技術評論社×KDDI主催「第1回 察知人間コンテスト」賞金100万円グランプリ決定

5月25日、技術評論社、KDDI主催による「第1回察知人間コンテスト」の決勝戦と授賞式が、東京、原宿のKDDIデザイニングスタジオで開催されました。

「察知人間コンテスト」は、ARをより身近にすることを目的に、エンジニアやクリエイターを対象としたARアプリ開発コンテストです。KDDIから提供されているモバイル向けARアプリ開発キットSATCH SDKを使うことが条件で、応募期間は2月7日~3月31日、グランプリ賞金は100万円です。だからというわけではないでしょうが、短い応募期間に100本以上の応募作品が集まりました。

この日の決勝戦に集まったのは、応募作品の中から書類選考で10本まで絞られた中から5月18日に行われた選考会で勝ち残った4組。決勝戦はこの4組によるプレゼンの後、審査、結果発表という流れで行われました。

審査委員の皆さん。中央前で挨拶しているのが審査委員長「AR三兄弟 長男」の川田十夢氏。後ろ左からKDDI 小林亜令氏、ワンパク 阿部淳也氏、アドビシステムズ 太田禎一氏、バスキュール号 西村真里子氏、面白法人カヤック 野崎錬太郎氏、ミクシィ 鈴木理恵子氏、技術評論社 馮富久。
審査委員の皆さん。中央前で挨拶しているのが審査委員長「AR三兄弟 長男」の川田十夢氏。後ろ左からKDDI 小林亜令氏、ワンパク 阿部淳也氏、アドビシステムズ 太田禎一氏、バスキュール号 西村真里子氏、面白法人カヤック 野崎錬太郎氏、ミクシィ 鈴木理恵子氏、技術評論社 馮富久。

当日の審査の結果、発表された各賞は以下の通りです。

グランプリARレントゲンARレントゲン制作チーム
準グランプリとびでる★ぬりえICD-クリエイティブチーム
特別賞顔'NS(ガンズアンドソーシャル)雑魚雑魚
★★★★★5 stars
受賞者の皆さん。左から準グランプリのICD-クリエイティブチーム、特別賞の雑魚雑魚(2人⁠⁠、グランプリのARレントゲン制作チーム、特別賞の5 stars(2人⁠⁠。
受賞者の皆さん。左から準グランプリのICD-クリエイティブチーム、特別賞の雑魚雑魚(2人)、グランプリのARレントゲン制作チーム、特別賞の5 stars(2人)。

グランプリは驚異の精密描写「ARレントゲン」

グランプリを受賞した「ARレントゲン」は、その名の通りをマーカーとなる画像に別のマーカーをかざすと、重なった部分の内部構造が精密に映し出されるというもの。

動物はもちろん、クモや機械、建物、さらに人間? の内部を3次元でトレースする精密なデモ。それぞれ動画のおまけもついているとサービス精神も旺盛です。

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受賞時のKDDI 小林氏による講評によると、グランプリの決め手となったのは、①マーカーを2つ使って1枚目を対象物の外形を描く「足し算⁠⁠、2枚目を骨格を表示する「引き算」で使うというコンセプト、②SATCH SDKとハードウェアの処理性能限界まで引き出す表現、③前回審査で要望のあった点を1週間で仕上げてきたスピード感と技術力、が上がっていました。

前回審査で審査委員から要望された「実物の内部構造を見せる」に挑戦した動画
前回審査で審査委員から要望された「実物の内部構造を見せる」に挑戦した動画

非常に素朴な印象のARレントゲン制作チームの方。受賞コメントも言葉少なに「感無量です」と目を潤ませていたのが印象的でした。

グランプリ受賞の喜びを語る
グランプリ受賞の喜びを語る

準グランプリ「とびでる★ぬりえ」

準グランプリをとったのは「とびでる★ぬりえ⁠⁠。あらかじめ登録されている塗り絵にデバイスをかざすと、塗ったままの絵が紙の外に動き出すというものです。音声も合成することができ、デモでは塗り絵のゾウが動き出してリンゴを食べていました。

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特別賞「顔'NS(ガンズアンドソーシャル)」

謎のコスプレで現れた2人組によるデモ。顔認識を使い、顔の向きを上下左右に動かすことでヴォーカル、ギター、ベース、ドラムを使い分けて音を出すことができます。顔を認識させるとロックな髪型? に変わって、⁠顔ズ」のメンバーになれるという趣向もあります。顔を使って「演奏」したデータはサーバに記録でき、わらにソーシャルソフトと連携して呼び出し、合わせてプレイできる構想ですが、実装はまだとのこと。デモの間じゅうロックを流して、最もパフォーマンスに富んだデモでした。

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特別賞「★★★★★」

「★★★★★」と書いて「ファイブスターズ」と読みます。書籍の表紙を認識すると、その書籍のAmazonでの評価をネット経由で読み出し、カスタマーレビューや★の数など表紙に重ねて表示されるというものです。

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おまけとしてDVDの評価も表示。コンテンツはご当地ヒーローだそうです。
おまけとしてDVDの評価も表示。コンテンツはご当地ヒーローだそうです。

今後の展開として、たとえば書店のフロアや棚別のトラッキング情報をサーバに持たせることで、オススメ情報やその他のメタ情報も表示させるなどのアイデアも紹介されました。今回の各受賞作の中で最も実用性の高いアプリと言えるでしょう。

SATCH SDKの今後

一連の発表の後、KDDIの伊藤氏から今後のSATCH SDKについていくつか説明がありました。

2011年12月に提供開始となったSATCH SDKはARの開発環境としては後発ですが、同社の調査によると認知度16.3%とある一定の認知は得られているとのこと。

また8月下旬にSATCH VIEWERというARブラウザの提供を開始するそうです。SATCH VIEWERは、ソーシャルを使ったAR情報の共有機能や専用ARコンテンツのプレーヤが含まれます。

また、6月から登録デベロッパ向けにSML(SATCH Markup Language⁠⁠、SATCH Studio Liteの提供も開始されます。SMLはARの画像認識UIをHTMLやCSS、JavaScriptで記述できる言語で、ARを使ったWebサイトをより手軽に実現するもの。後者は現在の開発ツール「SATCH Studio」の機能を絞り、入門者向けに提供されるものとなります。

最後に、ネット上の一部ユーザで話題となったSATCH SDKのプライバシー情報問題について言及されました。これは、SATCH SDKの登録時に利用端末のWiFi MACアドレスのハッシュ値をサーバに送信、記録していたという件で、こちらは独自のUUIDを使用する方式に改修し、新たに提供し直す方針とのことです。

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