「エンジニアの未来サミット for students」――今年もこの季節がやってきました。去る11月10日、第1回目が開催されたのでその模様をお届けします。
今年で3回目となるエンジニアの未来サミット for studetns
「エンジニアの未来サミット for students」とは2010年から始まった、エンジニアと学生とトップエンジニアが交流し、エンジニアの未来を考えるイベントです。もともと2008、2009年に技術評論社が主催していた「エンジニアの未来サミット」のスピンオフとして生まれました。
その特徴は、IT業界で活躍している多様なエンジニアがゲストとして登場し、座学形式の講演に加えて、質疑応答や懇親会の場でリアルな場でコミュニケーションが図れることです。
トップバッターは小飼弾氏――「大切な人に使ってもらいたい」という気持ち
2012年最初のゲストには小飼弾氏・はまちや2氏の両名が登場。
3年連続、3回目の登壇となる小飼氏は以下の写真1枚だけを使ってプレゼンテーションを始めました。
Windows 8端末の販売風景
これはとある量販店でのWindows 8搭載端末の販売風景。この写真を見せて会場の学生たちに向かって「この写真、何がおかしいかわかりますか?」と問いかけました。会場からはいくつか正しい答えも挙げられ、以下の点について小飼氏は指摘しました。
タッチUIが売りなのにディスプレイにシールが貼ってある
360度回転モデルなのに据え置きで配置されている
また、このときの販売員の対応を見て、「 そもそも売り子さんがタッチUIやWindows 8の良さを理解していない」という問題点についても指摘しました。
使い手のことを意識することの大切さを語った小飼弾氏
小飼氏は「これはエンジニアにとっては大変悲しいこと」と言いました。つまり、作り手がせっかく作ったものが、作り手の意図とは違った形で使い手に伝わってしまっているというわけです。そして、それこそが「今の日本のものづくりの問題」であるとも言います。使う人(買う人)がどのように使うかをイメージして作り、伝えていかなければいけないが、さまざまな要因からそれができない環境(状況)にあると指摘しました。
では、どうすべきかという答えの1つとして、「 もし自分が作ったものが(上記の例のように)意図通りに伝わっていないのであれば、どうしてもらいたいか・どうやって使ってもらいたいかの意思表示をし、ときに怒鳴って怒るぐらいの気持ちを持っていなければいけません」と、ただ作るだけではなく、作ったものに対しての気持ちの入れ方、責任感がエンジニアにとって大切だと提示しました。
さらに「エンジニアであれば、自分が欲しい物をまずつくるべき。そして、作ったものは大切な人に使ってもらいたいと思う気持ち、それがなければ他の人に使ってもらうことは難しいでしょう」と、エンジニアとしての心構えについても言及し、プレゼンテーションを締めくくりました。
「職人エンジニアも良いが、職業エンジニアも目指せ」――はまちや2氏からのアツいメッセージ
続いて登場したのは、「 はまちちゃん」ことはまちや2氏。
「本日のテーマ:グループウェア『サイボウズ』の致命的なセキュリティホールについて。うそです。」というドキッとするジョークからプレゼンテーションを始めました。
はまちや2氏は「エンジニアという仕事について」というテーマで、自身の経験を踏まえたエンジニア論・エンジニア観を展開しました。今の世の中の状況と他の職種を比較した場合、エンジニアであれば転職しやすい、給料も上がりやすいなどの理由を挙げながら、「 結論から言えばエンジニアで正解」だと言います。
「エンジニアで正解」と力説したはまちや2氏
もちろんそれだけではなく、「 なぜエンジニアなのか」についても話を展開しました。その中で、「 小説家が小説を書くためにペンというツールを使うように、情報を扱うのならば、まずはプログラミングというツールを使えるようになるべき。 プログラマに限った話ではありません。ツールを極める必要はないけれど、引き出しの数は多い方がいいですね」と、知識を吸収することの大切さ、意義について語りました。
さらに、エンジニアとして成功するにはどうすべきかという点についてはビジネス的な視点を持ち合わせることとし、「 ( 会社に属するのであれば)とにかく誰よりも早く電話に出ることが大切」と力説しました。「 あれ?それは新社会人としての作法?」と思わせられましたが、その理由についてこのように解説しました。
「外部からの電話に出ることで、その会社がどういった企業と取引があるのか、誰にどのような人から連絡があるのか、情報の流れ、人の流れを知る(見る)ことができます。つまり、それは局地的に見ればビジネスの流れであり、その積み重なりが大きなビジネスにつながるのです」と、ただ新社会人としてのあるべき姿ではなく、裏付けされる理由について解説しました。加えて、「 1つの技術を突き詰めていく職人的なエンジニアも大切ですが、今言ったようなビジネス的な視点を持ち合わせた職業的なエンジニアを目指すほうが、私自身の経験としてはエンジニアの幅が広がると思います」と、経験談をふまえて、技術指向だけではない、広い視点を持ったエンジニア像を勧めました。
最後に「3年後に死ぬとしたら、どう生きたいか?」というテーマを掲げて、「 長者番付に載るよりも教科書に載りたい」と、ただお金を稼ぐだけではなく、記憶に残る何かを残せる、そして世界征服できるエンジニアを目指していくこと学生たちに誓いました。
たくさんの質問が集まったトークセッション
個別プレゼンテーションのあとは、両氏に加えて、サイボウズ・ラボの竹迫良範氏、わたくし馮が加わった4名でのトークセッションが行われました。トークセッションでは、会場からの質疑応答を中心に、パネリストたちが答えていくスタイルで進行しました。
カジュアルな雰囲気の中、終了時間を20分もオーバーするほど盛り上がったトークセッション。トークセッションから加わった竹迫氏(写真手前左から2番目)と私(写真手前左)
会場からは、
デスマーチをなくすには?
ソーシャルゲーム業界の今後はどうなのか?
大企業で働くこととベンチャーで働くことの違いは?
など、学生自身が気になる質問が多数上がりました。それらに対し、たとえばデスマーチをなくすには「自分自身が偉くなることで環境を変える」「 自分から変わっていく」「 締切に対してシビアに見て、自分からは3倍の日程ぐらいを提案するぐらいの気持ちでいるべき」などと述べられたり、また、ソーシャルゲーム業界に関しては、「 一口にソーシャルゲームといってもグリーやDeNAのようなプラットフォーマーとゲーム開発会社とでは違う。その違いをきちんと見た上で自分が何をやりたいかを考える」など、各人からさまざまな回答が述べられました。
また、今の閉塞感に対しては「日本全体として、たとえば電車が一本遅れたとしても余裕を持って許容できるような社会になってほしいですね。まずは自分たちがその気持ちを持って接することで、またより良いものづくりにつながっていくのでは」と竹迫氏が、社会全体の雰囲気に対して気持ちの変化を促すべきではないかと述べるなど、未来のエンジニアたちにとても貴重なメッセージを残し、トークセッションが終了しました。
会場からはたくさんの質問が上がった
次回は12月12日開催!
エンジニアの未来サミット for students 2012はまだまだ続きます。次は12月12日、場所を芝浦工業大学豊洲キャンパスに移して開催されます。次回のゲストはモバツイ開発者のえふしんこと藤川真一氏、さらにトークセッションには注目の生活レシピサイトnanapiのCTO 和田周一氏、サイボウズ・ラボ代表取締役社長 畑慎也氏をゲストに迎え、「 ベンチャー」をテーマに開催されます。
興味のある学生はぜひ参加してみてください!
記念写真
エンジニアの未来サミット for students 2012
http://developer.cybozu.co.jp/tech/?page_id=686