アジア最大のモバイルインターネットのイベントGMICレポート

北京の国際コンベンションセンターで4月27日と4月28日に、Globoal Mobile Internet Conference(GMIC)が開催されました。今年は中国のモバイルサービス関係者はもちろんのこと、中国や世界展開を視野に入れた日本からの参加者、登壇者も多く見られました。

会場となった北京国際コンベンションセンター
会場となった北京国際コンベンションセンター

モバゲーを日本だけでなく世界で一番儲かるプラットフォームに

初日の午後のセッションでは日本からDeNA取締役の守安氏が登壇し、中国の来場者に向けて世界を目指す同社の戦略について語りました。守安氏が強調していたのが、モバゲーが非常に利益率の高いプラットフォームであること。億人単位でユーザ数を確保している中国の大手ITサービス企業に対してモバゲーの会員数は約2500万だが、売上は年間1,000億に達している。⁠ARPU(Average Revenue Per User)が、Facebookの30倍、Zyngaの10倍である」と語り、⁠世界で一番儲かるプラットフォームを構築するので、ぜひモバゲーに参加して欲しい」と会場に呼びかけました。

GMICで登壇したDeNA社の守安氏
GMICで登壇したDeNA社の守安氏

モバゲーがソーシャルゲームを開始したのが2009年の第3四半期。それから2年を待たず会員数が2.5倍の2,500万人に成長したソーシャルゲームの勢いを紹介し、今後はクロスデバイス、クロスボーダーで展開をしていきたいと話します。クロスデバイス戦略としてPCではヤフーと提携しヤフーモバゲーを開始し、スマートフォンへの注力し始めています。

ソーシャルサービスによりさらに急成長したモバゲー
ソーシャルサービスによりさらに急成長したモバゲー

スマートフォンへの戦略の最初の一歩として、iPhoneのゲーム開発に優れたngmoco社を買収しました。ngmocoにはPlus+というコミュニティプラットフォームがあり、これを今後モバゲーブランドに名称変更して活用していくとのことです。サムスンとの提携により、今後のサムソンのAndroid端末には、モバゲーのプラットフォームがプリインストールされます。

また、イベントの数日前、4月25日にはNTTドコモとの戦略的提携も発表し、今後NTTドコモから発売されるAndroid端末にもモバゲーがプリインストールされることになります。ドコモとはそれだけでなくiMenuからの送客や、NTTドコモが保有する国際的ネットワークを利用して、一緒に世界展開を行っていくと発表しました。

ngmocoでは、ngcoreというスマートフォンアプリの開発エンジンを開発しており、ワンソースでiOSとAndorid端末向けのアプリができ、それをそのままモバゲージャパン、モバゲーグローバル、モバゲーチャイナに展開可能とのこと。モバゲー向けにアプリを提供する会社がngcoreを利用することは任意ですが、この開発エンジンを利用することでワンソースでの展開が非常に楽になると思われます。

モバゲーチャイナがプレオープン。中国のアプリストア91.comとして7月から本格展開

またイベントの前日、4月26日にはモバゲーチャイナをオープンしたと発表しました。現状はまだプレオープン的な扱いであり、ブラウザ版でゲームは1種類しかありませんが、7月をめどにアプリ版を用意したりゲームの種類を増やし本格的展開をしていくとのこと。これにともない中国の開発会社に向けたスペシャルプログラムを開始し、1,000万元の開発支援金と専門のサポートスタッフを用意し、海外展開とngcoreの技術的サポートを行っていきます。

4月26日にオープンしたモバゲーチャイナ
4月26日にオープンしたモバゲーチャイナ

モバゲーチャイナへの集客は中国でオンラインゲームのポータルサイトとして人気が高くスマートフォン上でアプリストアを展開している91.comと提携することで、91.com上にモバゲーへと誘導してもらうリンク提携するそうです。⁠これがモバゲーの中国でのサービス開始の大きブーストとなるのでは」と考えているとのことです。

