レポート

OpenPrinting Summit/PWG Meeting Cupertino 2013参加レポート

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昨年に引き続き,OpenPrinting Summit/PWG Meeting Cupertino 2013に参加して来ました。

序文

会場はApple本社

今年もみなさまご存知のシリコンバレーはCupertinoのApple本社であるInfinite Loop Oneの,道を挟んで隣にあるDe Anza Threeというキャンパスの会議室で,2013年5月14日~5月17日の4日間に渡って行われました。

前回と同じく,今回もまた,印刷に関係する2つの標準化団体の合同ミーティングという形です。

OpenPrintingとPWG(Printer Working Group)

OpenPrintingはLinuxの普及,保護,標準化を進める非営利団体Linux Foundationの下部組織で,おもにLinuxなどのUnix系OSからの印刷の標準化を行なっています。たとえばPDF印刷パスやベクター印刷プロトコルOPVP,最近だとモバイル関係の印刷プラットフォームの構築などがOpenPrintingの活動です。なお,OpenPrintingには日本のサブチーム (OpenPrinting Japan) があって,筆者はそこのメンバーでもあります。

PWG(Printer Working Group)はIEEEの標準化部会の1つで,プリンタや複合機について,プリンタベンダーやOSベンダー向けの標準化を行なっています。たとえばCUPSがおもに用いているIPP(Internet Printing Protocol)が馴染み深いのではないでしょうか。なおPWGの議長は,CUPSの開発者であるMichael Sweet氏です。

両者それぞれに電話会議やFace to Face Meetingを行っているのですが,昨年「年に1回は一緒にやったほうがいい」ということで合同でやったところ,普段片方の議論にしか出ていないメンバーが外部の目からコメントをするため,非常に良いミーティングになりました。そこで,今年も同じスタイルで行うことになったとのことです。来年も多分同じ時期に同じApple本社でミーティングが行われる予定だそうです。

本レポートについて

なお本レポートはあくまでも一参加者である筆者が議論を聞きとって書いたものであり,PWGやOpenPrintingの意見を代表するものではありません。とくに,筆者はOpenPrinting側の人間であり,PWGのトピックについてはあまり事前知識がないので,その点あらかじめご容赦ください。

以下,すべてのセッションを紹介することをせず,時系列にもあえてこだわらないで,筆者がとくに興味を持ったものを紹介したいと思います。すべてのプログラムと資料はPWGによるミーティングの公式Webページにありますので,詳細が気になる方はぜひご覧ください。

前提:なぜ今印刷なのか?

印刷について語るたびに,以下のような声を耳にします。

  • 「印刷なんてレガシーな技術でつまらない」
  • 「どうせ印刷なんて収束していく技術だ」
  • 「プリンタベンダーとOSベンダーにまかせておけばいいだろう」

たしかに,オフィス文書の印刷,たとえば会議資料を人数分印刷して,会議が終わったらゴミ箱行きというようなユースケースは確実に減少します。実際,今回の会議においても,印刷関係の会議にも関わらず紙資料の配布は一度も行われませんでした注1)。図1はこのような印刷シナリオを図示したものです。

図1 これまでの印刷シナリオ

図1 これまでの印刷シナリオ

しかし,これは筆者が繰り返し主張していることですが,「印刷技術はプリンタベンダーとOS屋にまかせておけばいい」という牧歌的時代はもうすでに終わろうとしています。逆に,そういう牧歌的な印刷については標準化活動としては地道な作業(と政治的な話)しか残っておらず,今のホットトピックではありません。

では一般の技術者は印刷に無関心でいいのでしょうか? いいえ。それは違います。

たとえば筆者の本業はSIerでありますが,とあるシステムで印刷機能を提供しているとします。今まではサーバは顧客のネットワーク内に置かれ,プリンタも同一ネットワーク上に存在しているのが普通でしたから,PDFを生成してOSに印刷ジョブとして投げるような構成を作るのはさほど難しくありません。

しかし,そういうサービスが顧客の要望(たとえば災害時対応など)でクラウドに移動したとき,依然としてプリンタは顧客の閉鎖的ネットワーク内にあるわけです。そういうときにどうすればいいのか? サービスベンダーは,クラウドベンダーやプリンタベンダーが提供するサービスを適切に呼び出してサービスを構築しなければなりません。ところで,適切かどうかは誰がどう決めているのでしょうか? それにはシステムベンダーの意向は反映されているのでしょうか?

また逆にすでにWebベース,クラウドに存在するアプリケーションにおいても,紙に出すことでサービスが広がることは必ずあるはずです注2)。そしてWebにはWeb,モバイルにはモバイルの適切なUIがあり適切なコンテンツの見せ方があるように(いわゆるレスポンシブデザインですね),紙には紙に最適なコンテンツの出し方があるはずです。そしてそれはコンテンツホルダーであるエンドユーザとサービス事業者にしかわからないことで,プリンタベンダーはただ「材料を提供する」ことしかできません。

さて,必要な材料をプリンターベンダーが提供しているかどうか,誰がチェックしているのでしょうか?

図2 プレイヤーが多種多様に渡る新世代の印刷シナリオ

図2 プレイヤーが多種多様に渡る新世代の印刷シナリオ

したがって,標準化動向をウォッチし,ときには議論に参加することが,システムベンダーやサービスベンダーには求められていると思っています。この記事は「どういう技術に注目したらいいのか」のガイドとなりたいと思って執筆しておりますので,1人でも多くの方が印刷標準化活動に目を向けていただけると嬉しいです。

注1)
会議室のiMacでPDFファイルを開き,それを投影しながら,WebExで共有する(遠隔地からの参加者はそれを見る)というスタイルで行われました。これは昨年と同じです。
注2)
紙には「電源がいらない」「高い解像度」「特殊インクや特殊用紙を用いたときの多彩な表現力」「折りたたみなどができ持ち運びが容易」「情報量とのトレードオフだが量を絞れば軽量」といった利点があります。災害時や新興国ではこれらのメリットはより高く評価されるでしょう。

著者プロフィール

おがさわらなるひこ

流離のプリンター愛好家。(株)ミライト情報システム所属。印刷技術を中心に,フリーでオープンなデスクトップ環境の向上のためにあちこちに顔を出しています。

Twitter@naru0ga

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