「第34回 HTML5とか勉強会~BaaS(Backend as a Service)」活動報告

2012年12月20日、年内最後となる第34回目の「HTML5とか勉強会」ソフトバンクさんの食堂をお借りして開催しました。

今回のテーマは「BaaS(Backend as a Service⁠⁠」です。海外ではいくつかの事例も出てきており、今後のWebアプリ開発においてBaaSが重要なサービスになることが予想されます。サーバサイドの開発にあまり明るくない開発者でも、BaaSを利用することでアプリケーションの開発がより円滑に進められるようになるでしょう。

本稿では、今回のイベントについてレポートします。

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素早くモバイルサービスを立ち上げる - BaaS概要

はじめにBaaS全体の概要について、株式会社エクサ安藤幸央さんに講演いただきました。

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BaaSはWebアプリで必要になることの多いバックエンド(サーバ側)の処理を、APIとして提供するクラウドサービスの総称です。BaaSを利用することで認証やデータの保存管理、画像の加工やプッシュ通知、アクセス解析や課金/決済の処理といったWebアプリのバックエンドの処理を自ら実装することなくWebアプリの構築が行えると言います。

BaaSの利用は、次のような場合に特におすすめであるとのことです。

  • コンシューマ向けサービスのバックエンド構築に慣れていない
  • バックエンドに十分なリソースが割けない
  • アプリの開発とサービス自体に注力したい
  • 一般的な機能の組み合わせで実現できるシンプルなアプリの構築
  • とにかくサービスをリリースするまでのスピードが重要

またBaaSを利用する上でのデメリットについてと、その対応策についても述べていました。

  • セキュリティ面 → 報告する。報告すれば対応してくれる可能性が高い。
  • ロックイン → 一つのサービスに依存しないように二つのサービスでまたぐように動作させる(バックエンドの開発を後追いですることも有効⁠⁠。
  • ダウンタイム → ある程度あきらめることと、落ちることが前提でサービス企画を行う。⁠落ちています」というのをユーザに伝えるためのステータスページを用意するのも有効。
  • テストの切り分け → 本番と同じダミーの環境を構築する
  • 価格付け → 細かなアクセス解析を行い、フィードバックをしていく。
  • 機能が足りない場合 → 自分で作る。そこに注力することができる。

これらの側面を踏まえて、利用する上で最適なBaaSを選択するためのポイントがいくつかあると紹介しました。まず料金が適切かどうか、初期費用と運用費用の合計をしっかりしておき、サービスの料金設定の変更がある場合を考慮する必要があります。また急な高負荷やユーザの増加を想定して、スケーラビリティも考えておいたほうが良いとのことです。利用するまでのセットアップやプラットフォームを移行する際など、手間が多くかかってリソースが無駄に割かれてしまう状況にならないように気をつけると良いそうです。加えて、APIの利用形式やリリースするプラットフォームに向けたSDKが用意されているかなど、しっかりと調査することが必要とのことです。

詳しい解説は講演動画をご覧ください。あわせて講演資料もご覧ください。

インスタントモバイルBaaS「Appcelerator Cloud Services(ACS)」

つぎにAppcelerator Cloud Servicesについて、Titanium Mobileユーザー会金野和明さんに講演いただきました。

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Appcelerator Cloud Services(以下ACS)Titanium Mobileで有名なAppceleratorが提供するクラウドサービスで、プッシュ通知やステータス更新、フォトストレージやソーシャル連携などの設定済みのサービスを選択するだけでモバイルアプリをと連携できるバックエンドサービスです。最近ではモバイルアプリを主なターゲットとしているBaaSをMBaaSと呼ぶことが多くなっていると言います。

BaaSが登場する以前のバックエンドの在り方として、アプリ開発者以外にサーバ開発者もアサインしなければならないという状況がありました。アプリ開発者が勉強しながらサーバ開発を行うケースもあり、ヒットするかわからないアプリに対して初期投資をするというリスクがあると述べていました。

ACSの特徴として、20の設定済みアプリケーションライブラリを備えていることと、クラスプラットフォームへの対応などを挙げます。特にクラスプラットフォーム対応としてTitaniumで利用する以外にもiOS、Android、JavaScript、REST API対応など幅広いデバイスに対応することができるとのことです。

またスケーラビリティとして、ACSはサーバ間でAPIコールを配信して、必要に応じてスケールを行なってくれると言います。

他のBaaSと比べたACSの利点は導入が簡単で低コストであることと、50万APIコールまで無料で利用することができ、転送量制限が無いため気軽に利用可能であるとのことです。またTitanium Mobileでアプリの開発をしている場合、JavaScriptだけでアプリ全体の開発ができるという点もあると紹介しました。

詳しい内容は講演動画をご覧ください。資料はこちらになります。

appiaries概要

さいごに、国内初のBaaSであるappiariesの概要を、ピーシーフェーズ株式会社阿部一幸さんに講演いただきました。

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appiariesは国内初のBaaSで、2012年11月に正式版がリリースされました。appiariesが提供する機能としては次のようなものがあると言います。

データベース機能
JSONデータ、バイナリの管理
ユーザ管理機能
ユーザの管理、認証
OAuthによるappiariesユーザの情報の参照
ロケーション機能
円、矩形による範囲内検索
アクセス制御機能
各データに対するユーザごとのパーミッションの制御

これらの機能はREST APIで利用することができるとのことです。

appiariesには有料版の他に体験版が用意されており、制約があるものの全ての機能を試せるとのことです。有料版との差異としては保存できるデータの総量が最大20MBであること、一定期間アクセスのないデータ群が削除されること、機能毎に1日あたりのリクエスト数が制限されることがある(現状では制限なし)と紹介しました。この体験版は商用利用も可能で、また新機能のベータ版もいち早く利用できるとのことです。

詳しい解説は講演資料講演動画をご覧ください。

HTML5クイズ大会

通常セッション終了後にはHTML5 Conference 2012で好評を博したHTML5クイズ大会が行われました。

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クイズではHTML5のタグやAPIに関する問題が出題されました。笑える問題からためになる問題までいろいろな問題が出題され、おおいに盛り上がりました。成績上位者には賞品が贈られるなど年末にふさわしい内容となりました。

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最後に

2012年は「HTML5 Conference2012」「HTML5とか勉強会 番外編」の開催、地方コミュニティとの連携など、html5j.orgとして多くの活動を試みる年となりました。2013年はもっと多くの方たちに賛同していただけるような活動をしていきたいと思いますので、これからもhtml5j.orgならびに「HTML5とか勉強会」をよろしくお願いいたします。

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