モバゲーは日本でもスターフォンでのサービスを5月に開始し、欧米では6月くらいにサービス開始をし、スマートフォンにおいてクロスボーダーのビジネスが展開されていきます。⁠海外で共通のプラットフォームを展開し、一番儲かるプラットフォームにしていきたい」と抱負を語り守安氏は発表を締めくくりました。

アプリが足りない中国の3億人のモバイルネット市場

一方で中国の携帯所有者は8億人、モバイルネットユーザは約3億人といわれバブルともいえるような急成長や起業ラッシュが続いています。GMICにパネルディスカッションに参加した中国大手IT企業からは、⁠数億人のユーザのニーズを満たすためには数百万のアプリが必要。アプリの数が全然足りない」との声も出ました。

Baidu社、Sohu.com社、Sina.com.cn社など中国大手IT企業によるパネルディスカッション
Baidu社、Sohu.com社、Sina.com.cn社など中国大手IT企業によるパネルディスカッション

一方で、中国のモバイルサービス企業は、人材不足、エグジット先がないこと、そして同質化問題という3つの問題を抱えていると言います。Baidu社のYu Guofeng氏によるとBaiduでは160以上の求人ポストがあるが、⁠賃金が低いわけではないが人材がすごく不足している⁠⁠。そもそも必要とされる人材の絶対数が少ないうえ、給与が高騰しているという状況のようです。

Baiduのような大手ですらこのような状況のため、スタートアップ起業にとってはさらに人材の確保が難しくなっています。また、中国では日本とは異なり、まだモバイルサービスからほとんどが収益が得られていないと言います。課金のビジネスモデルはユーザからの抵抗が大きくまだ確立しておらず、広告による収益もまだ多くはない。モバイルサービスのバブルでの起業が増えているが買収や、株式公開という出口がまだまったく見えていないというのが現状です。

最後に語られた同質化問題とは、各社が競合相手の良い部分を真似していくことで結果としてサービスの内容に応じて、どのサービスも他のサービスと似通ってしまうということを指しています。この状況を打開する手立てとしては、sina.com.cn社のWANG Gaofe社は「スパースターとなるクリエイターはどこにでもいるわけではないが、アプリの開発費を数十万元から数万元に下げることで、より多くのイノベーションが生まれてくるかもしれない」と語りました。

加熱する中国のモバイルネット市場と世界展開を目指す各国のプレーヤ

GMICでは、バブルとも言われる急成長する中国のモバイルネットマーケットとそれにあわせて立ち上がっているネットサービスの加熱ぶりがシリコンバレーでもない急成長や大きなイノベーションを引き起こすマグマとなっているような印象を受けました。世界展開を視野に入れる上でマーケットとしても、またサービスの開発や協業の上でも目を話せないホットスポットとなっているのは間違いないでしょう。

上記でとりあげたDeNA社や、Tencentと提携したグリー社の存在感が会場でも大きく、すでに競争の場が日本から中国、世界にシフトしていく瞬間に立ち会ったといえるかもしれません。

GMIC会場の様子
GMIC会場の様子

一方で、会場からは中国のグレートファイアウォールと言われるインターネットの検閲により、FacebookにもTwitterにも接続ができませんでした。GoogleのサービスはGmailを中心にいくつか利用できましたが、操作中にコネクションが切れたりGoogle Docsなど利用できないサービスもありました。こうした米国発のソーシャルサービスと、隔離された状態の中で、中国独自のサービスがどのような変化を生み出すのか。Facebook、Twitterをレバレッジとして広がるソーシャルサービスが中国ではどのように展開しうるのか、その逆にこうしたFacebook、Twitterなどのサービスを中国ユーザが積極的に利用できない中国のソーシャルサービスがどのように海外に展開しうるのか。

モバイルとソーシャルという2つの要素により国境を超えだしたソーシャルサービスが、中国という特殊なインターネット環境を持ちながら、桁違いのユーザと開発者を抱えている国でどのような変化が今後世界的に起こっていくのか興味が尽きないイベントとなりました。

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