部 竹森賢司氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 広報部 竹森賢司氏

続けて登壇したのは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 広報部の竹森賢司氏です。

伊藤忠テクノソリューションズは、オープン系システムインテグレータとして企業の情報システムやインフラの構築、そしてコンサルティングなどを提供しており、大規模ネットワークやデータベース、各種情報システムの構築を得意としています。

創立されたのは1972年で、2006年には伊藤忠テクノサイエンス株式会社と、株式会社CRCソリューションズの経営統合が実施されます。これをきっかけに、ブランド統合などの経営統合プロジェクトの1つとしてコーポレイトサイトのリニューアルが検討課題となりました。

それ以前のコーポレイトサイトについて、⁠事業グループが単独でWebサイトを持っていたり、あるいは同じコンテンツを複数の部署がそれぞれのページにおいて公開していたりと、統合的に管理されていなかった(竹森氏⁠⁠」とのこと。

そこではじめに取り組んだのは、現在のWebサイトにどのようなコンテンツがあるのか、そしてサブドメインで公開されているWebサイトにどういったものがあるのかなどといった調査でした。さらに組織ごとにコンテンツの内容や更新頻度、技術的な必須条件などをヒアリングによって洗い出し、現状把握を進めていきます。

この中で明らかになった問題点として、⁠各コンテンツのオーナーがばらばらにアップロードしているという状況で、情報の欠落も少なくなかった。またコンテンツの再利用が実現されていないため、バージョンの異なる同じ情報がアップロードされているという状況が発生していた」と竹森氏。またコンテンツをアップロードするための仕組みが整備されていなかったことも課題だったと語ります。

FatWireのWeb CMSとID管理システムを連携

そこで竹森氏らはこれらの課題を解決するためにWeb CMSツールの導入が必須であると判断します。そのWeb CMSの選定にあたって重視したのは、⁠スモールスタートが可能⁠⁠、⁠拡張性が高いこと⁠⁠、⁠OSに依存しないこと」などで、さらに重視したのが「既存のID管理システムと連携できること」でした。

「リニューアル後のコーポレイトサイトの規模は大きく、それぞれの領域を担当するコンテンツオーナーが140名ほど存在している。さらに1人1つのコンテンツとは限らず、管理権限は複雑化していくため、手作業で管理するのは困難だった(竹森氏⁠⁠」

そこですでに運用されているID管理システムとWeb CMSを連携できれば、既存のID管理の枠組みの中で、Web CMSに対する権限も割り当てられ、管理の煩雑さを軽減できるというわけです。

こうした中で選定されたのがFatWireのWeb CMSである「FatWire Content Server」でした。特にID管理システムとの連携において、FatWireではLDAPサーバや種々のID管理ソリューションとの連携が可能です。

現在コンテンツ更新に携わるアクティブユーザー数は約140名で、それにもかかわらずリニューアル後2年が経過した今も、当初のクオリティを維持しながらコーポレイトサイトを運営できていると言います。最後に「今後もコーポレイトサイトを日々進化させて、よりよいものにブラッシュアップしていきたい」と抱負を述べ、セッションを締めくくりました。

セッション3 大規模Web CMS活用で必須のID管理

FatWire株式会社 営業部
ディレクター 佐藤高生氏
FatWire株式会社 営業部 ディレクター 佐藤高生氏

続いて登壇したのは、FatWire株式会社 営業部 ディレクターの佐藤高生氏。⁠大規模Web CMS活用に必須の社員ID管理・SSO連動」と題してプレゼンテーションを展開しました。

まず佐藤氏が説明したのは、シングルサインオンのメリットです。企業内にはさまざまなシステムがありますが、個別にユーザー管理を行っていると、入社や退職といった人事イベントが発生するたびにすべてのシステムで修正を行う必要があり、莫大な手間がかかってしまいます。

そこで現在、多くの企業で使われているのがID管理、あるいはディレクトリ管理と呼ばれるシステムで、ユーザー情報の集中管理が可能になります。ただ、ユーザー情報を一元化しても、システムごとにログイン作業を強いられるのはユーザーにとって不便でしょう。そこで1度認証に成功すれば、ユーザーIDやパスワードを入力せずにほかのシステムの利用を可能にする仕組みが登場しました。これがシングルサインオンというわけです。

FatWireのWeb CMSである「FatWire Content Server」においても、例えば、ヒューレット・パッカードの「HP IceWall SSO」と連携するための「SSO Plugin for HP IceWall」が提供されています。これを利用すれば、SSOサーバによって認証されていれば、ユーザーIDやパスワードを再度入力することなく、FatWire Content Serverにアクセスすることが可能になります。

ID管理システムに登録されている内容を利用し、ユーザーごとに表示する内容を変えることもできると佐藤氏は説明します。

「ID管理属性とFatWire Content Serverのロール(ユーザーの役割)を紐付ければ、ログイン後に表示される画面を部署や役職ごとに変えることが可能。たとえばメインとなるコンテンツがユーザーごとに違うといったことを実現できる(佐藤氏⁠⁠」

さらに外部からの閲覧者の認証も可能など、FatWire Content ServerとID管理システムの組み合わせにはさまざまな用途で活用することが可能と佐藤氏は話します。自社のWebサイトの一歩進んだ活用したいと考えているユーザーには、大いに参考になるのではないでしょうか。

セッション4 POCで豊富な実績を持つFatWire

FatWire株式会社
技術部 木村潤氏
FatWire株式会社 技術部 木村潤氏

最後に登壇したFatWire株式会社 技術部 木村潤氏は「エンタープライズWeb CMS購入に必須のPOC」と題し、POCの必要性を訴えました。

木村氏はPOCについて「⁠⁠汎用デモ』ではなく、プロジェクトのキーとなるテクノロジーの実証実験」と定義し、プロジェクトにおけるリスクを低減するために欧米では必ず行われると紹介します。具体的には十分なパフォーマンスを有しているか、他社Web CMSからコンテンツを移行できるかどうかのチェックが一般的にPOCとして行われているとのこと。そのほかFatWireとして、シングルサインオンを実現するHP IceWall SSO、あるいはレコメンドエンジンとの連携などについて、POCとして対応したと言います。

さらにHP IceWall SSOと連携したデモが実施されました。ユーザーはHP IceWall SSOを介してログインすれば、FatWire Content Serverのイントラネット向けの配信環境にアクセスできるというデモンストレーションです。この際、データベースに登録されている情報を見てページ内容を変更したり、シングルサインオンにより本来認証が必要なWebアプリケーションに改めてログインすることなく利用できたりする様子が紹介されました。

今回のデモンストレーションを見て感じたのは、シングルサインオンに対応していることで、あたかも同一のプラットフォーム上で動作しているシステムのようにシームレスな連携が可能になるということ。これによってユーザーの使い勝手が大幅に向上することを考えると、Web CMSを選定する際のポイントとしてID管理システムやシングルサインオンへの対応は重要だと言えるのではないでしょうか。

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